- 2026/09/05 07:10 掲載
30万円で企業買収? 関与なしで報酬数百万円…注意すべきスモールM&Aの落とし穴
1975年、和歌山県生まれ。高校卒業後、フリーターを2年、自動車販売ディーラーを1年経験。その後、1997年に起業。2005年に株式会社グロウイングの前身である有限会社グロウイングを設立。子会社合併などを経て2016年に株式会社グロウイングに商号変更。2025年、GROWTHへの吸収分割による事業再編を実施。経営体制を強化。正しい知識や理解がないままM&A(会社の売買)を行った結果、「M&Aは危険だ」という誤ったイメージが広がってしまう現状を変えたいとの想いから、正しい知識の普及に取り組んでいる。
なぜM&A仲介は「誰でも始められる」のか
まず、客観的なデータから、M&Aが企業にもたらす影響を見てみましょう。経済産業省の調査(2017年度以降の追跡データ)によれば、M&Aを実施した企業は、実施していない企業に比べて、その後の「売上高」「経常利益」「労働生産性」のすべてにおいて向上傾向にあることが示されています。
※ ①・②・③ともに、資料:経済産業省「企業活動基本調査」再編加工。ここでいうM&Aの実施とは、「事業譲渡」「吸収合併」を実施した場合、および「国内子会社」もしくは「海外会社」を1社以上買収した場合をいう。2017年度時点において、中小企業基本法による中小企業の定義に該当する企業について集計している)
つまり、M&Aは本来、中小企業が持続的に成長するための有効な選択肢の1つであるということです。特に近年は、譲渡価格が1,000万円以下、ケースによっては100万円や30万円といった金額で取引される「スモールM&A」が注目されています。
この規模感であれば、中小企業はもちろん、個人事業主やフリーランスの方にとっても、自力でビジネスを切り拓くための現実的な手段になり得ます。
しかし、データが示す「成長の可能性」をそのまま手に入れられるほど、現実は甘くありません。
本来、成長のための強力な武器になるはずのM&Aで、なぜ多くの人がつまずいてしまうのか。その背景には、拡大する市場の裏側で急増している「仲介の実態」があります。
現在、スモールM&Aの受け皿は、金融機関や士業、公的機関、マッチングサイト(プラットフォーム)など多岐にわたります。中でも近年、市場の膨張に伴って爆発的に増えているのが、小規模な「M&A仲介会社」です。
ここで事前に知っておいていただきたいのが、M&A仲介という業界の成り立ちです。
現時点でM&A仲介業には、不動産業のような公的な免許制度が存在しません。そのため、専門知識や実務経験が乏しくとも、極端な言い方をすれば、ウェブサイトを開設したその日から活動を始めることも可能な環境にあります。国(中小企業庁)もこうした状況を把握しており、現在は「M&A支援機関登録制度」を設けて、適切な支援が行われるよう整備を進めています。ただし、この制度への登録はあくまで「任意」です。また、登録されていることが、直ちにその業者の経験の深さや支援の質を客観的に保証するわけではないという点には、注意が必要です。
急増する登録業者、2020年代設立は「2000年代の6倍超」
実際、中小企業庁のデータを見てみると、登録業者の半数近くが「専従者1~2人」という体制です。また、設立年代別のデータによると、2020年代に設立された業者は、2000年代に比べて6倍以上にまで増加しています。こうしたデータからは、現在のM&A市場が「設立から日が浅く、少人数で運営されている組織」を中心に、急速に拡大している実態が見えてきます。
これほど多くの新規業者が参入している中では、ホームページやSNSだけで、その業者の「経験の深さ」や「サポートの実態」までを見極めるのは非常に困難です。実際、私の経験でも、Web上の情報だけを信じることの危うさを痛感した出来事がありました。
Webサイトでは非常に洗練された印象を与えていたM&A仲介会社のオフィスを実際に訪ねてみると、看板すらない古びた雑居ビルの一室で、組織としての実態が判然としないということがあったのです。
特にスモールM&Aでは、効率化のために全工程をリモートで済ませることが多いため、相手の「本当の姿」がより見えにくくなっています。
相手が本当に信頼に値する組織なのか、その実態を自分の目で厳しく見極めること。これが、失敗しないM&Aの第一歩だといえます。 【次ページ】大手への依頼は「事実上不可能」…立ちはだかる最大の壁とは
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