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  • 2011/03/01

サイバーフィジカルシステム:サイバー空間と実世界の融合を図る新IT活用

社会構造と価値観を変革するIT

実世界の膨大なデータを取り込み、ITやクラウドを社会にとって本当に有効なものにする。その実現を目指すのがサイバーフィジカルシステムだ。サイバーフィジカルシステムは、ビジネスや実社会に対してどのような可能性を持つのか、どのようなインパクトを与え、なにが課題なのか、東京大学 生産技術研究所 教授 喜連川優氏、日本IBM 未来価値創造事業 執行役員 岩野和生氏、日立製作所 基礎研究所 主管研究長 人間・情報システムラボ長 矢野和男氏、国立環境研究所 地球環境研究センター 主席研究員 山形与志樹氏らによるパネルディスカッションが行われた。

フリーランスライター 中尾真二

フリーランスライター 中尾真二

フリーランスライター、エディター。アスキーの書籍編集から、オライリー・ジャパンを経て、翻訳や執筆、取材などを紙、Webを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは言わなかったが)はUUCPのころから使っている。

サイバー空間と実世界の融合

 サイバー空間と実世界(物理的空間)をいかにつなげるか。そこに新しい社会やビジネスを見つけようという動きが活発化している。それが「サイバーフィジカルシステム(CPS:Cyber Physical System)」だ。キーとなるのは、実世界のあらゆる現象をセンシングするセンサー技術とセンサーネットワークと、それらのデータを処理し、演算し、データや結果(知)を蓄積する超データベースシステムだ。

 このCPSについてのパネルディスカッションが「ソフトウェアジャパン2011」において実施された。CPSが、ビジネスや社会構造に対してどのような可能性を持ち、どのような応用が考えられるのか、そのときの課題は何かについて、各方面から専門家や識者が集まり高度な議論を戦わせた。

 パネルディスカッションの司会は情報処理学会 技術応用運営委員会 委員長 丸山宏氏が務め、パネリストには、東京大学 生産技術研究所 教授 喜連川優氏、日本IBM 未来価値創造事業 執行役員 岩野和生氏、日立製作所 基礎研究所 主管研究長 人間・情報システムラボ長 矢野和男氏、国立環境研究所 地球環境研究センター 主席研究員 山形与志樹氏が招かれた。

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情報処理学会
技術応用運営委員会
委員長
丸山宏氏
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東京大学
生産技術研究所
教授
喜連川優氏
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日本IBM
未来価値創造事業
執行役員
岩野和生氏
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日立製作所
基礎研究所 主管研究長
人間・情報システムラボ長
矢野和男氏
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国立環境研究所
地球環境研究センター
主席研究員
山形与志樹氏

CPSは、スマートシティ、老人介護など広範に適用できる

 司会の丸山氏は、CPSがどのような分野に適用でき、どんな効果が期待できるのか、パネリストそれぞれの立場で意見を出してほしいと述べ、議論の口火を切った。

 これに対して、まず山形氏は、CPSはスマートシティの設計と管理に有効であるとした。広範囲かつ詳細にリアルタイムで計測されるCPSが対象とするデータは、スマートシティを設計する上で重要な近未来の予測やモデルづくりに必要なものだからだという。そして、スマートシティでよく語られるITS(高度道路交通システム)やEV(電気自動車)も、効率やコストの面だけでなく、交通事故をなくすといったアプローチでもシステムを設計できるようにしたいと述べた。

 次に矢野氏が発言。産業革命以降、20世紀は肉体労働の生産性を飛躍的に向上させた。21世紀は頭脳労働の生産性を向上させるべくCPSを活用できると述べた。ただし、矢野氏がいう生産性とは、これまでの作業効率を上げるという単純な話ではない。コミュニケーションや幸福感など数値化しにくい要素も含んだ、広い意味での生産性を指す。これらは作業のモチベーションや創造活動に影響があるものだ。いままでは、このような要素はせいぜい単純なモデル化をすることしかできなかったが、CPSのようなあらゆるデータ、人間と直結したデータまでセンシングし、それらの蓄積を分析すれば、いまより科学的な法則や精度の高いモデルが構築できるのではないかとした。

 丸山氏の問いに「社会構造の変革とデザイン」と答えたのは岩野氏だ。矢野氏らがいうように、これまではモデルや技術がありきのアプローチで社会構造がデザインされたり、効率重視のあまりお金(利益・コスト)という要素が過大に重要視されていたが、モデルや技術に合わせるのではなく、CPSのようなヒト・モノ・カネを結びつけるアプローチで、どのような社会にしたいのかで、社会構造を変えるための手段に使えるのではないかという意見だ。公害問題や自動車社会に対して、社会が負担するコストを適切に測れるようになれば、新しいソリューションが見えるかもしれないし、教育、自治体や福祉の問題へのアプローチも変わるだろうとした。

 喜連川氏は、より具体的な適用事例として老人介護を挙げた。今後さらに深刻になってくる老人介護に社会で取り組むとき、CPSが役立つ場面が多いという。介護士不足は深刻であり、すべての老人を手厚くみることはできていないが、センサーやカメラをもっと増やし、ベテラン介護士のナレッジをデータベースシステムで活用することなどが考えられる。他にもフードセキュリティ(食品安全)なども考えなければならない問題で、CPSが適用できる場面があるのではないかと述べた。

 ここで会場から、第一次産業への応用はどうかという質問が出された。山形氏は、自身の研究分野であるとし、日本は森林面積が国土の7割もあるのに、木材は輸入している。ビジネスとして林業が成立しなくなっているのだという。これも、スマートシティを考えるうえで欠かせない問題だとした。喜連川氏は、スマート農業の研究にも携わったことがあるとし、農業は、機械(耕運機)と化学(肥料・農薬)で生産性を上げる時代からITを利用する時代に入りつつあるそうで、この分野の知の集積はオランダが進んでいるとした。

【次ページ】CPSに求められる技術、CPS普及の課題

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