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  • 2014/11/25 掲載

セゾンや三井住友も続々開始するCLOとは?カード決済連動型サービスの仕組みと利点

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クレジットカードを活用した新たなマーケティングツールとして、「CLO(Card Linked Offer)」が期待を集めている。CLOとは、カード利用者の属性や決済履歴に基づいて、クーポンや特典を表示させる仕組みのことで、2008年頃から米国で展開されはじめた。国内でもクレディセゾンを皮切りに、三井住友カードやセディナ、ジェーシービーなどの国内カード会社が続々と取り組みを始めている。また、CLOベンダーとして、DNPや日本ユニシス、TIS、NTTデータもサービスを開始している。急速に注目を集めるCLOとは何なのか?今回はそのメリットや普及の課題などについて解説する。

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元において、雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わる。電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括。2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト「payment navi(ペイメントナビ)」「PAYMENT WORLD(ペイメントワールド)」などのサービスを手掛けるTIプランニングを設立した。


カード決済してもらうだけで特典の提供が可能なCLO

 CLOとは、クレジットカード決済での購買動向や利用者の属性情報に基づいて、カード会社の利用明細画面上などでクーポン配信などのマーケティング施策を提供するというものだ。従来のように、すべての消費者に同じ特典を提供するのではなく、カード決済情報という精度の高い購買情報に基づいて、反応する角度が高いと思われる消費者だけに特定のクーポンや特典を提供できるようになる。

 CLOの具体的なサービスの流れは下記の通りだ。

  1. イシュア(=カード発行会社)や加盟店は、自社サイトやCLOベンダーから提供された登録画面に提供したいクーポンを登録する。その際、配信したい属性(年代、性別、自社店舗の利用実績)などを登録することも可能
  2. 利用者は、クレジットカード情報を登録し、数ある特典の中から自身が使いたいクーポンを選択する
  3. 利用者は選択したクーポンの加盟店で登録したクレジットカードで決済する
  4. 後日、利用者にクーポン分の金額がキャッシュバックされたり、ポイントの付与が行われる(クレジットカードの利用明細などで確認)

 CLOがなぜ注目を集めているのかというと、利用者、クレジットカード会社、加盟店(店舗)それぞれにメリットをもたらすと言われているからだ。それぞれのメリットを見ていこう。

利用者のメリット

 紙や画面のクーポンなどを提示する必要はなく、登録したクレジットカードで決済するだけで特典を受けることが可能になる。たとえば、20代の男性が女性とデートする際、紙のクーポンや携帯の画面などを見せることなく、カードを出すだけで特典を受けられるため、クーポンを出するのを躊躇することもなくなるだろう。また、カード会社や加盟店の顧客分析により、自身の趣味・嗜好に合った特典が届くケースも増えると予想される。利用者は自身の購買活動に合ったクーポンを便利に使うことができる。

クレジットカード会社のメリット

 クレジットカード会社は、従来、緩やかな購買属性から顧客分析を行うケースが多く、顧客の趣味・嗜好に合ったサービスを提供しにくいといった課題があった。CLOにより、実際に決済まで結びつくため、カードの稼働率アップに役立てることが可能になる。また、毎月、顧客に合った特典を提供することで、継続的なコミュニケーションが実現でき、その面でもカード稼働率を高めることが可能になる。さらに、加盟店の売上拡大につなげることで関係を強化でき、成功報酬型の収益を得ることもできる。

店舗のメリット

 店舗にとっては、集客につながる点が最大のメリットだ。年齢、性別、自社の過去の利用実績、競合他社利用状況といった条件からクーポンを配信する対象を抽出し、特典を提供することも可能だ。そのほか、商品を指定したCLOサービスにより、メーカーとタイアップした販促施策も行えるようになる。また、実際にカードが利用された分だけ手数料を支払えばよいため、費用対効果を図りやすい。さらに、単なるカード決済のため、スタッフの教育やオペレーションの変更は不要で、大きなシステム投資なく特典を提供することができる。


セディナがNRIと実施した実証実験では想定以上の成果

 このように三者三様のメリットがあるCLOだが、米国ではすでに数千の金融機関が利用しており、10を超えるCLOベンダーがサービスを提供していると言われている。たとえば、米CardlyticsというCLOベンダーが実施した取り組みでは、バーガーキングのカード購買履歴にマクドナルドの特典を表示。カード会員はその広告をあらかじめクリックしておけば、マクドナルドでカード支払いをするだけで、その特典が受けられる。

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セゾンCLOの利用イメージ。WEB明細画面に特典を提示して利用を促している
 日本でもカード会社の多くがCLOサービスを提供、もしくは検討しており、CLOベンダーも積極的に営業を行っている。国内でいち早くサービスを開始したのがクレディセゾンだ。同社では、日本発のファイナンススタートアップのカンムと提携し、カード決済連動型サービス「セゾンCard Linked Offer」(セゾンCLO)を提供している。

 毎月約50の加盟店優待情報をWEB明細画面に配信。利用者はエントリーの後、該当加盟店でカードを利用すると、「永久不滅ポイント」がお得に貯まるという。今後は、スマートフォンアプリを活用した展開やリアルタイムな情報配信も検討していきたいとしている。

 クレディセゾン ネット事業部 マーケティング部長 磯部泰之氏は、「3年後に、国内を代表するアフィリエイトモール『永久不滅ドットコム』と肩を並べるサービスを目指していきたい」と意気込みを見せる。

 三井住友カードでは、デジタルガレージと連携し、同社のポイントモール「ポイントUPモール」内で紹介する実店舗への訪問を予告したのち、一定期間内にその店舗でクレジットカードを利用すると、獲得できるポイントが20倍になるサービスを行っている。

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セディナの「セディナキャッシュバッククーポン」配信イメージ。加盟店が属性を指定してオファーを出せるのが特徴
 セディナでは、野村総合研究所(NRI)と協力し、「セディナキャッシュバッククーポン」の実証実験を実施している。「セディナキャッシュバッククーポン」は、加盟店が提供する「キャッシュバッククーポン」を、アプリを登録した会員に合わせて、タイムリーにスマートフォンに配信するサービスとなる。

 当初は5,000名のモニター会員、10社の加盟店を目標としていたが、1万人を超えるモニター会員、9社11ブランドの加盟店からクーポン提供があり、「会員の利用についても想定以上の結果が出ている」とセディナ ネットビジネス推進部 Web企画グループ グループ長 小島英紀氏は成果を口にする。同サービスの特長としては、スマートフォンのアプリを活用したプッシュ配信が可能なこと、加盟店側でオファーの設定やセグメントの指定が行える点だ。

 クレディセゾンもセディナも提携カードを発行する加盟店を数多く抱えているため、CLOサービスにより、リアルへの送客をサポートできると期待している。

 ジェーシービーは、クレジットカード決済に連動したクーポン・情報配信サービス「イマレコ!(IMA-RECOMMEND!)」を開発し、2015年3月31日まで、新宿エリアで実証実験を行っている。「イマレコ!」は、利用者の属性や、事前に登録した趣味・嗜好などの情報、また、クレジットカード利用時の状況が、加盟店が事前に設定した配信条件に合致した場合に、当該加盟店のおトク情報やクーポンがリアルタイムで届くサービスとなる。また、「イマレコ!」とは別にCLOサービスの提供も進めているそうだ。

【次ページ】商品指定、決済ネットワーク活用、加盟店向けサービスなども登場

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