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  • 2009/11/30 掲載

競争が激化する運用管理業務:新規案件を獲得する運用管理ケーススタディ(1)

トーマツイノベーション 安達 裕哉氏、磯上 直人氏

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大型の開発案件が減少している今、既存の運用業務をいかに効率化するかにスポットが当たっています。委託企業の多くは、運用を効率化する具体的な手段を持ち合わせておらず、受託側には積極的に提案する余地が残されています。その一方で、海外企業へのアウトソーシングなどによってコスト削減を図るなど、運用管理業務そのものの競争は激化しており、有効な提案がなければ、従来からの契約も見直されかねない状況です。そこで、本連載では、運用管理を「攻め」の案件ととらえたときに何ができるのか、また何をするべきかについて、多様なケーススタディや実践的なテクニックをご紹介します。

トーマツ イノベーション 安達裕哉、磯上直人

トーマツ イノベーション 安達裕哉、磯上直人


安達裕哉
トーマツ イノベーション
シニアマネジャー
筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーション株式会社に入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。
磯上直人
トーマツ イノベーション
シニアコンサルタント
東京大学理学系研究科生物化学専攻修了。日本電気に入社。製造業のシステム開発業務に従事。その後、トーマツイノベーションに入社。現在、IT業界を対象にプロジェクトマネジメント、情報技術戦略などのテーマのコンサルティングに従事。

ホワイトカラーの失墜

「16歳のときにケンタッキーフライドチキンで働いていたけど、また戻ってきてしまった」

 このコメントが、色々なアルバイトを経験した学生が、やはりケンタッキーの居心地が良くて戻ってきた、というものであれば、「微笑ましい話を聴いた」で一件落着ですが、実はそうではありません。

 これは、一昨年ほど前になりますが、2007年12月16日(日)に放映された『NHKスペシャル ワーキングプアⅢ ~解決への道~』の1シーンです。コメントを述べた方は、なんと銀行のシステム管理にかかわっていた40代の元IT技術者です。しかも、この方は大卒で、一時は年間1,000万円の収入を得ていた、いわゆる「勝ち組」でした。

 大学を卒業して、高い技術の持ち主として働いていたホワイトカラー層が、経済のグローバル化により、部門ごとインド人に仕事を奪われ、ワーキングプア(働く貧困層)に一気に転落する様子は、視聴者に大きな衝撃を与えました。

 とはいえ、実はこれは日本ではなく、アメリカでの話です。しかしながら、国境を越えた職の奪い合いは、この日本にもじわじわとやってきています。

運用・保守業務の海外流出

 運用管理の連載でなぜこんな話を?と思われたかもしれません。実は本連載のテーマ「システム運用」についても、その仕事を海外にアウトソーシングしようとする動きが出てきています。

 2009年10月30日付の日経産業新聞では、次のように取り上げられています。

データセンター事業を手がけるさくらインターネットは29日、IT(情報技術)システムの運用・保守サービスを始めると発表した。ITインフラの遠隔監視を手がける米ネットエンリッチの日本法人(東京・港)と提携。他社と比べ3分の1以下の価格でサービスを提供するという。(2009年11月3日 日経産業新聞)

 また、11月3日の日本経済新聞でも、次のように取り上げられています。

総合人材サービスのインテリジェンス(東京・千代田)は11月、主に日本からのシステムの保守・管理を受託するシステム関連拠点をベトナムに開設する。日本人のシステムエンジニア(SE)を常駐させるが、基本業務は現地スタッフに任せる。コスト削減と安定的な品質管理を両立させ、初年度で20社からの受託を目指す。(2009年11月3日 日本経済新聞)

 これらの新しい低価格の運用・保守サービスを担うのは、日本に住む日本人技術者ではありません。さくらインターネットの事例ではインド在住のインド人技術者、インテリジェンスの事例ではベトナム在住のベトナム人技術者なのです。一体なぜ海外への仕事の流出が起こるのでしょうか。

 結論から申し上げると、これまでの運用・保守のサービスが、海外の安価な労働力と置換できるとみなされているためです。つまり、この新しいサービスに置き換えられる既存のサービスについては、顧客はコストに見合う価値を認めていない、といっても良いでしょう。

運用・保守業務はもはや聖域ではない

 運用・保守は、システム仕様の理解度を背景として、システム開発に関わったユーザーの情報システム部門(システム子会社)もしくは開発ベンダーが引き続き担当する形が一般的です。

 このため、運用・保守フェーズで新たな受注競争が発生することは少なく、情報システム部門もしくは開発ベンダーが提供するサービスの優劣が厳しく問われることはありませんでした。よって、特にサービスが優れていなくても、提供するサービスの価値を説明しなくても、仕事を取れてきたのです。

 しかし、昨今の景気後退により、顧客は経営層からコスト削減の強い圧力を受け、聖域とみられてきた運用・保守の費用についてもそれらを削減するための抜本的な方策を検討しつつあります。その方策の1つが、上述の、海外へのアウトソーシングです。

 手順がマニュアル化され、誰がしても同じという運用・保守のような仕事は、より安価な労働力に置き換えられやすい特性があり、結果として、人件費の安い国へ仕事が流出します。ご自身のお仕事を振り返ってみてください。未熟な技術者や海外の技術者でもできる仕事でしょうか。もしそうなら、ご自身の仕事は報酬に見合う価値を与えているでしょうか。

 この厳しい現実に対して、運用技術者にどのような備えが必要なのでしょう。 その1つの解が「契約案件化能力の向上」、すなわち、新しい案件を掘り起こし、その意義・価値を顧客に説明し、交渉して案件獲得する能力を身に付けることです。 顧客がその価値を認める仕事を生み出し、提供し続けることは、海外への仕事の流出を食い止める有効な方策の一つです。

 少し前置きが長くなってしまいましたが、本連載では、運用業務を行う技術者が、提案力を向上させ、海外の技術者に決して置き換えられることのない仕事をするためのヒントを事例とともにご紹介していきます。

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