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  • 2025/05/19 掲載

TikTokに勝てない領域がある?グリーの鬼才・荒木氏の「時代を読む力」が凄いワケ

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グリーホールディングス 取締役 上級執行役員である荒木 英士氏は、同社の革新的な新規事業の開発をリードし続けるヒットメーカーだ。最近彼が手掛けたスマートフォン向けメタバース『REALITY』は、海外、特に米国で成功を収め、コロナ禍を契機に急成長した。こうした、時代の流れを読んだ荒木氏の新サービス開発の背景には、スマホシフトに乗り遅れ、成長速度を落としたグリーの過去の教訓があるという。今後のグリーの成長に欠かせないキープレイヤーである荒木氏に、メタバース業界の最新動向から、この業界の勝敗を分けるポイントを解説してもらった。
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グリーホールディングス
取締役 上級執行役員
荒木 英士 氏

グリーの大ブレイクした「新サービス開発」の裏側

――ブラウザゲームからアプリゲーム開発に移行し、2017年に再浮上を果たしたグリーですが、そんな中、荒木さんはいち早くVRやライブ配信といった「新規事業」に挑戦しています。

荒木氏:たとえば、VRゲーム『サラと毒蛇の王冠』(2015年9月、東京ゲームショウ向け)や、スマホ向けVRゲームの『シドニーとあやつり王の墓』(2015年11月)ですよね。

 これらのプロジェクトは小規模なサイドプロジェクトとしてやっていたものです。我々は会社としてすでにトラウマがあるじゃないですか、“スマホシフトに乗り遅れた”、という。だから新しいプラットフォームが来たら、やっぱり最初にやらなきゃという気持ちがあったんです。

 VRヘッドセットの『Oculus Rift』(Meta)とか『PlayStation VR』(ソニー)が発売され、VR元年になったのが2016年ですけど、その前年にはもうデベロッパーキットが組まれていたので、VR・ARコンテンツ開発を行う組織を2015年に設立して、この領域に手をつけはじめました。

――まだアプリ化の成功前だったのに早かったですよね。自前リスクで立ち上げですか?

荒木氏:この頃には僕も多少大人になったので(笑)、市場として立ち上がるのにはまだ時間がかかるだろうと考え、小規模なチームで受託・協業を組み合わせながら開発経験を積むという進め方をしてました。

 協業プロジェクトではスクウェア・エニックスさんやバンダイナムコさんと連携し、VRゲームの開発を行っていました。

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大ブレイクしたグリーの新サービス『REALITY』はどう誕生したのかを解説する、ヒットメーカー荒木氏

――そうした中で、スマートフォン1台で自分好みのアバターが作れ、ライブ配信ができる『REALITY』が2018年8月にスタートします。これは、どのような構想をもとに進めたんですか?

荒木氏:当時のことはよく覚えてますが、2017年の12月にVTuberブームが爆発するんです。VTuber四天王と言われたキズナアイ、電脳少女シロ、ミライアカリ、ねこます、輝夜月などがブレイクした時代です。当然、僕もそういう新しいカルチャー好きなので見ていて、当時のカバーさんにもVTuberライブ配信の現場を見せてもらったりして、「これは新しい時代が来る!」と思ったんです。グリーとしてもVRでずっとやってきたこととも地続き感があるし。

 最初の時点でサービスのコンセプトは、「VTuberが民主化する」というものでした。当時のVTuberって、モーションキャプチャー設備やハイスペックPC、VRハードウェアなんかを組み合わせていて、一般ユーザーには難しいものばかりでした。

 でも技術的に要素分解していくと、スマホでフェイシャルキャプチャーもできるし、3Dアバターも動かせるし、音声や動画をストリーミングすることもできるから、「すこし経てば、誰もが自宅からスマホだけでアバターライブ配信ができる時代になるだろう」と考えたわけです。

 しかも僕たちは2007年からずっとGREEでアバターサービスを提供し続けているわけだから、ビジネスモデルもノウハウも良く理解している。そして2017年の年末に事業構想メモを作り、経営陣と事業立ち上げの意思決定を行い、2018年春に『REALITY』の開発チームを立ち上げ、WFSは現在コインチェックの取締役 社長執行役員を務める井坂 友之さんに副社長を任せて、2018年夏にローンチしました。立ち上げ初期からユーザーが伸び始めていましたが、それが大爆発したのがコロナ期ですね。

なぜ「米国市場」でバズった?意外なユーザー属性とは

――2021~2022年のコロナ期で『REALITY』は大ブレイクし、2022年10月には全世界累計1,000万ダウンロードを達成しました。驚いたのはユーザーの海外比率が約8割、米国で火が付いたことです。

荒木氏:スゴイ伸びましたね。2021年はコロナ禍で、こちらも驚くくらい一気にユーザーが伸びて、後から収益も追い付いてきました。

 海外8割の中での半分近くは米国で、あとは台湾・韓国・タイ・インドネシアといった国を中心に広がっていきました。また、視聴者数だけでなく、「配信者数」という意味でも日本より米国のほうがアクティブだったんですよね。アバター配信文化って日本やアジア中心のものだと思ったんですが。

 ここ6~7年運営してきて色々な違いに気づきました。米国はライブ配信というより、むしろハングアウトサービスというか、ただ雑談をするサービスとして使われている比率が多くて。また、地域別に見るとサンフランシスコとかニューヨークとかじゃなくて、テキサスとかアリゾナとか中西部の中規模な都市にユーザーが多かったりするんです。

――米国の中西部なんですね!ほかにも特徴的なユーザー特性はありますか?

荒木氏:さまざまなユーザーとグループインタビューしたりサーベイを取ったりしているのですが、人種的には非白人のマイノリティ人種が多いと感じています。年齢も日本が20~30代とすると、米国は10~20代と10歳くらい若い層が中心です。セクシャルマイノリティやオタクも多いですし、『REALITY』が刺さっているのはいわゆる伝統的なWASP的米国人ではなく、マイノリティと言って良いと思います。

 彼らに実際にインタビューしてわかってきたのですが、米国の田舎においてマイノリティは差別もあるし、肩身が狭いんですよ。スクールカーストの中でも生きづらさを抱えていて、そうした彼らが日本のアニメやゲームや『REALITY』の1番ファンでもある。現実世界で肩身の狭い思いをしている彼らにとって「ありのままの自分でいられる数少ない場所」なんだということがわかってきました。 【次ページ】なぜ「ライブ配信×投げ銭」は米国市場で通用しない?
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