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  • 2025/05/15 掲載

当時の重要人物が明かす、DeNA・グリーら「ソシャゲ海外進出」頓挫のリアルな裏事情

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かつて日本国内で爆発的な人気を誇ったソーシャルゲーム。グリーやDeNA、MIXIら企業がその市場をリードし、多くの作品が世に送り出された。しかし、その後の海外展開やスマホアプリゲームの台頭により、業界は大きな変革期を迎えることになる。一度は落ち込んだグリーは、その後、逆境をどのように乗り越えていったのか。当時、北米で海外展開を主導していたキーマン荒木 英士氏にインタビューを行い、過去のリアルな事情とその後の戦略を掘り下げる。成功と失敗の狭間で、企業はどのような選択を迫られたのか、今だから語れる裏話をお聞きした。
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グリーホールディングス
取締役 上級執行役員
荒木 英士 氏

オフィス未確定でも渡米?グリーの米国挑戦の裏側

――2007年から成長期とソーシャルゲームブームを経て、その後グリーが海外展開を意識しはじめるのはいつ頃からだったのでしょうか?

荒木氏:たしか2010年頃だったと記憶しています。2010年からGREEのプラットフォームオープン化もあってサードパーティー企業のいろいろなタイトルが提供されるようになっていき、国内会員数も1,000~2,000万人といった規模に成長していきました。ちょうど、「ここから先、同じ成長速度を維持しようと思ったら、海外でもヒットを出さないといけないよね」という話が出始めた時期です。

 僕もこの世代のインターネット業界人としてシリコンバレーを聖地と崇めるシリコンバレーコンプレックスを患っていましたから、ネット業界で成功するにはアメリカで成功しなければダメだ!と主張していたと記憶しています。当時僕は複数のソーシャルゲームやSNS開発部門を統括していましたが、話し合っているうちに、社長の田中(グリー創業者の田中 良和氏)も「いいよ、じゃあ海外事業やりなよ」と。

 当時、青柳さん(元グリーCFO青柳 直樹氏)が初期的に何人かビズデブ(BizDev:ビジネスディベロップメント)を採用して「海外のプラットフォームとも協業してみよう」と考え、色々試している中で、僕も事業側としてよく海外出張するようになっていました。

 それでも、「現地に行くのか、行かないのか」といった議論が社内で煮詰まってきてしまい、だんだんその状況にもどかしくなってきて、2010年の12月半ばくらいに、とりあえず決めちゃったんですよね。「年をまたいで正月明けの2011年1月17日、サンフランシスコ拠点をオープンします」って。

 まだオフィスも何も決まっていない状態です。そこから急いで年末の出張でレンタルオフィスだけ決めて、渡航することにしたんです。

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グリーの米国市場への挑戦を振り返る荒木氏

――最後は「えいや!」の思い切りなんですね。当時、そもそも荒木さんは英語を話せたんですか?

荒木氏:英語も話せなかったです。「気合でなんとかなるだろう」と思ってました(笑)。米国拠点オープン日は今でも忘れられないですね。記念すべき初の海外拠点の初日だ!と意気揚々とオフィスビルにたどり着いたら、その日は米国では数少ない祝日でオフィスは開いてなかったんですよね(笑)。警備員に相談してなんとか入れてもらった。それが米国展開の初日で、思い出深いです。

 当時、モバイルゲーム・ソーシャルゲーム向けプラットフォームを展開する「OpenFeint」(後にグリーが戦略的買収をする米企業)との交渉がすでに始まっていたのですが、米拠点を作って赴任しちゃえば、我々が北米展開にかける覚悟を見せられるだろう、という目論見もありました。

 「俺ら、もう米国引っ越してきちゃったけど?」という感じで我々の本気度を伝えつつ協業の協議を進め、2011年4月に買収することができました(7,500万ユーザーを抱える同社を1億400万ドルで買収)。

 翌年には米国のモバイルゲーム開発企業である「Funzio」との交渉ですね(2012年5月に『Crime City』『Modern War』など、トップタイトルを保有していた同社を2.1億ドルで買収)。

 最初5~6人でスタートしたサンフランシスコオフィスだったんですが、約1年後の2012年6月期に数えたら400人になってました。ムチャクチャですよね(笑)。

DeNAやグリー…海外企業「買収ラッシュ期」のリアルな事情

――1年で400人…すごい増え方ですね。そのちょっと前の時期に、DeNAが2010年10月にngmocoを4億ドルで買収しています。売上300万ドル、営業利益マイナス1,000万ドルの会社に350億円の価値が付いていた当時は、本当に「バブっていた」とも言える夢のような時代でした。そうした中での焦りもあって、プラットフォーム企業を買収しにいった、というのもあるのですか? OpenFeintはDeNAも出資していた先でもありましたが…。

荒木氏:当時、似たようなスマートフォン向けのゲームプラットフォームは何個かありました。その中でもOpenFeintは7,000万人と1番ユーザー数が多かったですが、そのほか米国のngmocoとドイツのScoreloop、中国のPapayaMobile、全部見に行ってデューデリジェンス(買収・合併・投資にあたり、対象企業の価値・リスクを調査・分析するプロセス)もして、OpenFeintをパートナーとすることを選びました。

 買収決議時のグリー取締役会では喧々諤々の議論があったと聞いていますが、最後には「そこまで気合を入れてやれるなら、頑張ってこい」みたいな感じで無事承認されて、米国社長は青柳さん、僕はSVP(シニア・バイス・プレジデント)として米国に着任するんです。

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