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- 2014/12/09 掲載
「夢と妄想」がビジネスチャンスを生むというお話:人を動かす極意
むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意
ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャが繰り出す奇想天外な世界
同社によると既成の常識や権威に屈しないドン・キホーテのように、新しい流通業態を創造したいという願いが込められているとのこと。元々、狭い店舗で多くの商品を並べるために考案された圧縮陳列は商品の無秩序空間を形成し、顧客はジャングルを探検するといったアミューズメントを楽しむ。
防犯、防災上の批判はあるが、主人公のドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャが自らの意思を曲げることなく冒険旅行を続ける物語を彷彿とさせ、一定のファン層を獲得しているのもうなずける。
ここで特筆すべきは小説「ドン・キホーテ」のハチャメチャな夢と妄想の世界をそのままビジネスモデルにしているということ。
現実を見るのならば、見やすく、買いやすく、取りやすくのセオリーを守るのだが、ドン・キホーテはその真逆を行き、忙しい現代人のライフスタイルであるタイムイズマネーをも打ち砕く「時間消費型ストア」を標榜している。売れ筋を厳選し効率を上げるという現実を無視し、「誰が買うの?」と疑うような商品を並べ、1店舗当たり4万点の在庫を持つ。
ところが、これが他社との差別化につながり、激戦と言われて久しいディスカウント業界で成功を収めている。つまり、「夢と妄想」と現実のギャップを利用することで新たなビジネスモデルを創作し、チャンスにつなげたのだ。
さて、ここでディスカウントストア「ドン・キホーテ」の原点となっている、小説「ドン・キホーテ」の内容だが、これが意外と知られていない。物語は1605年に出版された前編と、1615年に出版された後編に分けられる。
この作品、なんと聖書の次に世界で出版されていて、2002年にはノーベル研究所と愛書家団体が発表した、世界54ヶ国の著名な文学者100人の投票による「史上最高の文学百選」で1位を獲得したロングセラー小説でもある。映画や演劇、バレエの演目にもなり、400年の時を経た現代でも根強い人気を博す。
まずは前編であるが、「ラ・マンチャのとある村に貧しい暮らしの郷士がいて、騎士道小説好きが高じ、本を買うために田畑を売り払うほどになり、昼夜を問わず読んだあげくに正気を失ってしまう。やがて自らを騎士と名乗り、正義を貫くために旅に出る。古い鎧や痩せ馬(ロシナンテ)を引っ張りだし、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと名乗ることにした。旅に出たドン・キホーテは宿屋を城と思いこみ、亭主を城主だと思いこんだり、トレドの商人たちに叩きのめされたりしながら這う這うの体で村に帰るが、周囲の反対を押し切り再び旅路へ。処分された本は魔法使いによって消し去られたと告げられても動ぜず、サンチョ・パンサという農夫に『手柄を立てて島を手にいれ、その領主にしてやる』と吹きこみ、従士に仕立てる。その後、数十基の風車を巨人だと思いこみ、全速力で突撃し、吹き飛ばされて野原を転がるシーンが展開される。サンチョの指摘にも彼は『自分を妬む魔法使いが、巨人退治の手柄を奪うため巨人を風車に変えてしまった』と言い張り、なおも旅を続ける」といった内容。
この風車に叩きのめされるというシーンが有名なのは、当時オランダがスペインから独立を果たしたことを揶揄するという説から出たからと言われている。
後編では、前編での話が出版され有名人になったドン・キホーテが、鏡の騎士と決闘をしたり、魔法で侍女から田舎娘にされたとする女たちにバカにされたり、闘わないライオンに不戦勝をしたりしながら三度目の旅を続ける。後編では前編と異なり、不本意な婚姻を迫られている女性を助け、ドン・キホーテをからかう侯爵夫人に対して持論を曲げずに対峙するシーンが盛り込まれている。さらに、彼の夢と妄想に振り回される登場人物が数百人を越えるというから驚かされる。
【次ページ】現代版、ドン・キホーテの躍進
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