• 2010/03/12 掲載

【ベンチマーキング基礎講座(3)】ベンチマーキングの意義(2/2)

ICG国際コンサルタンツグループ会長 髙梨智弘氏

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ベンチマーキングの効果

 ベンチマーキングが正しく実行されれば、その効果は大きい。それは、ベストなやり方であるため、業績向上効果や競争力向上効果が望まれるからである。下の図1にあるように、ほかの手法と比較すると、その違いが分かる。
画像
図1:ベンチマーキングの3軸の効果

 図1は、縦軸に「品質」をとり、横軸に「評価基準」、斜め軸が「競争力」を表している。

 従来のQC、TQC等は、どちらかと言うと「技術志向」であり、企業が競争力を上げるために内部で徹底した品質管理(設計通り製造する「適合品質」)を行う。しかし、社会は外部から見ての品質(「知覚品質」)を要求する。すなわち、評価基準は、良い製品を提供すればよいといったプロダクトアウト的な企業の論理に基づくものではなく、ISOを代表とした「利害関係者満足」を追究する、外部(顧客や利害関係者)の評価に合わせたマーケットイン的な顧客の論理に基づくものである。しかし、これもあくまで品質管理基準であり、競争力が高いかどうかは担保されていない。そして、TQMや経営品質の目的は、この3軸をすべて最大限に発揮するための経営改革手法である。

 さて、ベンチマーキングは、ベストに学ぶことが目的なため、これらの良いところ取りをする、すべてを対象とした経営変革手法である。実は、さらに重要な効果がある。それは、ベストプラクティスに触発され、関係者の意識が変わることである。
ベンチマーキングの多様な効果
1.数値効果
  ◇具体的なコスト削減、売り上げ増加、利益増加……
  ◇ギャップ分析、目標値の見える化……
2.競争力効果
  ◇生産性の向上
  ◇QCTの工場
3.意識効果
  ◇ショック療法、発想の転換……
  ◇ベストを知って感動、固定観念の払拭、目標が明確になり自信が持てる、やる気が出る……
  ◇学ぶ意識が持てる、気づく……

注:QCTは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Cycle Time(サイクルタイム)

 競争力向上効果の1つ、「QCTの向上」の事例として、「作業の品質向上と時間の効率化に関する教育」の2つの業務を示す。A社にとって、B社の方法がベストプラクティスである。

表1 事例:「作業の品質向上と時間の効率化に関する教育」
A社B社
経験者や上司によって、品質と時間について、口頭の指導・教育をする。標準化された効率のよい作業手順のビデオを撮って、関係者全員に見せ、タイムチャートを作成して、品質と時間について指導・教育をする。
経験者や上司による現場教育(OJT)を実施する。経験者や上司による、QCTの意識付けを含めた現場教育(OJT)を3カ月間集中実施する。

 General Electric Company(GE)の元会長ジャック・ウェルチは、こんな言葉を残している。「業種が何であろうと、もっとも優れた経営手法を自社の中に、それもスピーディーに取り入れることは、マネージャーの当然の役割である。素晴らしいアイデアならば、どこからでも採用し、しかるべき場で活用し、できるだけ早く吸収する」と。まさに、ベンチマーキングの効果を最大限に発揮することが、経営者や管理職の責任である。

 子会社に転勤したり、社内で他部署に異動した場合に、元の部署との違いに驚くことがあるだろう。その子会社の経営者や部署の責任者の思考や価値観も含めて、いわゆる企業文化や風土が異なるのである。社内での異動でもそうであるから、異業種の場合や海外の場合には、その差はさらに大きく、アッと驚く発見、革新的なやり方が見出せる可能性が予想以上にあることが理解できるであろう。つまり、ベンチマーキングによって、一言で言えば「外部の知によって、改革が進まない現状の打破、古くなった考えや固定概念の払拭等」の効果が期待できる。

 次回、第4回は、「ベンチマーキングの歴史」を紐解く。

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