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  • 2015/05/20

MRJ(三菱リージョナルジェット)には、グローバル市場攻略のヒントが隠されている

日本のものづくりの強みは技術力にあるのだ、という認識はあたかも定説のように広まっている。たとえば、iPhoneなどの世界的ヒット商品にしても日本製の部品が数多く採用されていて、日本の技術は今も世界最高の水準にあるという。だが、それで果たしてビジネスに勝てるのか。50年ぶりの国産小型旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」が今秋にも離陸する見込みだが、MRJには日本のものづくり復活のヒントがありそうだ。

ハイテクアナリスト 杉山勝彦

ハイテクアナリスト 杉山勝彦

東京都生まれ。企業信用調査、市場調査を経験した後、証券アナリストに転身。以降ハイテクアナリストとして外資系、国内系証券会社を経験し、ほぼ製造業全般をカバー。この間、96年に株式会社武蔵情報開発を設立して中小企業支援の道に入り、長野県テクノ財団主宰の金属加工技術研究会の座長を務める。現在は証券アナリストとして取材、講演活動に従事する傍ら、80年代前半のNY駐在時代に嫌というほど飛行機に乗った経験から研究を始めた航空機産業に対する知識を生かし、中小企業支援NPO法人「大田ビジネス創造協議会(OBK)」をベースに、航空機部品を製造する中小企業の育成に取り組んでいる。

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日本の技術の粋がつまった国産旅客機、
MRJ(三菱リージョナルジェット)

ものづくり復活のヒントは、MRJにあり

 筆者は、昨年10月に完成機体をお披露目し、今年初飛行を予定している三菱リージョナルジェット(以下、MRJ)が日本のものづくり復活の鍵になると考えている。

 ただし、MRJをどんどん売れば景気がよくなるとか、航空機産業こそが日本の製造業を支えるといいたいわけではない。

 確かにMRJはライバル機に比べて圧倒的な燃費性能を誇り、なおかつ居住性にも優れた、素晴らしい機体である。順調に飛行試験が進んでいけば、世界的なベストセラー機になっても何の不思議もない。それでも、MRJ1機種による年間の売上高はせいぜい2500億円程度と見込まれる。2022年の航空機市場規模予測が2・4兆円なので、その1割というのはもちろん大きな金額ではあるが、60兆円の自動車産業に比べたら大したことはない。

 しかし、それでも筆者がMRJを鍵だと考える理由は、2つある。

 1つは、MRJのような航空機の製造には「日本の強みが集約されていること」。もう1つは、「グローバル市場を攻略するためのヒントが隠されていること」である。

 この2つのポイントは、航空機産業のみならず、他産業へも応用が可能なはずだ。

なぜ日本のものづくりは衰退したのか

 日本のものづくりが危機的な状況にあるということは、すでに多くのメディアが指摘していることである。

 中でもエレクトロニクス産業の業況は深刻だ。最大の理由は、デジタル化にうまく適応できなかったことにある。

 家電の世界では、部品はすべてモジュール化され、どの企業でも簡単に同じモノをつくれるようになってしまった。電子機器の受託生産を行う台湾などのEMS(Electronics Manufacturing Service)が登場したことで、ハードウェアを製造する敷居はかつてなく低くなっている。パソコンはその際たるモノで、少し知識がある人ならば部品を集めるだけでそこそこの性能を持ったデスクトップパソコンを20分ほどで完成してしまう。これまで積み重ねてきた製造技術の蓄積がまったく使い物にならなくなってしまったのである。

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 同じエレクトロニクス産業でも、半導体の場合は少し事情が異なるが、製造技術が陳腐化してしまった点では共通している。

 半導体製造においては、ステッパーなどさまざまな製造装置を駆使して量産が行われる。ステッパーというのは、シリコンウェハーに回路パターンを投影して露光する、半導体製造のキモともいえる装置だ。

 半導体製造のノウハウは、こうした製造装置にすべて移植されており、製造装置さえ購入すれば同じ性能の半導体をつくることは極めて容易である。半導体産業は、こうした製造技術をうまく囲い込むことができず、新興国のキャッチアップを簡単に許してしまった。

【次ページ】 かつて日本も新興国だったとき

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