- 2026/11/02 07:10 掲載
「逆張り」のサンリオ…450超キャラを「一発屋」で終わらせないIPの神髄とは(2/2)
7064万票集める「推し活文化圏」…AIでファンは作れない?
サンリオのキャラクター人気は、シンボル的なハローキティの強さだけに支えられているものではない。同社開発のオリジナルキャラクターは450以上にのぼる。こうしたキャラクター層の厚さによって、世代や市場ごとに異なる好みを受け止められるのだ。人気の中心が変わっても複数のキャラクターから収益を得られる構造が生まれている。ファンとの関係を示すのが、2026年の「サンリオキャラクター大賞」だ。サンリオによれば、総得票数は過去最多の7064万7379票。30周年を迎えたポムポムプリンが1位で、シナモロール、ポチャッコが続いた。
ファンが自ら参加して「推し」を応援する仕組みだ。新しいキャラクターを発表しただけで、こうした参加の習慣が生まれるわけではない。
権利を守る活動も欠かせない。同社は7月、知的財産の保護活動をまとめた「SANRIO INTELLECTUAL PROPERTY REPORT」を公表した。人気が世界に広がるほど、無許諾の商品やブランドを損なう利用への対応が重要になる。権利を持つことと、それを実際に守り続けることは「別の仕事」である。
キャラクターの数、ファンの参加、権利を管理する体制の3つがサンリオの競争力の源泉といえるだろう。
生成AIは作品づくりの入口を広げ得る一方、長年の支持や正規の取引網まで即座に用意することはできない。新しいIPは最大瞬間風速的に人気が出ても、一過性で終わることが多い。人気を継続することが最も難しい課題なのである。
「作るAI」から「ファンを知るAI」へ…狙うのは3000億時間
注目すべきは、売上や利益とは別に、キャラクターが人々の生活に関わる「サンリオ時間」を重視していることだ。顧客にどれだけ長く、どのような形で親しまれるかを成長の指標に据える。2026年3月期の「サンリオ時間」は推計1649億時間に達し、2035年3月期には年間3000億時間を目指す。
その取り組みの1つが、公式とファンをつなぐ創作プラットフォーム「Charaforio」である。サンリオを含む企業や個人が保有するIPを登録し、それぞれが定めたルールの下でファンが創作作品を投稿できる。投稿をきっかけに公式から協業の依頼を受ける仕組みもあり、サンリオは自社IPに限らず、外部のクリエイターやIP保有者との接点を広げているのだ。
こうした外部クリエイターとの接点に加え、既存ファンとの関係をつなぐのが共通会員サービス「Sanrio+」だ。サンリオは店舗やテーマパークなどを共通IDでつなぎ、「Sanrio Games」との連携も広げる方針を示している。冒頭で触れた新作ゲームも、遊んだ後に店舗やイベントへと関係を広げる入り口になり得る。
ここにAIを活用するなら、購買やイベント参加などの情報からファンの関心を分析し、1人ひとりに合った商品や体験を提案することが考えられるだろう。創作の中核を人が担う一方、AIでファンとの接点をどこまで高度化できるか。さらに、その成果を継続利用や顧客満足度の向上につなげられるかが重要になる。
AI時代のIP企業に問われているのは、技術の導入そのものではなく、既存キャラクターの価値を高める仕組みをどう築くかという判断だ。
サンリオ自身は、AIを短期的な収益化の手段ではなく、中長期の付加価値を高める技術として位置付けている。AIにどれほど多くの作品を作らせたかではなく、ファンがキャラクターに触れられる時間と接点をいかに増やせるかという点が重要なのだ。
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