- 2026/09/05 07:10 掲載
30万円で企業買収? 関与なしで報酬数百万円…注意すべきスモールM&Aの落とし穴(2/2)
大手への依頼は「事実上不可能」…立ちはだかる最大の壁とは
M&A仲介業界には、上場4強と呼ばれるトップグループが存在します。それは、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所です。これらに次いで、fundbook、M&Aベストパートナーズ、レコフ、ウィルゲートといった非上場の有力仲介会社が名を連ねています。
「大手に任せれば安心だ」と考える方も多いでしょうが、スモールM&Aにおいて、これら大手への依頼は事実上不可能です。その最大の壁となるのが、最低報酬の設定です。
こうした大手M&A仲介会社の多くは、成功報酬の最低金額を1,000万円以上に設定しています。たとえば業界最大手の日本M&Aセンターの場合、最低金額は2,000万円。さらに、100万~300万円程度の着手金が必要となり、これは取引が不成立に終わっても返却されません。
ちなみに、M&Aキャピタルパートナーズのように着手金がない場合でも、基本合意の締結時点で成功報酬の10%程度を中間報酬として支払うことになっています。
基本合意後は、デューデリジェンス(買収監査)が行われます。これは、買い手が対象企業の財務内容、法務リスク、ビジネスの実態などを専門家に依頼して詳細に調査するプロセスです。もし、この調査で問題が発覚し成約に至らなかったとしても、支払った中間報酬は戻ってきません。
なぜ、高額な最低報酬が設定されているのかといえば、大手M&A仲介会社はマッチングや交渉の調整にとどまらず、弁護士や公認会計士といった外部専門家を動員してデューデリジェンスを徹底的に行うからです。
こうした外部費用や多大な人的リソースを考えると、M&A仲介会社としては最低でも1,000万円以上の報酬を得られなければ、事業として採算が合わないのです。そのため準大手クラスでも、一定の事業規模(売上や利益)に満たない案件は受けないという内部基準を、暗黙のルールとして設けているケースが多く見られます。
そもそも、譲渡価格が1,000万円以下のスモールM&Aにおいて、着手金に100万円、成功報酬に2,000万円を支払うような取引は、依頼する側からすれば合理性がまったくありません。
したがって、スモールM&Aを検討する場合、必然的に「小規模案件のみを扱う、小規模なM&A仲介会社」を選択することになります。
肩書きでは実力不明…“ほぼ関与なし”でも報酬数百万円の実例
対比しやすいのでここでも不動産業を例に挙げさせていただきますが、不動産の売買や賃貸契約では、「重要事項説明」を行う際には宅地建物取引士(宅建士)という国家資格が必要です。対して、M&Aの世界には、そのような法的な資格制度が存在していませんでした。こうしたルールが未整備であった現状を重く見た政府は、2026年、中小企業のM&Aを仲介・助言する個人を対象とした新たな「国家資格制度」を創設する方針を固めました。国がこうした制度の整備に乗り出したことは大きな前進といえますが、それは裏を返せば、現状のスモールM&A市場において、知識や経験が十分でないアドバイザーとのトラブルが看過できない課題になっているという事実に他なりません。
とはいえ、新たな資格制度が浸透し、真のプロが選別されるまでには、まだ相応の時間がかかるでしょう。制度が整うまでの間は、これまで以上に「自分を守るための知識」という武装が不可欠です。
現在のM&A業界では、仲介担当者は「M&Aアドバイザー」や「M&Aコンサルタント」と名乗るのが一般的ですが、その肩書きだけで実力を見極めることはできません。急成長するスモールM&A市場では、実務経験はもちろん、基礎知識さえ不十分なまま現場に送り出されているアドバイザーが少なくないのが現実です。
私自身、耳を疑うような対応を経験したことがあります。
あるM&A仲介会社から届いた売り手の資料について問い合わせた際、担当のアドバイザーは「私にはわからないので、直接、売り手に聞いてください」と言い放ったのです。
その後も、決算書や事業内容の詳細について質問を重ねましたが、返ってくるのは「わかりません」という言葉だけ。これ以上聞いてもムダだと判断し、結局は売り手側と直接やり取りを進めることになりました。
すると、そのアドバイザーは、「(買収が)決まったら教えてください」とだけ言い残し、交渉の場から事実上フェードアウトしてしまったのです。
最終的に案件は成約しましたが、プロセスにおいてほぼノータッチだったそのM&A仲介会社に対し、契約どおり数百万円の成功報酬を支払ったときには複雑な思いが残りました。
残念ながら、今の市場ではこうした「実力不足のアドバイザー」に遭遇する可能性は、決して低くはありません。むしろ、納得できるような質の高い支援を受けられるケースのほうが稀である、というのが私の偽らざる実感です。
だからこそ、アドバイザーが「成功報酬を支払うに値するプロであるか」を自分の目で見極める力を持つことは、何よりの防衛策になるのです。
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