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  • 2012/02/22 掲載

【武田知弘氏インタビュー】大日本帝国の経済成長の裏には何があったのか?

『教科書には載っていない大日本帝国の真実』著者 武田知弘氏インタビュー

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日本が転換期を迎えている中、歴史から成功した点や反省点を探り出すことは重要だ。武田知弘氏は、『教科書には載っていない大日本帝国の真実』(彩図社)で多くのイメージに覆われた大日本帝国の実態について光をあてた。その狙いや今の日本がそこから何を学ぶべきか、著者にお話を伺った。

知っているようで知らない、大日本帝国の社会、政治、経済

――本書は大日本帝国の知られざる側面について多くの指摘を行っていますが、まずどうしてこのテーマにご関心をお持ちになったのでしょうか?

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『教科書には載っていない大日本帝国の真実』

 武田知弘氏(以下、武田氏)■大日本帝国というと、言論の自由もなく、貧しい「暗黒時代」というイメージを持っている方が多いようです。しかし、日本は敗戦によってまったく別の国に生まれ変わったわけではありません。国名は変わっても、同じ国民が形成している国であり、良かれ悪かれそれまでの歴史を引き継いでいるわけです。

 戦後は、アジア諸国に対する配慮などもあり、「戦前と戦後はまったく別の国ですよ」といったポーズをとる必要があったのかもしれません。しかし、アジア諸国との関係も大きく変わり、もうそのようなまやかしをしなければならないような時代ではありません。戦後60年以上が経過し、戦前の生々しい記憶というものは、消えようとしています。逆に言えば、戦前のことを冷静に考えられる時期がようやく来たともいえるのです。

 こういう時期だからこそ、大日本帝国を客観的に分析する必要があるのではないか、と思います。過去の事を「良い時代だった」「悪い時代だった」というような単純な二元論で分析しても、我々は何も学べないと思うのです。

 大日本帝国というのは、最終的には第二次大戦で焼け野原になって降伏するという不幸な出来事とともに終焉したわけです。その不幸な出来事はなぜ起きたのか? そこに至るまでの過程を淡々と追っていかなければ、我々はそこから何も学ぶことはできない、と考えます。そういった文脈で、大日本帝国の興亡を、イデオロギー論議を排して淡々と客観的に追っていくということに非常に関心がありました。

――明治維新について“「政権を自ら返す」という奇妙な革命”と書かれています。この一風変わった革命が生じた背景をお教えいただけますか。

 武田氏■明治維新は、世界史的に見ても非常に珍しい“革命”です。政権を持っていた者が自ら政権を返還するということは、世界史を眺めてみてもほとんど例がありません。これは、実に日本的な現象であり日本人だからこそできたものだったように思われます。日本人は、どの時代を見ても、生きるか死ぬかの血みどろの戦いをし、最後まで殺し合って勝者を決めることを好みません。ある程度の形勢が判明したところで歩み寄り、話し合いで解決する、という傾向があります。それは日本中が戦いに明け暮れていた戦国時代でもそうです。

 日本人は、根の部分で「和」を重んじる性質を持っていると思われます。それが明治維新を成功させた要因であり、ひいては日本が欧米列強から侵略されなかった最大の要因といえると思います。幕末の知識階級は、欧米列強がアジアを侵攻していることを知っており、危機感を持っていました。そして「今は国内で争っている場合ではない」「日本人は団結するべき」と思っていました。それは、幕府側も、薩長や尊王攘夷派の面々も同じです。つまり、敵味方ともに、大枠では同じ方向を向いていたのです。だから、大した内戦もなく、長く続いた封建制度を解消し、強力な統一国家を作れたのです。

 これが、他のアジア諸国と大きく違うところです。他のアジア諸国のほとんどは、欧米が乗り込んで来たとき、国内が動揺し群雄割拠や、内戦状態に陥ってしまいました。欧米諸国は、そこに付け込んで侵略していったのです。

――現在も北方領土問題などが懸案として存在している日露関係ですが、両国の領土問題はそれこそ江戸時代から起き続けている、と本書では指摘されています。両国が激突した日露戦争は、大日本帝国にとってどのようなインパクトを与えたのでしょう?

 武田氏■日露戦争は、ロシアとの国境問題を日本に非常に有利な状況で解決するとともに、日本人に大きな自信を与えました。が、日露戦争というのは、当時の指導層が知恵をふり絞り、死力を尽くして、なんとか勝てたもので、当時の日本にしてみれば、ちょっと出来過ぎの感がありました。それが、過信につながっていったと思われます。

 大日本帝国が、満州事変以降の泥沼の戦争に突き進み、あげくアメリカとまで戦ったのは、「我々はロシアに勝てたのだから」という意識があったからだと思われます。また日露関係の問題は、日露戦争でまったく解決したわけではありません。陸軍にとって、最大の仮想帝国はその後もロシア(ソ連)であり続けましたし、太平洋戦争前にもノモンハンでの武力衝突などもありました。

 日露の国境問題は、第二次世界大戦の終結でも、完全に解消されたわけではなく、ご存じのように現在も続いているものです。ロシアという国は、巨大でありながら、国土の多くが極寒の地であり南下しようとする本能のようなものがあります。日本は、そういう国と隣り合わせているのです。日本はロシアのそういう性質をしっかり見極めた上で、付き合っていかなければならないということです。

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