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  • 2014/10/06 掲載

「姥捨て山」の教訓でビジネスに活路を見出す:人を動かす極意

むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意

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高齢化が進む日本。年金受給者の比率はますます高まり、3人で1人の高齢者を扶養しているところ、将来的には2人で1人を扶養しないといけなくなると予測されている。しかし、これを嘆いたところで高齢化が止まることはなく、年金問題も解決できない。何か得策はないものだろうか。ところでこの高齢化の問題、どこかで聞いたような気がするのは私だけではないだろう。そう、60歳を越えた年寄りを山に捨てるというお触れがあったという国の話。あの民話「姥捨て山」である。もちろんフィクションだが、一説によると不作や飢饉に見舞われた一部の集落の掟として、老母を捨てるという残酷な行動があったとの言い伝えもある。深沢七郎氏の短編小説「楢山節考」ではこの逸話が民間伝承の棄老伝説として描かれている。ちなみに深沢七郎氏はこの作品で中央公論新人賞を受賞し、後に映画化やテレビドラマ化もされた。さて、「姥捨て山」、これはただの民話ではなく、実は高齢化や年金問題解決のカギ、さらには企業繁栄のヒントが隠されている。今回はこの「姥捨て山」の主人公から人を動かす極意を学んでみたい。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

「姥捨て山」の意味するもの

photo
 「姥捨て山」について簡単におさらいをしたい。諸説があるようなのだが、ここではWikipediaからスタンダードタイプを引用する。

 「ある国の殿様が、年老いて働けなくなった者を不要として山に遺棄するようにというお触れを出す。ある家でもお触れに逆らえず泣く泣く老親を山に捨てようとするが、結局捨てることができず、密かに家の床下にかくまう。

 しばらくの後、隣国からいくつかの難題が出され、解けなければ国を攻め滅ぼすと脅されるが、それらの難題を老親の知恵によって見事に解き、隣国を退散させる。老人には長い人生の中で培われた知恵があり、それが粗末にできぬものであることを知った殿様は、お触れを撤回し、老人を大切にするようになった」 というお話。

 主人公である老親を「高齢者」、隣国を「ライバル社」もしくは「クライアント」とすれば見事、現代にも当てはまる。つまり、高齢者の知恵やノウハウをうまく活用できれば、ビジネスに活路が見いだせるのではというテーゼなのだ。

 「そんなこと言われなくてもわかっている!」という声が聞こえてきそうだが、果たしてそうだろうか。たとえば定年後の制度として導入されている嘱託社員。通常業務の延長線上で働いてもらい、給与は3割減。権限や責任を与えずにあくまでもパートタイム従業員として所属している。この状態では隣国(ライバル社や競合相手)から攻め込まれても高齢者自身が知恵を出すことはできない。

 本来の高齢者の活用は積み重ねた知識やノウハウをフル活動してもらい、現役では思いもよらない活躍をしてもらう、いわゆるスーパーバイザーとして働いてもらうことである。

 そのためには、高齢者にスーパーバイザーとして働いてもらうための環境と地位を保障することが不可欠だろう。

 では、どのようすれば地位が保障できるのか。答えは人気ドラマ「踊る大捜査線」で活躍する名わき役、いかりや長介さんが演じた和久平八郎(和久さん)の役割にある。

 ドラマの中の和久さんは現役時代、湾岸署刑事課強行犯係で腕を馴らし、退職者再雇用制度により、湾岸署刑事課指導員として若手の指導をしていく。

 この中で主人公の織田裕二が演じる青島刑事に対して「疲れるほど働くな、次がある」や「この仕事は憎み合いじゃない、助け合いなんだ」、「正しいことをしたかったら偉くなれ」など、含蓄のある言葉でメンタル面のサポートをする。

 さらに、「現場に立ち、被疑者の気持ちになれば逃亡先が読める」と長年の経験者ならではのテクニカルサポートも行う。こうした和久さんのスーパーバイザーとしての役割が事件を解決に導いていくのである。

 ポイントは和久さんが遊軍的な存在であることに他ならない。遊軍という地位であるからこそ現場が俯瞰でき、冷静な判断や老練された知恵を導き出すのである。

【次ページ】会社を救った、実在する「和久さん」

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