• 2014/11/10 掲載

経済産業省も推進するOSSとクラウドの活用が、ベンダーロックインから脱却させる

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長きにわたって蓄積されてきたCOBOL資産は、クラウドの潮流のなかでどのように活用できるのか。2014年10月22日、東京・丸の内にて東京システムハウス主催のイベント「MMSフォーラム2014」が開催。MMS(メインフレーム・マイグレーション・サービス)20周年を記念した本イベントでは、クラウド・マイグレーション最新動向、オープンソース(OSS)を活用したメインフレーム・マイグレーション事例の紹介のほか、経済産業省、SIer、ユーザー企業が登壇したパネルディスカッションが繰り広げられた。

執筆:フリーランスライター 吉田育代

執筆:フリーランスライター 吉田育代

企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。

クラウド・マイグレーションはオープンソースの時代へ

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東京システムハウス
マイグレーションソリューション部
執行役員部長
清水 真氏
 MMSフォーラム2014に登壇した東京システムハウス マイグレーションソリューション部 執行役員部長 清水 真氏は、今回の主要トピック2つを挙げた。

 ひとつは、メインフレーム/オフィスコンピュータ(オフコン)・マイグレーションだ。

 同社調査の統計資料によれば、オフコンは現在約9000台現役で稼働しているといい、今後10年で3000台前後まで減少するとされている。同社は、ここにマイグレーションのニーズがあると考え、COBOL資産継承ソリューション、マイグレーション用フレームワークを拡充しているという。

 そしてもうひとつのトピックは、クラウド・マイグレーションだ。2014年の今年は、大きな進歩を記録する年になった。

 同社は、経済産業省の推進する平成26年度 クラウド推進実証事業の採択事業者として指名された。OSSの「opensource COBOL」の実行基盤をクラウド上に構築し、企業が保有するCOBOL基幹システムをクラウドへ移行させ、安定的な運用を目指すという研究開発事業だ。

 清水氏は「実証事業で得られたものを独占するつもりはない。当社の顧客に使ってもらうことはもちろんだが、成果はオープンソースとして公開し、システム・インテグレータやデータセンター事業者にも基盤として活用してもらうことで、クラウド・マイグレーションを推進したい」と語り、20年にわたって注力したCOBOLマイグレーションから、クラウドへの転換に力を入れていくことを強調した。

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クラウド・マイグレーションの可能性

JP情報センターが15年で4回経験した
COBOLの大規模マイグレーション

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JP情報センター
専務取締役
岩澤 仁氏
 紙パルプ商社として業界唯一の上場企業、日本紙パルプ商事の情報システム部門が分社独立して誕生したのが、JP情報センターだ。

 JP情報センターは親会社向けシステム開発や、外販で紙卸商向けシステム、紙物流企業向けシステムなどを手がけており、親会社のシステムで約6,000本、紙卸商システムで約2,000本、物流統合システム約500本、40年間使い続けてきた莫大なCOBOL資産がある。

 また同社は過去、15年で4回もの大規模なマイグレーションを実行してきた経験を持つ。専務取締役の岩澤 仁氏は講演のなかで、こうしたマイグレーションの経緯について「顧客業務の継続や長年にわたるシステム利用を考えたら、リスクが大きくて一度にすべては変えられないが、最新技術との連携は求められる。この2つをかなえるのにマイグレーションを選択してきた」と理由を語る。

 1999年、第一次で行ったのはオフコンからオープンサーバへのマイグレーションである。対象は前述の外販向けパッケージシステム。オフコンメーカーのマイグレーションツールを使ってメーカー系オープンCOBOLへ移行した。

 2001年の第二次のマイグレーションでは、東京システムハウスが当時提供していたACUCOBOLを採用。まだクラウドという言葉もない中、仮想化技術とデータセンター、マイグレーションを組み合わせてSaaSを実現させた。

 第三次は親会社の汎用機マイグレーションだった。再び東京システムハウスに依頼した同社は、画面、COBOLソース、JCLなどをそのまま継承でき、画面レスポンスやバッチ処理性能を向上させたシステムが完成した。仮想化技術の採用で、システム増強が迅速に行える体制も確立したという。

 第四次でめざしたのはベンダーロックインからの解放だ。外販向けパッケージシステムのひとつに、東京システムハウスが推進しているopensource COBOLを採用し、システムをフル・オープンソース化した。2012年1月にスタートしたプロジェクトは2014年4月にサービスインを果たし、安定稼働の実現とともに、BI環境も整備した。

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JP情報センターがフル・オープンソース化に踏み切った理由

 岩澤氏は「安定したシステムを長期的に、低コストで運用するためには、今後メーカーに縛られないOSSでのシステム構築が主流となる。ユーザー企業がこれを実現するためには、サポート企業の選定が重要である」と、自身が経験をもとに強調した。

【次ページ】栄研化学の成功事例、メインフレームからオープンシステムへ

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