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  • 2012/06/25

矢野経済研究所 松井和之氏インタビュー:ユニクロと異なる価値をいかに訴求できるか!アパレルの生き残り戦略

成長にはSPA化が必須?

昨年の東日本大震災によって消費者の節電意識が高まり、それまで縮小傾向にあったアパレル業界はクールビズやウォームビズによる恩恵を受けることができた。しかしファストファッションが先導した低価格化は行き着いた感があり、国内市場も2011年度は一旦持ち直す見込みだが、先行きはまだまだ不透明だ。今後日本のアパレル業が生き残っていくためには、どのような方向性を目指せばいいのだろうか。アパレル業界に詳しい矢野経済研究所 ファッション・スポーツ&リテール事業部 主席研究員の松井和之氏にお話を伺った。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

1つの究極形であるユニクロから、いかに差別化を図れるか

photo
矢野経済研究所
ファッション・スポーツ&リテール事業部
主席研究員
松井和之氏
──ユニクロなどの登場によって、我々消費者には“安い衣料”が定着しました。しかしアパレル業界にいるすべてのプレイヤーが、その真似をできるわけではありません。一方で工場のある中国での人件費や原材料となる綿花の価格も高騰してきているようです。現在のアパレル業界の抱える課題について、どのように見られていますか。

 おっしゃるように、ユニクロなど低価格のSPA(注)チェーンによって、消費者には価格重視の消費行動が根付きました。それを受けて、アパレル業界全体でも価格を重視した製品作りに取り組むようになってきています。

SPA(=Speciality store retailer of Private label Apparel)
商品の企画/製造/販売までを一貫して行うビジネスの形態。製造小売業とも呼ばれる。

 しかしユニクロが類まれな低価格で、一定水準以上の品質を実現している現状を考えれば、他社が価格だけで勝負するのは非常に難しい。

 そこで価格以外のアパレル商品の価値を考えてみると、クオリティやトレンド、デザインといった要素が挙げられます。このうちのどれに磨きをかけていくのか、あるいはいかに複合的な価値を提供していくのか、という点が、今後各プレイヤーにとって一番大きな課題だといえるでしょう。

──アパレル業界では、ユニクロの存在感がそこまで大きくなってしまったということですね。

 そういうことです。国内のユニクロ事業の年間売上高は、約6,000億円(2011年8月期)と国内アパレル総小売市場規模(8.9兆円)の約1割弱を占めています。他の企業がそもそもこの規模に正面から戦いを挑むのは難しいですね。

 そこでユニクロとは異なる価値をいかに訴求していくか。アパレル業の生き残り戦略は、この点に尽きると思います。

画像
品目別の国内アパレル小売市場規模推移と予測(矢野経済研究所推計)
注:小売金額ベース、2011年は予測値(2011年9月現在)
出所:矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査結果2011」(2011年10月3日発表)

第一段階として各プレイヤーが目指すべき方向性は“SPA化”

──ただアパレル業と一口にいっても、大きく小売とメーカーに分かれ、さらに小売なら今お話に出たSPAやセレクトショップ、メーカーなら総合衣料や下着、子供服といった形態に分類されます。こうした業態の違いや取り扱い商品の違いも勘案した上で、目指すべき方向性というのは考えられるのでしょうか。

 これからのアパレル業界で成長していくためには、消費者のニーズを商品づくりに反映させるという意味である程度のSPA化は必須だと思います。メーカーなら小売部門、小売なら製造機能を持たないとオリジナリティを訴求するのは難しいでしょう。

 従来のアパレル業界では、メーカー→卸→小売と商品が流れ、消費者の声はこの逆の流れでメーカーに入ってきました。しかしモノ作りを担うメーカーに消費者ニーズが届くまでにはタイムラグがあり、一方の小売側にも顧客ニーズは掴んでいるものの、すぐに商品を提供できないというジレンマがありました。

 そこで既に顧客接点を持っている小売業は、自分たちで製品を作ることでよりタイムリーな商品提供が可能になり、対するメーカーも小売機能を持つことで、いち早く顧客ニーズを自社の製品作りに反映させることができるようになります。

 どんな業界にも当てはまることですが、企業活動の起点となるのは顧客の声です。それをいかにスピーディに流通させて、モノ作りに反映させることができるか。それが生き残りに向けての大きな鍵を握ると思います。

──ニーズに合致したモノ作りを実現し、消費者に商品をタイムリーに提供していくためには、情報流通のスピードアップが求められる、そのために必要となるのがSPA化だと。

 そういうことです。情報流通を自社内で完結できることで情報の精度もより高いものになるでしょう。

 またSPAという形を採ることで、中間マージンを省くことが可能となります。原価の上昇要因を抱えるアパレル業にとって、SPAはコスト面でもメリットの出るものです。

──少し本題から外れるかもしれませんが、今の時代ではなくても、SPAのようにすべての機能を自社内に持つことで、コスト的にも、顧客ニーズを掴むスピード的にも大きなメリットがあると思われます。逆に今まで役割が分かれていたのはなぜでしょうか。

 それは繊維産業の成り立ちに起因しています。

 昔は同じものを大量に作れば売れた時代、つまり大量生産/大量消費の時代でした。その時に糸を紡ぎ、生地を作り、洋服に仕立てて、販売する、というすべての工程を1社でやろうとすれば、設備投資も相当の規模になり、また多くの人手も必要になります。

 そこでは役割を分担し、各々に専業化するほうが効率がよかったのです。プレイヤーが分かれて、各機能に専念したほうがコスト的にもメリットがあった。

 しかし今は消費者ニーズの移り変わりが激しく、アパレル業に求められているのは多品種少量生産です。色々な種類の商品をタイムリーに提供していくことを考えなければ、生き残ることができなくなっている。その時に大きな鍵を握るのが、SPA化だということです。

【次ページ】自社のオリジナリティを打ち出していくためには?

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