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  • 2015/01/30

おとぎ話のヒーローが地方経済を救う:人を動かす極意

むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意

記録的な大雪に見舞われた新年。各地で死傷者や建物被害に加え、交通機関や物流の乱れで都市機能が麻痺する状況に。特に地方の山間地域では住民が孤立するなど、被害は深刻だ。地方都市と大都市圏の格差は物流だけではない。経済をはじめ、医療サービスや教育、人口の減少など問題は多岐に渡る。特に人口の流出は深刻で、有識者らでつくる民間研究機関「日本創成会議」の試算では、2040年までに全国の計896自治体で、2012年に子どもを産んだ女性の9割以上を占める20~39歳の女性が半減すると発表。その中には東北の県庁所在地も含まれ、このままでいけば地方の人口減少が止まらず行政機能の維持が困難になるという、衝撃的な報告となっている。人口減少は地方都市だけの問題ではなく、結果として農林水産業の衰退をもたらし、自給率の低下をはじめとした日本全体の食糧問題にもつながる。では、このまま手をこまねいているだけで良いのだろうか。この人口減少に歯止めをかけるヒントは、ある雪深い地方で語り継がれているおとぎ話の中にある。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

地方経済を活性化するヒーロー

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 古くから語り継がれるおとぎ話の一つである「笠地蔵」は、貧しいが心の清い老夫婦が、道端の地蔵に菅笠を被せることで、その恩返しを受けるというストーリー。他の多くの昔話のように善悪の対比による教えではなく、正しい行いをする者は救われるという“仏教思想”の観念に基づくものだと言われている。

 一見、道徳を教え、諭すという寓話のようにとらえられがちだが、実はこの話、経済学の要素を持ち合わせているのだ。

 ここで物語のおさらいをしたい。

 ある雪深い地方に、貧しい老夫婦が住んでいた。年の瀬がせまり、おじいさんは新年を迎えるためのモチを買うために、自家製の笠を売りに町へ出かける。しかし、笠はひとつも売れず、吹雪いてくる気配もしてきたため、やむを得ず笠を売ることを断念。

 帰路、吹雪の中で、おじいさんは7体の地蔵を見かける。心のやさしいおじいさんは、素通りすることなく地蔵の雪をはらい、商品だった笠を丁寧に被せていく。さらに、手持ちの笠が2つ足りないことから、自らが被っていた笠と手ぬぐいも地蔵に被せる。結果、手ぶらで帰宅したおじいさん。モチを待ちわびていたおばあさんはその行為を責めることなく、「良いことをしましたね」と絶賛。老夫婦は空腹のまま眠りにつくことに。

 その夜、「ドスン、ドスン」と大きな音に目を覚ました老夫婦が扉を開けると、家の前に米俵やモチ・野菜や魚などの様々な食料と小判などの財宝が山と積まれていた。雪の降る中、遠くに目をやると手ぬぐいをかぶった1体の地蔵と笠をかぶった6体の地蔵が去っていく様子が見えたのだという。 老夫婦は地蔵からの贈り物のおかげで、良い新年を迎えることができたというお話。

 どこが経済学だという声が聞こえてきそうだが、おじいさんの笠こそが流通経済の要なのである。

 笠は地方のマニュファクチャーつまり地場産業から生み出された商品であり、これを都市部に運び貨幣に変え、さらにモチを購入することで流通経済が成り立つ。

 しかし、物流の近代化やスーパーマーケット、量販店の進出で地方経済は冷え切ってしまい、もはや笠ではモチが買えない時代。まさに「笠地蔵」の前篇と同じ状況に追い込まれているのである。

 ここで後編の山となる“7体の地蔵”が登場し、ヒーローとして活躍するわけだ。

【次ページ】地蔵になることの特典

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