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  • 2015/02/05 掲載

おとぎ話が生み出す“宝の山”を探せ:人を動かす極意

むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意

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立春の風物詩と言えば何といっても節分の豆まきだろう。 豆まきの風習は邪気を追い払う為に、執り行われている行事で宇多天皇(西暦887-897)の時代の故事伝説が始まりと言われる。 伝記では鞍馬山(京都)から来た鬼に都を荒されたことに苦慮したことから、これを祈祷で封じ、三石三升の炒り豆(大豆)で鬼の目を打ちつぶし、災厄を逃れたとされている。 つまり豆を使うようになったのは、鬼の目に投げつけて「魔目(まめ)」、そして鬼を滅する「魔滅」となる語呂合わせ。これ以降、鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うイベントが始まったとされる。 実はこの豆は“桃”だったという説もある。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

 古事記に登場する伊邪那岐命(イザナギ・神武天皇の7代先祖)の時代は邪気を払う為に桃を投げていたとされている。

 これは中国の思想で「桃は邪気を圧伏し、百鬼を制す」といものがあり、こちらも語呂合わせで「桃=百(もも)」と「仙木(桃の木のこと)=仙人が住む桃源郷」をミックスしたことに起因する。

 桃と鬼?

 これから連想されるのは日本のおとぎ話「桃太郎」だろう。ご存じのように桃から生まれた主人公の桃太郎が、お婆さんに作ったもらった黍団子(きびだんご)を携え、これを犬、猿、キジに与え、共に鬼ヶ島に鬼退治に行くというストーリー。

 原話には諸説あるが、有力な説としては第7代孝霊天皇の第3皇子彦五十狭芹彦命(ひこいさせりひこのみこと=吉備津彦命)と稚武彦命兄弟の吉備国平定における武勇伝と岡山県(吉備国)の温羅伝説(吉備地方に伝わる古代の鬼)がモデルだとされている。

 しかし、これに異を唱える自治体も多く、近年は全国で桃太郎サミットや日本桃太郎会連合会などが開催され、熱い議論が交わされている。 では、なぜ岡山県が桃太郎のゆかりの地となり得たのか。

 これは岡山県が桃太郎作中の「黍(きび)団子」と同音の江戸時代の地元土産品「吉備団子」を結び付けるなど、全県を挙げて宣伝活動を行うことで全国的に有名になったからに他ならない。

岡山県の桃太郎戦略

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 県を挙げての桃太郎PRの効果は絶大で、黍団子の老舗で創業150年の廣榮堂によると、昭和47年の山陽新幹線新大阪~岡山間が開通により、年間売り上げが220%、瞬間伸び率600%を記録したのだという。

 国産ジーンズ発祥の岡山・児島を全世界にPRしたいと創業した桃太郎ジーンズは年々業績を伸ばし、フランスのテレビ番組で紹介されるや否や売り上げが倍増した。

 昨年は、「岡山市は桃太郎市に改名します」と市長が出演するPR動画をアップしたところ、総再生回数は80万件を超え、費用対効果で見ると製作費2,500万円に対し、メディア露出効果は4億6,500万円と試算。閉鎖予定だったサイトの延長も決まった。

 「伝説の岡山市」がキャッチフレーズのPR戦略だが、桃太郎戦略が見事に功を奏したようだ。

 他にも地元の学校に桃太郎小学校とネーミング。桃太郎アリーナや桃太郎大通りなど、岡山県民にとっては日常に溶け込んだ存在となっている。 さらに、名産であるブドウを「桃太郎ブドウ」と命名。果物大国の岡山では桃も名産の一つなのだが、ブドウにも「桃太郎」付けてしまうあたりはさすがだと言うほかない。

 桃太郎戦略は瀬戸内海を挟んだ隣県の香川県にも及ぶ。

 香川県は「うどん県」のPRで一世を風靡した経緯があるが、1914年(大正3年)にはすでに同県の女木島の愛称を鬼ヶ島と命名し、観光戦略を展開している。

 同島にある鬼ヶ島大洞窟の中には「鬼の大将」なるモニュメントが鎮座。近年では瀬戸内国際芸術祭が開催され、国内外から多くの観光客が押し寄せた。

 鬼ヶ島観光協会のホームページによると「香川県の桃太郎は、吉備津彦命(きびつひこのみこと)の弟「稚武彦命(わかたけひこのみこと)」がモデルで、吉備の国から讃岐の国に来た時、土地の住民が鬼(海賊)の出没で苦しんでいるのを知り、イヌ・サル・キジを率いて鬼を征伐しました。イヌは備前の犬島(岡山県)、サルは陶の猿王(綾南町)、キジは雉ヶ谷(鬼無町)に住む勇士だったと言われています」とある。

 つまり、桃太郎は岡山県ではなく、香川県で活躍したとされているのだ。しかも犬(稚武彦命に同行した勇士)だけが岡山県出身だと主張している。

【次ページ】第二の桃太郎を探せ

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