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  • 2009/06/10 掲載

【連載】工事進行基準対策の第一人者に聞く(1):工事進行基準の概要と各企業の取り組み(2/2)

アドライト 代表取締役社長/公認会計士 木村忠昭氏

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適用のポイント

 それでは、工事進行基準適用のために重要となってくるポイントはどこなのだろうか。

 そもそも工事進行基準とは、プロジェクト完成前であっても、その進捗度を見積もり、売上と売上原価を計上する収益認識の方法である。工事完成基準の場合には、プロジェクトが完成し発注者側の検収を受けた時点で収益を認識するため、収益の客観性と確実性が担保される。ところが、工事進行基準の場合には収益認識につき見積もりの介入する余地が大きいため、信頼性の高い金額の見積もりが求められることになるのだ。

 具体的には、プロジェクトの受注金額である「工事収益総額」、そしてプロジェクトの原価予算である「工事原価総額」、最後に「決算日における工事進捗度」の3つを、合理性をもって見積もる必要がある。この3つの要件をすべて満たすことにより、「成果の確実性」が認められることとなり、工事進行基準を適用することができる。逆に言うと、この金額の見積もりの信頼性が低いと、曖昧な数字で売上と売上原価が計上されてしまうことから、工事進行基準の適用はできないことになってしまう。次回より、これら3つのポイントについて、各社の問題意識と具体的な対応方法も合わせて詳しく解説していきたい。

アンケートから見る現在の対応状況

 次に、弊社が行った実態調査アンケートについて紹介させていただく。2009年4月、3月決算の企業が適用初年度となったタイミングで各社の対応状況の実態や問題意識を調査すべく、「工事進行基準の対応状況に関する実態調査」と題し、関連企業への工事進行基準の対応状況についての以下の概要でアンケートを実施した。

『工事進行基準の対応状況に関する実態調査』
● 調査対象企業:「工事契約に関する会計基準」の対象となる企業
● 第一次アンケート調査期間:2009年4月6日(月)~ 2009年4月17日(金)
● 調査方法:ウェブサイト上でのオンライン回答
● 有効回答数:120社
● 主催:株式会社アドライト( http://www.addlight.co.jp/


 下のグラフはその結果の一部である。


※クリックで拡大
図1:『工事進行基準の対応状況に関する実態調査』結果の一部
Copyright (c) addlight Inc. All rights reserved.


 適用が始まった4月現在における会社としての対応状況として、「すでに対応が完了している」と回答した企業は13%にとどまった。「対応を進めている最中である」と回答した企業と合わせても、全体の60%に満たない状況である。

 また、経営者の工事進行基準対応に関する取り組みについてという質問項目においても、「積極的に取り組んでいる」および「どちらかというと積極的に取り組んでいる」と回答した企業が約50%、「消極的である」および「どちらかというと消極的である」と回答した企業も約50%と、経営者の取り組みの意識としても半々に分かれた格好となった。

 前述のとおり、工事進行基準の適用はかなりハードな作業である。しかし、それは企業が避けては通れない道であり、適用のための努力が企業に与えるメリットも非常に大きい。

 今まではドンブリ勘定でも結果的に利益が出ていた企業も、この長引く不況の中、生き残りをかけて経営資源の選択と集中が求められるようになっている。そのために、利益を創造するための先読みを可能にするようなプロジェクト管理体制の構築は急務である。そう考えると、工事進行基準は今までの管理体制を見直す良いきっかけであり、これを機に、プロジェクト管理体制の強化を進めるのも一つの選択肢ではないだろうか。

 次回は、本アンケートにおいて明らかになった各社の取り組みと問題意識のうち、「工事収益総額」を取り上げながら、工事進行基準適用のための実務上のポイントについてお伝えしていきたい。


≪次回へつづく≫

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