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  • 2011/09/15 掲載

グローバルサプライチェーンにおけるローカル工場の役割、日本HP昭島工場のPCサーバ生産に学ぶ

中堅・中小企業市場の解体新書

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今回はこの連載で初となるPCメーカーの工場を取り上げる。中堅・中小企業向けのこの連載でPCサーバの生産工場を取り上げる目的は、国内のユーザー企業にPCサーバを供給するため、各メーカーがどのような生産体制、技術的な対応、サービス/サポートなどを行っているかを検証するためである。特に中堅・中小企業へのサーバ流通は、販売店経由、いわゆるチャネル販売が主体となるために、細かな要求や課題に対応しなくてはならない。今回は日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)の昭島事業所(昭島工場)を取り上げる。

ノークリサーチ 伊嶋謙二

ノークリサーチ 伊嶋謙二

ノークリサーチ 代表取締役社長
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。

HPが「MADE IN TOKYO」にこだわるわけ

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日本HPの昭島工場(外観)
 日本HPは2006年6月、PCサーバを部分的に日本生産に切り替えた。これは当初、同社の市場シェアの浮上を狙った戦略的な方向転換であった。PCサーバ市場が大きく拡大基調に差し掛かった時期である。グローバルでみても、アジアパシフィックでは唯一日本だけが、ローカル専用の生産拠点を持つ。それだけ日本市場を特別視しているということである。8月からはデスクトップPCとPCサーバだけでなく、ノートPCの生産も中国から移管し、国内生産台数を1.5倍に引き上げる計画を打ち出している。

 「MADE IN TOKYO」、この意味は、日本のユーザーに一番近いコンピュータメーカーでありたいという同社のポリシーだ。要求基準が世界的にも厳しい日本のユーザーに対応するためには、東京にその生産拠点を持つことが必須という考えによるものである。

 このように同社が(少なくとも表向きは)日本を特別視するには2つの大きな要因がある。1つは日本市場の大きさだ。もう1つは、日本がシェア1位をなかなか取れない地域だからだ。日本国内のPCサーバ市場では、シェア1位の座を譲らないNEC(総合台数)の存在がある。打倒NECを目指し、日本HPはNECの最も得意としている中堅・中小企業(SMB)市場を攻略しなければならない。

 そのためには間接販売における生産と物流の拠点を日本に置くことが必須であると考えた。日本特有の細かなカスタマイズニーズや短納期に対応するためには、生産現場に技術を理解したスタッフを置くことが必要だった。そして物流拠点は大消費地である首都圏に置くことが求められたのである。

 昭島工場はそうした日本HPの戦略拠点となる場所だ。技術スタッフ数十名を生産ラインに張り付かせ、日々求められるユーザーのカスタマイズに対応したキッティング作業を実施している。このことは、販売チャネルが中堅・中小企業の細かい要求に応じる速度を短縮化することに成功した。そして販売チャネルの同社に対する信頼関係の向上も合わせて実現されたという。

 「MADE IN TOKYO」は、単なる組立の短期化だけでなく、日本企業の求める世界的にみても高い要求に、いかに早く製品に反映させられるかを同時に果たすことが目的だったのである。

日本HPのPCサーバにおける3つの生産方式

 ここで、同社のPCサーバの3つの生産方式、CTO(Configure To Order)、BTO(Build To Order)、BTS(Build To Stock)について、それぞれの特徴を説明しておこう。

1.CTO(Configure To Order):注文仕様生産
ユーザー企業の希望スペックにもとづいて生産する「注文仕様生産」と呼ばれる方法だ。日本国内のCTO製品はすべて昭島工場で生産される。すべての組み合わせはユーザーの注文次第で作り上げられる。外食でいえば「Subway」のようなイメージだろうか。同社の直販Webサイト「HP DirectPlus」で提供されるダイレクトパートナー(直販のスタイルだが、ダイレクトパートナーという販売店に商流が流れる)のモデル製品は、すべて昭島工場で生産されることになる。昭島工場の生産量は日本国内のHPサーバの実に半分を占めている。

2.BTO(Build To Order)標準製品注文
注文があってから、シンガポール、中国で生産し、それを持ち込んで作るもっとも一般的な生産方式だ。外食でたとえるなら、「モスバーガー」に似た方式といえるだろう。ただ、日本ではほとんど行っていない生産方法となる。

3.BTS(Build To Stock)計画生産
ある程度見込みのある製品をあらかじめ大量に作り置きしておく方法だ。外食にたとえれば「マクドナルド」のような生産方式だが、現在日本ではほとんど行っていないという。

【次ページ】生産拠点が日本にある利点

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