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  • 2026/10/06 06:40 掲載

なぜ安全審査は長引く? 浜岡原発「10年以上」で見えた“米国との決定的な違い”(2/3)

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日本と何が違う? 米国が原発審査で重視する“ある視点”

 米国の原子力規制委員会(NRC)の「良い規制の原則」は、同じ安全上の効果なら少ない費用や手間で済む方法を選び、判断を不当に遅らせないとしている。納税者や電気料金を払う消費者も、その利益を守る対象に挙げている。

 米国の連邦規則10 CFR 50.109は、既存原発に対策を後から追加する「バックフィット」の手続きを定める。必要な安全水準の確保や、既存のルールを守らせる是正は、費用を理由に免除しない。その水準を上回る対策には、大きな安全上の効果と、費用に見合う理由を行政が示す。設備の停止や工事の遅れによる費用も含めて検討する。

 国際原子力機関(IAEA)も、危険の大きさに応じた審査を求める。NRCは事故の起きやすさと被害の分析を、不必要に厳しい要求の見直しにも使う。日本でも、要求する行政の判断が検証されなくてはいけない。「行政だけは誤りを起こさない」という前提は捨てるべきだろう。

条件変更で生じる「重すぎる」現場負担

 たとえば、特別調査委員会による報告書には、「数字の上乗せ」とも見受けられる保守的な条件設定が、現場の仕事を増やした経緯の記載がある。

 原発の耐震性は、コンピューターで地震の揺れを作り、設備への影響を調べる。この計算用の揺れが「模擬地震動」だ。先に審査を受けた別の電力会社は、地震規模を示すマグニチュードの計算結果から、6.9を使っていた。

 2022年1月14日、規制側は、揺れが何秒続くかを決める計算には「少なくともマグニチュード7.0」が適切だと指摘した。これを知った中部電力の担当者は、同日のメールに「残念ながら、浜岡も模擬波は作成し直しになると思います」と書いた。浜岡でも7.0による計算を行うことになった。

 実は、浜岡で以前の計算に用いた入力値を利用して7.0の揺れを作ったが、比較用の基準を上回り、その候補は採用されなかった。そこで横揺れ14種類、縦揺れ2種類をさらに作成した。揺れを弱める免震設備の確認計算にも作業は及んだ。

 こうした規制側の指摘によって、現場には追加の計算や確認作業が生じた。条件をより保守的に変更するのであれば、その技術的根拠や安全上の意味を、規制側も明確に説明する必要があるのではないか。

反論が難しい?原発審査に潜む「構造問題」の正体

 要求に異議がある場合の仕組みも弱い。

 浜岡の近くに想定された「A-17断層」を地震の想定に加え、地震が起きる範囲の上端を地下5キロメートルとする条件について、中部電力は規制側に反論した。最後は審査の長期化を恐れて条件を受け入れたと、報告書は記す。審査内容を第三者が改めて検証する仕組みがないとも指摘している。科学的な判断が、電力会社の待てる時間に左右されるのは、制度的に欠陥があるように映ってしまう。

 提出資料の確認でも、計算の真実性は電力会社への信頼に頼っていたと報告書は指摘する。元のデータから計算をたどり、虚偽を見つける作業に人と時間をかけるべきではないだろうか。

 筆者が批判する「ゼロリスク思考」とは、危険を完全には否定できないことを理由に要求を重ね、判断の終わりを曖昧にする姿勢である。地下深くの現象を完全に知ることはできない。得られたデータから必要な安全水準に達したかを判断するのが行政の仕事だ。「安全のため」という説明で、作業のムダや審査の遅れまで不問に付すのは合理的ではない。

 停止中も家庭や工場には電気が要る。政府には、原発の危険とともに、代わりの電源の費用や燃料調達の不安を考える責任がある。停止を続ける負担も、政策判断から外せない。

 日本の地震を日本のデータで評価しながら、諸外国の審査の進め方を学べばよい。規制委員会の独立性は、追加作業の効果や費用について説明しなくてよい理由にはならない。 【次ページ】米国では原発推進、国内では慎重…この「温度差」はなぜ?
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