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  • 2009/07/21 掲載

HTML5とは何か、動き出した次世代規格はWebの世界に何をもたらすのか

Internet Explorer、FireFox、Safari、Google Chromeの動向

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次のHTML標準規格は、かつてW3Cが勧告した「XHTML」ではない。そのことが明らかにされたのは、2008年1月のことだった。そして、W3Cでは「XHTML2」の適用を2009年末で打ち切ることを2009年7月2日に公式に発表し、「HTML5」へ統合することを明らかにした。このHTML5とはどのような規格であり、Webの未来に何をもたらすのかを見ていくことにしよう。

池田冬彦

池田冬彦

AeroVision
富士総合研究所(現みずほ情報総研)のSEを経て、出版業界に転身。1993年からフリーランスライターとして独立しAeroVisionを設立。以来、IT系雑誌、単行本、Web系ニュースサイトの取材・執筆やテクニカル記事、IT技術解説記事の執筆、および、情報提供などを業務とする。主な著書に『これならできるVPNの本』(技術評論社、2007年7月)、『新米&シロウト管理者のためのネットワークQ&A』(ラトルズ、2006年5月)など多数。

HTML5に至る長い苦難の道のり

 2009年1月22日。World Wide Web Consortium(W3C)は、「HTML5」の草案を公開し、2010年9月に正式なW3C勧告としてリリースすることを発表した。このニュースを聞いて、「確か、W3Cは次世代HTML規格としてXMLをベースとするのではなかったのか?」と思われた方や、「そう言えば、そもそも最近W3Cという名前を耳にしていないな」と思われた方も多かっただろう。そこでまずは歴史的な経緯から振り返ってみよう。歴史に興味がない、HTML5が何かを知りたいという方は次のページにお進みいただきたい。

 そもそも、W3Cは、Webの父とも呼ばれる、ティム・バーナース・リー氏が1994年に、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に設立したコンソーシアムだ。ティム氏は、スイス・ジュネーブの欧州原子核研究機構(CERN)においてHTMLとWebサーバを発明し、世界で最初の「Webサーバ」を構築した人物である。また、ティム氏はWebに関連した特許を一切取得せず、使用料も徴収しなかったことでも知られている。

 W3CはWebの仕様や指針、標準技術を策定・開発することで、Webの可能性を最大限に導くことを目的にしていた。HTMLの仕様策定の場はW3Cであり、HTML1.0から始まった仕様は、1999年12月に策定されたHTML 4.01を最後として、一端、仕様策定に終止符が打たれているかのように見える。

 この背景にあるのが、XML技術が広く普及しなかったという問題だ。ティム・バーナーナース・リー氏は、HTMLからXMLへの移行を考えていた。この次世代の仕様を「XHTML」として策定し、W3Cの正式勧告として2000年1月にリリースした。

 しかし、残念なことにXHTMLは思ったように普及しなかった。その理由は色々と考えられるが、当初、XHTMLを解釈できるWebブラウザが限られていたり、Webブラウザによって解釈が異なっていたこと、さらには、XHTMLはHTMLよりも記述方法が厳格であり、扱いが難しく、Web開発の現場において、移行して得られるメリットが見えにくい、などの点が指摘できるだろう。

 いずれにせよ、現在、利用されているほとんどのHTMLはバージョン4であり、実に10年もの長い間、仕様としての進化は止まったままとなっている。とは言え、この10年でWeb技術そのものは格段の進歩を遂げ、Webクライアントの高機能化(リッチクライアント化)は大きな命題となっている。

 たとえば、リッチクライアント技術の代名詞のように語られる「Ajax」の技術である「XMLHttpRequest(XHR)」は、マイクロソフトが自社の「Outlook Web Access」のWebインターフェースに活用するためにActiveXオブジェクトとして99年に実装したのが始まりであったが、MozillaやNetscape、Opera、アップルでも採用され、事実上の標準として広まった経緯がある。具体的な知名度が上がったのはGoogleサービスが全面的にこの技術を採用したことに端を発する。

 また、2004年には、W3Cの方針や方向性に異を唱えるMozilla、Operaなどのベンダーが「Web Hypertext Application Technology Working Group (WHAT WG)」を結成し、Opera、Mozilla、Apple、Googleなどのメンバーを中心に積極的な活動を展開する。

 これにより、Webの仕様は、デファクトスタンダード、あるいはWHATAGが策定した規格などが優位となり、WHAT AGが推進する「HTML5」の仕様策定が進む中、W3Cが正式勧告する仕様の実装が進まない、という状況が続いていた。また、マイクロソフトはWHAT AGに参加せず、足並みが揃わない状況でもあった。

 さまざまな規格乱立、デファクトスタンダードによる仕様は、これからのWeb技術全体の進歩に少なからず影響を与える。やはり、統一した仕様の策定が必要であった。そこで、2007年頃からは、W3CとWHAT AGとの歩み寄りにより、それまでWHAT AGが進めていたHTML5の仕様をW3Cで正式に策定することとなったのである。

 2008年1月に発表されたHTML5の草案のリリースは、公式にW3Cの場でHTML5が策定されることを示すもので、マイクロソフトやIBMなどを含め、広く公式の場で次世代HTML規格の策定に向けて動き出したことを示している。

これまでにW3Cで策定、利用されてきたHTMLの主な仕様
規格名勧告日内容など
HTML1.01993年6月最も初期のHTML仕様(ドラフト)
HTML 2.01995年11月HTMLワーキンググループによってRFC 1866として仕様が発表された
HTML 3.0なし策定作業が進められたが途中で破棄された
HTML 3.21997年1月W3C勧告として仕様が発表され、長らく利用された規格
HTML 4.01997年12月W3C勧告としてHTML 4.0の仕様が発表され、98年に仕様改訂が行われた
HTML 4.011999年12月W3C勧告として公表、以降HTMLのスタンダードとして使われている
XHTML 1.02000年1月HTML 4.01をXMLにて再定義したもの
XHTML 1.12001年5月XHTML 1.0の機能向上版

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