- 2026/07/30 12:00 掲載
日本のPFNが国産AIで自衛隊の作戦立案支援、防衛省が進める「自衛隊AI武装」の全貌
自衛隊の作戦計画立案や指揮官の意思決定を支援するシステム構築
自衛隊の指揮官が行う意思決定過程を国産AIで支援
防衛装備庁が実施する実証プロジェクトにおいて、PFNは自社開発の生成AI基盤モデル「PLaMo 3.0 Prime」を導入する。このモデルはPFNと情報通信研究機構(NICT)の共同研究成果を利用してフルスクラッチで開発された純国産AIである。実証の目的は、自衛隊の各級司令部において指揮官が行う状況把握や分析結果の可視化、選択肢の検討といった意思決定過程を生成AIによって支援できるか検証することにある。構築するシステムは、テキスト文書や地理空間情報、部隊の運用状況に関するデータなど、形式の異なる多様な情報を統合的に整理し分析する。現代の安全保障環境では各種センサーやオープンソースから得られる情報量が急増しており、人間の認知限界を超えるデータを扱う技術が求められている。生成AIを用いて膨大なデータを迅速に処理し、司令部における人間の判断をサポートする。システムの構築にあたっては、自衛隊の指揮統制分野で豊富な実績を持つパートナー企業と協業する。
日本政府および防衛省は人工知能を安全保障体制における重要技術と位置づけ、防衛装備庁などを通じて国内企業との連携を強化している。防衛省は2024年7月に策定した「AI活用推進基本方針」に基づき、指揮統制や情報分析へのAI適用を推進する。PFNのほかにも、富士通が複数のAIが協調するマルチエージェント技術を用いたシステムを受注し、Sakana AIが陸海空の無人機データを統合処理する委託研究を開始した。
それぞれの企業が持つ得意分野を生かし、防衛AIシステムの多重化を進める。PFNは論理的推論能力を備えた自社の言語モデルを活用し、作戦計画立案の支援分野を担当する。PFNは生成AI基盤モデルから計算基盤、専用のAI半導体までを自社で一貫して開発する技術力を持つ。防衛分野における展開として、2026年6月2日には三菱重工業と国産AI技術の共同開発に向けた業務提携を発表した。
国家安全保障に関わる重要なシステムにおいて、透明性と安全性を確保した技術の導入を図る。今回の実証事業により、外部ネットワークへの機密データ流出を防ぎながら高度な情報処理を実現する国産AIの実用性を確認する。開発する作戦環境情報分析支援システムは、有事の作戦立案に加え、将来的な大規模災害時の支援などへの応用も見据えて開発を進める。
防衛省が進める国産AIによる「自衛隊のAI武装」
防衛省は安全保障体制の強化に向け、異なる強みを持つ国内企業に特化した役割を担わせる多重的なAIエコシステムを推進し「自衛隊のAI武装」を進めている。国産AI企業とタッグを組み、それぞれの強みを活かしたAIによる安全保障基盤の確立を目指す。PFNの作戦指揮と連携し、現場の最前線における情報処理では、Sakana AIが陸・海・空の全領域で発生する映像や位置データなどのマルチモーダルデータを即座に統合・分析する技術を担当する。同社は計算資源が限られたドローンや携帯端末などのエッジデバイス上で高速動作する小規模視覚言語モデルを開発し、通信途絶時でも状況認識を継続できる耐障害性を備えたシステムの構築を進める。
また中枢の戦術判断においては、富士通が指揮官を補佐する「AI幕僚」システムの開発を担う。同社は独自の大規模言語モデル「Takane」をベースに、メモリ消費を大幅に削減する1ビット量子化技術を用いて超軽量化を図り、オフライン環境での稼働を実現する。専門分野の異なる複数のAIエージェントが自律的に連携・議論し、大量の情報を整理して優先順位を付けた行動方針案を指揮官に提示することで、意思決定までの時間を短縮する。
さらに三菱重工業とも、同社の高度なハードウェア制御やシミュレーション技術と、PFNのAI半導体「MN-Core」や基盤モデル、強化学習技術を融合させる取り組みを進めている。2026年度内を目標に資本業務提携契約の締結を目指しており、テキストベースの情報分析にとどまらず、防衛装備品や無人アセットの戦術シミュレーターと連動して自律行動や予知保全を行う「物理的AI」への展開を図る。各社の得意技術を補完し合うことで、日本の安全保障基盤の強化を目指している。
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