• 2009/06/17 掲載

【経費管理の実践ノウハウ】第2回 全体最適化を実現する経費管理のフレームワーク

アメリカン・エキスプレス 法人事業部門 副社長 小林英至氏インタビュー(3回連載)

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前回の連載でグローバル企業は、経費管理戦略を経営の重要指標のひとつとしてCFOのリードの下、目標達成のための責任者やチームの存在が重要であることが明らかにされた。アメリカン・エキスプレスとアクセンチュアが共同で行ったフォーチュン500社に含まれる複数企業への調査結果をもとに、経費戦略をどのように現場に落とし込めばいいのか、引き続き同社の法人事業部門 副社長 小林英至氏に、その実践のノウハウを聞いてみた。

グローバル企業が実践する3つの戦略

――前回、経費管理戦略の重要性をお話いただきましたが、そのポリシーや戦略を実践するためにはどのようなことをすればいいのですか。
【コスト削減】アメリカン・エキスプレス 法人事業部門 副社長 小林英至氏
アメリカン・エキスプレス 法人事業部門
副社長 小林英至氏

1978年、慶応義塾大学経済学部入学。1982年、米国ブラウン大学卒業。1984年、シカゴ大学経営学修士(MBA)取得・卒業。1984年、メリル・リンチ、ニューヨーク本社投資銀行部門に入社。その後、ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行等の欧米投資銀行を経て、2002年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.入社。法人事業部門、事業開発・CPS本部長を経て、2006年、同社副社長・法人事業部門日本代表就任。


小林氏:
現在、アメリカン・エキスプレスのコーポレート・カード・ソリューションは、フォーチュン500に選ばれる企業のおよそ6割で採用していただいております。これらの企業の一部に対して、2008年秋、アクセンチュアと共同で調査を行いました。この調査・分析でわかったのですが、効果的な経費管理戦略をとっている企業が実践しているポイントは3つあります。

 まず、社員全員に経費管理の重要性と責任を理解させること。次にデータを正しく分析し、コスト削減に生かすこと。最後は、前述2つを長期的に運用するための体制を構築すること。この3点を実践している企業は、効果的な経費管理ができているという結果になりました。

――3点について詳しく教えてください。まず、最初のポイントはどういうことでしょうか。

小林氏:
社員一人ひとりに経費管理の重要性と責任を理解させるというのは、前回のインタビューで述べたような経費管理戦略の重要性を、経営層だけでなく社員まで浸透させましょうということです。比較的少額だけど件数が大量になる間接材コストの削減効果は、最終的には社員一人ひとりの意識にかかわってくる問題です。そうはいっても社員全員にコスト意識を持たせ、運用させるのは簡単ではありません。責任を理解させるためには、いくつかのポイントがあります。

 まず、経費規定をわかりやすいものにすること。それを確認しやすい環境にすることも重要です。複雑な規定や不透明な運用、あいまいな規定は、結局守れない、守っても意味がないということでモチベーションが上がりません。これは前回述べた、経費管理戦略や規定に透明性を確保することが重要ということに通じます。そして、その規定の意味や効果、影響なども明確にします。特に、個人や会社に与える財務的影響を明らかにし、社員に費用対効果への意識を促します。また、明確な運用規定に対しては、罰則なども明確で公平でなければなりません。違反へのペナルティや管理職の責任も明確にしたり、社員の査定に組み込むといった企業もありました。以上は、運用面でのポイントですが、事務処理をサポートする意味で、経費清算の提出期限が過ぎた社員にメールを自動送信さえる仕組みを活用している企業もあります。

――2番目の経費データの分析と活用についてはどうでしょうか。

小林氏:
グローバル企業ほど経費データは膨大なものになります。このデータをどのように管理するかで、現在のような不透明な経済状況での経営の舵取りが変わってきます。調査した企業では、経費データを「集約」「分析」「活用」の3つのステップで管理していることがわかりました。「経費データの集約」は、グローバル(世界全体)、リージョナル(地域)、ローカル(各国)の3つのレベルで、発生した経費の傾向、要因などを把握します。「集約したデータの分析」とは、地理的な傾向と要因、時期的な傾向と要因、部署やプロジェクトでの傾向と要因などを詳細に分析します。無駄な支出がないか、分散している発注をまとめることができないかなど、原因が分かれば対策が可能になります。正確なデータに裏付けされていれば、サプライヤーに対してディスカウント交渉の強力な武器になります。これが「分析データの活用」となります。

――最後の長期的な運用体制についてお願いいたします。

小林氏:
経費管理戦略、コスト削減は、本来は長期継続して行うことに意義があります。厳しい経済状況から経費管理戦略の見直しは重要ですが、だからといってそれを応急処置的に考えるのではなく、構造改革のチャンスとして長期的な成長のために経営陣の積極的な関与が必要なのです。

 そのための体制づくりに重要なのは、プロセスの簡素化による間接コストの最適化とデータ活用による購買コストの削減です。そのためには、全世界から正確な経費データをタイムリーに収集する必要があります。ただ闇雲にITシステムを社内で構築しても企業にかなりの負担になるだけです。最も重要なことは、経営者自身が、経営管理戦略を継続的に追求していく組織と体制をリードしていくことです。

――これらのポイントを実践した場合とそうでない場合の効果の違いはどれくらいあるのでしょうか。

小林氏:
比較のスタートポイントをどこに置くかで結果が変わってくるので、非常に難しいご質問ですね。例えば、経費管理戦略のソリューションのひとつとして、アメリカン・エキスプレスのコーポレート・カードを導入したある企業は、出張・交際費で9%、間接材コストで6%削減できたというデータがあります。もうひとつ、削減効果を考える上で参考になるのは、例えば企業において鉛筆1本を購入するとおよそ70ドルの間接費用が発生しているという試算があります。購入品の値段にかかわらず、発注や支払いに関係するコストを1件あたりで考えるとそれだけの経費がかかっているわけです。これも、コーポレートカードによって購入や決済を集約すると1件あたりのコストは9ドルで済んだという事例も明らかになっています。

――ITシステム導入だけでなくカードによるソリューションも奥が深そうですね。次回はこのあたりのお話を伺わせてください。

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