世界中の起業家を引きつけるシリコンバレーの魅力
シリコンバレーが未だに注目される理由はどこにあるのだろうか。日米のベンチャーの投資育成と橋渡しを行う組織WiL(World Innovation Lab)創業者でモデレータの伊佐山氏は、講演の冒頭で次のように説明した。
「ベンチャーキャピタルの投資額を比較すると、日本が約1200億円で、アメリカは約3兆円です。これにエンジェル投資家の2兆円を加えて、約5兆円くらいのリスクマネーがシリコンバレーに集まっています。これが多くの起業家を引きつけるのです。さらに、GDP比でわずか1%にも満たない投資によって、ベンチャーが生み出している付加価値が、GDP貢献度20%を超えている。さらに、民間雇用の10%を生んでいる。それだけ社会的なインパクトが大きいのです」(伊佐山氏)
続いて、伊佐山氏から4名のパネリストに対し、シリコンバレーで活動することになったきっかけ、苦労したこと、学んだことなどの質問が投げかけられた。
シリコンバレーで活動することになったきっかけは?
彼らはなぜ、シリコンバレーに活動の場を求めたのか。ソースネクスト 代表取締役社長の松田氏は、「いいものを見つけて日本で売るというのが当社のビジネスです。1週間、1ヶ月といった短期出張でもいろいろなアライアンスができたものですから、『これは住んだらすごいことになるだろう』と思ったのが、シリコンバレーに住むことになったきっかけです」と語る。
続いて、エバーノート日本法人 会長の外村氏はこう語る。「最初は、それほど志があったわけではないのです。盛り上がっているから来てみた、というのが正直なところです。シリコンバレーには、わくわくする人が非常に多い。日本にいるといろいろと気を遣うことも多いのですが、ここなら、本来、やりたいことにエネルギーを注げます。次から次へと刺激が終わらない場所です」
洗練された電動車いすが注目を集めている気鋭のベンチャー企業、WHILL 共同創業者兼CEO の杉江氏は、「2011年の東京モーターショーで電動車いすを出展したら、アメリカのメーカーからすぐにコンタクトがありました。調べてみたら、アメリカは電動車いすの市場が日本の15倍あることがわかりました。だったら、行ってみようと。自分たちのユーザーが多かったので、やってきたということです」と語った。
トレジャーデータの芳川氏は三井物産の金融投資会社に在籍していた当時、駐在員としてシリコンバレーに生活の基盤があったという。「そこで、いろいろな仲間達と意見をぶつけ合える環境があったのです。私の専門は企業向けの基盤ソフトですが、ビッグデータが盛り上がっていて、人生一回しかないのだから、こんなチャンスはないだろう、というのがきっかけです」と当時を振り返る。
シリコンバレーで苦労したことは? 杞憂だったことは?
「苦労したのはハイアリングです。アメリカでは、履歴書だけ見ても絶対にわからないので、必ず3人以上のリファレンスをとるようにしています。また、1ヶ月は必ずいっしょに働くようにしています」(杉江氏)
ソースネクストの松田氏は「シリコンバレーの拠点のトップを誰にするかで悩みました。本来なら、英語のできる最も優秀な社員を送り込むのが常套手段ですが、やはり、現地の経営者の感性を肌で感じられないとダメだと。なので、私自身が乗り込むことにしたのです。では、日本はどうするかですが、日本には10数年働いている優秀な社員がいましたので、彼らに任せた方が合理的だと判断しました。その結果、全員が自分達で考えるようになり、業績も大きく伸びました。」と語る。
外村氏は「日本でうまくやる人、特に大企業でうまく適応している人は、「先回り心配症候群」になるんだと思います。「何かあったらこうしよう」「もしもうまくいかなかったら、こうやろう」とか。そして、いろいろ考えた挙げ句、いろんなことができなくなる。私自身もそうでした。いまでも覚えていますが、会社をやろとして半年くらい悩んだものの、実際にやってみたら、マイナスは何もなかったのです。やる前から心配している人が、とても多いと思います」
【次ページ】シリコンバレーで活躍できる人の特徴