• 2026/05/27 掲載

「まずAIに相談」する若者たち…小学生が語った「AIは相棒です」が示す消費の新常識(2/2)

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ググる世代、流れてくる世代…情報の「探し方」の歴史

 世代ごとの消費行動の変遷を見ると、「あなたへのおすすめ」がいかに私たちの購買プロセスを変えてきたかが見えてきます。

 ミレニアル世代の消費行動は、「能動的な検索」が基本です。欲しいものは現在持っている商品やブランドを起点に思いつき、Googleや比較サイト、あらゆるSNSの口コミを徹底的にチェックします。

 オンラインでの買い物には慎重で、最後は店頭で実物を確認してから購入し、「見てほしい」という意識でSNSに投稿する傾向があります。

 これに対し、Z世代(1997~2009年生まれ)の出発点は「受動的な接触」です。Instagramのおすすめや、YouTubeのホーム画面に流れてきた実況動画などを通じて商品に出合います。買い物の基準としても「好きなものに関係するもの」を重視し、動画サイトやSNSを見て購入意欲を高める傾向が強いのが特徴です。

 Xのタイムラインなどで複数回同じ情報に接触するうちに比較検討に移り、店頭に行くのは「もう買うと決めたとき」だけ。購入後の投稿も、「目にとめてもらえたら」という日記感覚に近いものに変化しています。

 特にZ世代は、膨大な情報の中で「失敗したくない」という意識が強い傾向があります。商品を買う前にレビューを確認する。コスメを選ぶ前に、似た肌質の人の投稿を見る。「自分が使っても大丈夫」と納得できるまで調べる行動は、もはや日常的なものになっています。

 このように、ミレニアル世代からZ世代にかけて、購買行動の起点は「検索」から「アルゴリズムによるおすすめ」へ移行し、失敗を避けるための「自分と似ている人の評価」が極めて重要視されるようになりました。

α世代がもう頼らなくなった「ある評価」

 しかし、この「似ている人を探す」という前提そのものが、変わりつつあります。

 α世代(2010~26年生まれ)は、SNS検索に時間をかけることに、必ずしも積極的ではありません。学習アプリや生成AIを通じて、自分に合わせて整理された情報を素早く得ることに慣れているからです。

 彼らに話を聞くと、こんな言葉が返ってきます。
「私に似ている人が良いと言っていても、自分に合うとは限らない」
 現在、企業が行っているパーソナライズの多くは、似た人たちをまとめたセグメント単位での最適化です。しかし、AIネイティブ世代から見ると、その粒度は粗く映ります。

 彼らはすでに、自分の疑問や関心に応じて、AIが情報を整理し、要約し、比較してくれる環境に慣れています。だからこそ、「似た人が選んだもの」を示されるだけでは、十分に“自分向け”だとは感じにくいのです。

 「あなたへのおすすめ」は、これまで企業が顧客に近づくための有力な手段でした。だがα世代から見ると、それはもはや、本当の意味で“自分を見ている”情報ではないのかもしれません。

 では、彼らは企業の「あなたへのおすすめ」の代わりに、何を信じているのでしょうか。

私を一番知っているのは“私のAI”──小学生の衝撃発言

 ある小学校の発表会で5年生の女子生徒がAIにとの関係性について、印象的なことを言っていました。
「私のAIは、私のことを深く理解してくれている相棒のような存在です」
 以降、私は、ユーザーが使うAIを“私のAI”と称しています。

 ユーザー側に存在するAIは、自分の検索履歴や行動パターンを日々学習し、自分の嗜好を深く理解し最適化した情報を要約してくれます。

 そのため、企業やブランドから届く「あなたにおすすめ」情報よりも、“私のAI”が入手可能な情報を網羅的に収集・最適化・要約してくれるメッセージの方が信頼される状態が生まれています。

 重要なことは、α世代がAIを「万能な存在」として捉えて、完全依存しているわけではない点です。

 AIの仕組みを理解していて、AIが要約する情報は「社会の平均的な正解(模範解答)であること」を分かっています。だからこそ、その答えをそのまま受け入れるのではなく、「模範解答を知った上で、自分なりに編集して判断や意思決定をする態度」が生まれています。

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他者の共感を重視してSNS検索に時間をかけるZ世代に対し、α世代はAIの要約を活用し「情報を自分向けに編集すること」に時間をかける傾向がある
(画像:編集部作成)

AI時代に始まる、まだ名前のない新しい「消費行動」

 α世代に見られる消費行動の特徴は、「AIから即座に模範解答を得て、自分の嗜好に合わせて編集する」点です。

 たとえば、服や化粧品を選ぶ際には、まず、AIに自分にあった系統を聞き、その系統に関する詳細な情報を知識として得ます。Z世代も同様に「系統」という言葉を頻繁に使いますが、「こんな風なトーンや雰囲気」と抽象的に表現するのに対して、α世代はその特徴や再現方法について粒度を細かく言語化し説明する傾向が見られました。

 また、筆者のゼミ学生が『α世代白書』調査研究レポートの作成のために、原宿で70名の女子高校生にトレンドに関するインタビューを行った際に「トレンドに自分を寄せるのではなく、トレンドについてきちんと理解した上で自分に自然になじませたい」という態度が確認できました。

 α世代は、上の世代と相対して、憧れや流行りに寄りたい意識は弱く自分が「自然体」に見えることを優先します。

 この価値観からは「自分になじむように自己編集する」トライアル&エラーを繰り返す積極的な消費態度が見られました。消費が「検索して真似る」から「トレンド(模範解答)を知った上で自己編集する」方向への変化が見られたのです。

企業・ブランドは「推薦する側」から「参照される側」へ

 従来のように、企業がユーザーにパーソナライズした情報を届けるモデルは相対的に弱まり、ユーザー側にある“私のAI”がネット上の情報を収集し、個人向けに編集する構造が主流になっていくことでしょう。

 マーケティング情報の流れが逆方向に変わり、企業にとっては「選ばれること」の前提として「“私のAI”に参照されること」が重要になっていきます。

 そのためには、従来から個別的に発信しネット上に分散している状態の企業・ブランドに関する情報を、“私のAI”が参照・編集・推奨しやすいように再整備することが不可欠です。

 具体的な価値情報としては、企業理念(思い)や社会的な取り組みといった真正性を担保する情報、商品の機能効能の正確な情報、そして、ユーザーレビュー、専門家や公的機関の認証やメディアの取材記事といった第3者の“お墨付き”情報が想定されます。

 この背景から、自社の情報コンテンツが「信頼できるコンテンツ」としてAIに見つけてもらい推奨されるように最適化する活動、AIO(AI最適化)への取り組みはすでに始まっています。

AI時代の「真のパーソナライズ」とは

 従来のパーソナライズの終わりは、同時に「真のパーソナライズ」の始まりでもあります。企業がパーソナライズするのではなく、“私のAI”が情報を最適化することが主流になる変化は、企業のマーケティングに大きな転換を迫ることでしょう。

 ブランドは「参照される存在」になることが重要となります。企業が担うべきは「ユーザーの選択をサポートする」という使命に立ち返ることです。そのために、“ユーザーとAI”に再編集されることを前提とした信頼できる情報コンテンツの構築が「真のパーソナライズ」となるでしょう。

 ユーザーに真に役立つ情報とは何かを問い続けて、正確に誠実に情報を提供し続ける企業・ブランドがユーザーとAIから高い信望を得ることでしょう。

 α世代の特徴は、やがて上の世代にも波及していく可能性が高いと考えます。AIを前提とする意思決定のあり方は世代を超えて広がっていくことでしょう。α世代をAI時代の消費のロールモデルとして、彼らの価値観と行動の進化に注目することは、ビジネスの未来を考える上で重要な視座となります。

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