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  • 2015/02/16

かつての右腕が語る孫 正義氏の戦略 アリババがeBayを退るために授けた助言とは

三木 雄信氏インタビュー 後編

前編に続き、元ソフトバンク社長室長の三木 雄信氏に話を伺った。今回は、同氏が孫 正義社長から学んだ教えを中心に探っていく。ソフトバンクが常に勝ち続けられる「勝利の方程式」とは何か? どのようにリーダーシップを発揮して、企業経営を成功に導けばよいのだろうか? 孫社長の右腕として活躍した人物から、示唆に富んだ非常に参考になる話が飛び出した。


逆算して計画を立てなければ、いつまでも大きな山には登れない

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ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト 代表取締役社長 兼 トライオン
代表取締役社長 三木 雄信氏

──著書の『孫正義「リスク」を「成功」に変える28のルール』ですが、ご自身が実際に経験した、孫社長からの学びが詰まっていますね。「最終目標から逆算して計画を作る」というのも、当たり前のようで難しいことです。

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『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』(PHP研究所、2014年)

 三木 雄信氏(以下、三木氏)■これは孫 正義社長からの教えですが、「人生はぐるぐる回って、いつまで経ってもゴールに辿り着かない。もしゴールに辿り着きたければ、まず登る山を決めろ」ということです。

 孫社長の場合であれば、世界一の企業を作ることが最終ゴール。そのゴールから逆算し、10年や1年単位で計画を立てているわけです。さらに月次や週次というように直近ですべきことを自分ですべて紙に書いてチェックしていました。新年の1月2日に孫社長に呼ばれ、1年の計画を立てたこともありました。巨大な計画に向け、逆算しながら細かく縮めて考えていき、それを1つずつ超えていくから大きな山に立てるのだと思います。

 直接聞いた話ではありませんが、孫社長はADSL事業を始めるときから、逆算して携帯電話分野に進もうと絶対に考えていたと思います。これは「わらしべ長者」のような話で、ADSL事業で500万ユーザーを抱え、日本テレコムを買収し、お得ラインで固定電話とのシナジーを強調したわけです。IP電話との親和性が高いこともアピールしました。株価も上昇し、お金も付いてきた。やがてユーザーが1000万人を超え、多くの技術者を擁するしっかりした企業になり、ボーダーフォンを買収しても大丈夫という話になった。総務省も認可してくれた。そういう意味でいうと、ADSL事業はわらしべ長者の藁ぐらいの段階。やはり事業が上手く行ったのも、将来登る山の見通しがあったからでしょう。

──なるほど、トップは最終目標を設定する必要があるのですね。ではその目標を決めるための先見性は、どうやって身に着ければよいのでしょうか?

 三木氏■先見性を身に着けるのは、誰でも難しいことだと思います。ただし、大きな方向性ならば多くの人が分かるのではないでしょうか。たとえば、ITは伸びるということはだいたい分かる。とはいえ、どの事業が当たるかどうかは、やはり運次第のところもあります。本当はソフトバンクも数多くの事業で失敗しています。ITバブルのころに出資した会社で上場まで辿り着いたのは、ガンホーやCarviewなど数社しかありません。それでも当たれば元が取れた。

 ですから個々の事業については、どんな経営者でも絶対にこれで行ける! という確信はないと思います。しかし大きな方向が分かれば、エスカレーターに乗っているように、その業界の大きな流れには乗れます。経営者の役目は、まず上りのエスカレーターを探すことだと思います。

 なぜ孫社長が勝てるのかというと、まず当たりが入っているクジ箱を探し、そこから多くのクジを引くから(笑)。当然、手数が多ければハズレは多いですが、当たるくじの本数も多くなります。

──孫社長は、大きな流れをどうやって読んでいるのでしょうか?

 三木氏■孫社長は、それをムーアの法則で見ていましたね。ご存知の通り、ムーアの法則はICの集積度が1.5年で倍になるというものですが、それに基づくとPCの小型化とともに、通信速度も速くなってきます。やがてテレパシーのような働きをする究極的な携帯ができると予言していました。

 雑駁にいえば、ハードはどんどんパーソナルサイズになり、すべて高速な無線でつながるようになる。だから孫社長は最初から無線アクセスのネットサービスをやりたがっていました。しかしスピードネット(注1)は時期が早すぎた。そこで、とりあえずADSL事業に参入し、その後ようやく時代も追い付いて、携帯事業に参入できるようなりました。

【注1】 かつて東京電力が運営していたインターネット接続サービス。当時インターネットへ接続するには、電話回線による従量制のダイヤルアップ接続しか手段がなかった。そこで、東京電力、ソフトバンク、マイクロソフトの3社が1999年に合弁会社を設立。インターネットから電柱上の基地局までを東京電力の光ファイバーで接続し、そこから加入者宅まで2.4GHzの無線で接続する方式を考えついた。無線アクセスについては、ラストワンマイルの定額ブロードバンドインターネット接続サービスとして一世を風靡した。

──孫社長の先見性ということで、近年よく取り上げられるのが、上場を果たしたアリババの件ですね。

 三木氏■あれは孫社長の指導が良かったと思います。当時、オークションといえばeBayが世界のスタンダード。ただし日本と中国だけeBayは成功しませんでした。日本はヤフオク、中国は阿里巴巴(アリババ)の子会社の淘宝網(タオバオ)が中心。孫社長は、「eBayが撤退するまでヤフオクの出品を無料にしろ!」と言い続けていたからです。それでeBayを日本から追い出せた。孫社長はアリババの創業者ジャック・マー氏にも同じことを言いました。タイムマシン的にいうと、日本で成功したパターンを踏襲して、中国でもeBayを撃退したわけです。

【次ページ】 企業を死なせない撤退基準と、社員を元気するトップの責任の取り方

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