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  • 2016/07/12

「勤勉な日本人」は報われないのか

ライフネット生命 出口会長と島澤 諭氏が議論

日本を支えてきた終身雇用。しかし、それを肯定してきた高度経済成長も終わり、少子高齢化が進む中、このモデルは通用しなくなっている。それにも関わらず、多くの大企業が前時代的な一括採用、終身雇用、年功序列、定年を採用し続け、能力に応じた待遇は実現されない。「勤勉な日本人」は報われないのか。ライフネット生命 代表取締役会長 出口 治明氏と政治経済学専門家 島澤 諭氏が対談した。

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そもそも日本人は「勤勉」なのだろうか


「同一労働・同一賃金」はなぜ必要か

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出口:先生は、生産性を上げるためにはどうすればいいと思いますか?

島澤:私は、所得から上げたほうがいいと思います。

出口:僕も同感ですが、所得を上げるための源泉はどこにあるかといえば生産性の向上にしかない。今の日本では、生産性とはあまり関係がない賃金の支払い方が多いような気がしています。

島澤:生産性を上げなくても給料がたくさんもらえる人は、わざわざ生産性を上げようとはしませんからね。年功序列は若いときに搾り取られた給料以上の働いた分を年をとったら取り返す仕組みですから、年功序列が維持される限り、必然年をとれば働かなくなります。

出口:やはり「同一労働・同一賃金」の体系にしないとダメだと思います。よく「年功序列がいい」という人がいますが、長期的に見ればもたないはずです。

 例えば、僕と大学生がラーメン屋でアルバイトをしていたとします。僕のほうが歳をとっているのでおそらく動きは鈍いと思いますが、「出口さんは67歳だから時間給は高めにしましょう」となると、大学生は「俺のほうがテキパキ働いているのに」と怒って辞めてしまうのではないでしょうか。

 でも同一労働・同一賃金が実現すれば、このような理不尽なことはまかり通らなくなります。生産性に応じた給与体系になれば、頑張れば賃金が上りますから、やりがいも出てきます。ところが日本では、年功序列がまかり通っている。いくら頑張っても、例えば5年経たないと昇進しないとなれば、誰も頑張らなくなる。だからいつまで経っても生産性が上がらないのだと思います。

島澤:企業はなぜ時代に合わなくなった年功序列を今もなお続けているのでしょうか?

出口:人口が増加し、経済が成長し続けるキャッチアップ型の社会では、成長に合わせて従業員の数も増やしていかなければなりません。仮に経済が毎年7%成長するとしたら、お客さんも毎年7%ぐらいは増えるわけですから、退職者などを踏まえると、従業員の数も毎年1割程度増やしていかなければならない。しかし、これは企業にとっては大変な圧力になりますから、一括採用で効率よく新卒の人材を確保するようになったのです。

 でも毎年7%の成長が続けば、10年で経済規模はほぼ2倍になります。単純計算すると倍の従業員が必要になるので、当然ながら人手不足に陥ります。そうなると無理に退職させる必要もないので、自然と終身雇用になります。

一括採用(青田買い)、終身雇用、年功序列、定年――これらは実はワンセット

島澤:終身雇用を何十年も続けられたことで、「入社してからずっと同じ会社にいるのが当たり前」という意識が浸透していったんですね。

出口:昔は学生もそれが当たり前だと思っていたので、今のように「転職してキャリアアップを」などと考える人はほとんどいなかった。こうして終身雇用の社会が構築されたわけですが、終身雇用型の社会では年功序列のほうが圧倒的に楽です。同期で入った10人を生産性に応じて評価するのは大変な仕事なので、「5年経ったらみんな係長に昇進させますよ」という年功序列型にシフトしていったのです。

 年功序列型になれば、長く会社にいたほうが得ですから、社員はなかなか辞めません。そこで定年制(あるいは役職定年制)を設け、給料が高い高齢社員を自動的に追い出すシステムをつくりました。終身雇用・年功序列というシステムを補うためにつくられたのが定年制です。1970年までは55歳定年が主流でしたが、その後、60歳まで引き上げられ、現在は65歳まで引き上げようという動きとなっています。

 この一括採用(青田買い)、終身雇用、年功序列、定年というシステムは、一見バラバラに見えますが、じつはワンセットになっていて、これが「1940年体制」という戦後の日本の体制に見事に適合して、ガラパゴス的に成長していったのです。

島澤:経済学者の青木昌彦先生も、「一括で制度が成り立っている。どれかひとついじってもうまくいかない」と唱えています。例えば、年功序列を採用している会社に中途社員や年齢が異なる新卒がたくさん入ってきたら、その会社の人事システムはこんがらがってしまう。だからシステムは一括のままずっと維持されていくし、新しくしようともしないんですね。

出口:高度成長の時代はそれで上手くいっていたので、わざわざシステムを崩す必要はなかったのです。ところがバブル崩壊を機に高度成長の時代が終わり、ガラパゴス的な労働慣行を支えていた4条件(冷戦構造、キャッチアップ型モデル、人口増加、高度成長)がすべて消え去りました。当然労働のシステムもそれに合わせて見直さなければならなかったのですが、今もほとんどの大企業が青田買いを行い、終身雇用や年功序列・定年制などの旧来型の人事システムを変えようとはしていません。

 今も人事システムが変わらないのは、企業のエグゼクティブの意識が古いからです。彼らは「1940年体制」の下で成功体験を積んだ世代ですが、そこから抜け切れていないのです。成功体験を忘れることは誰にもなかなかできないので、仕方がない面もあるかもしれませんが。

 加えて、現在のエグゼクティブは高齢の人が多いので、頭が堅いという面もあるのでしょう。戦後はGHQの公職追放で指導者層が軒並み一掃され、若い世代がけん引して戦後の高度成長をもたらしました。それを考えると、若返りというのはとても大事ですね。

島澤:はい。ちなみに私は年功序列の突破口となるのは外国人労働者の導入だと思っています。

【次ページ】パフォーマンスではなくロイヤリティーを重視する組織は危うい

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