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  • 2015/10/23 掲載

小林製薬の商品名はなぜダジャレなのか? 有名企業のヒットネーミング発想法

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商品やサービスを作るにあたって、さまざまな企業が工夫しているのがそのネーミングだ。日本最古の物語「竹取物語」は、洒落(ダジャレ)がふんだんに盛り込まれた作品として知られ、平安時代から永く語り継がれるロングセラーになっている。現代でも、小林製薬やサカタのタネをはじめとして、ダジャレから商品のネーミングが付けられているのはご存知の通りだ。
執筆:中森 勇人
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日本最古の物語「竹取物語」からビジネスのヒントを得る

 秋の夜長、月あかりを浴びながら読書なんて方も多いのではないだろうか。そんな人におすすめなのが、日本最古の物語、で物語の祖として文学的な価値が高い竹取物語だ。

 成立は平安時代初期の10世紀半ばとされており、万葉集の中にも「竹取の翁」が天女(かぐや姫)を読んだ長歌が掲載されているという。物語に登場する貴族や帝が、かぐや姫と恋に落ちるというロマンスや月の使いとの攻防戦もあり、現代でも十分読み応えのある作品として仕上がっている。

 ビジネス的な視点から見て、竹取物語で注目すべきは「求婚難題説話(=難題婚)」だろう。かぐや姫が5人の求婚者へ難題を出すも、いずれも失敗するという逸話だ。実はこの山場ともいえる「難題婚」にビジネスのヒントが隠されているのである。

 物語の中では5人の貴公子がかぐや姫の争奪戦を繰り広げる。実はこの5人の登場人物が時空を飛び越え、現代でも生き延びるあの言葉の語源となっていることはあまり知られていない。

 ここで5人の貴公子がかぐや姫から課せられた難題とその顛末をおさらいし、如何にして語源となったのかを紹介しよう。

 かぐや姫はそれぞれの貴公子たちに「仏の御石の鉢(釈迦が使っていた光り輝く器)」、「蓬莱の玉の枝(仙人が使う金銀真珠でできた木の枝)」、「火鼠の裘(かそのかわごろも=燃えない布)」、「龍の首の珠(伝説の生き物なので存在するはずがない)」、「燕の産んだ子安貝(そもそも燕は貝を産まない)」を持ってくるように言う。

 石作皇子(いしづくりのみこ)はその辺に転がっている普通の鉢を持っていき嘘がバレるも姫に言い寄り、その面目の無い行為から「恥(鉢)を捨てる)」の言葉を生み出した。

 車持皇子(くらもちのみこ)は玉の枝の偽物を作るも見破られ、恥ずかしさのあまり長年姿を隠したことから、会う機会の少ないさまを、玉のために隔離された「玉離る(たまさかる)」もしくは魂が離れた「魂離る→たまさか→偶さか」と言うようになった。

 阿倍御主人(あべのみうし)は唐の商人から火鼠の皮衣を購入したが、かぐや姫が焼いてみると燃えたので贋作と判明。彼女の命令をやりきれなかったことから、阿倍の名を取り「あへ(阿倍)なし→敢え無く」と言うようになった。

 大伴御行(おおとものみゆき)は船を仕立てて探すも嵐に遭遇。また、重病にかかり両目が李(すもも)のようになり、世間の人々から「龍の珠を取りに行って目に李のような珠をお付けになって帰ってきた」と揶揄し、理に合わないことと李を掛けて「ああ食べがたい→ああ堪え難い」と言うようになった。

 石上麻呂(いそのかみのまろ)は大炊寮(宮中の供え物や宴席の料理を作る所)に燕が大量に巣を作ることを聞きつけ足場を組んで監視した。そこで子安貝らしきものを掴んだが敢え無く転落して腰を強打。追い打ちをかけるように掴んだのは燕のフンであり貝ではなかったことから、期待外れのことを「貝なし→甲斐がない」と言うようになった。

 話はここで終わらない、病床に伏せる中納言(石上)をかぐや姫は「まつかひもない(待つけど貝がまだ届かない)」と歌で見舞ったが、これに「かひはかくありける」と返歌を書き息絶えた。 失敗しても誰一人として気の毒に思わなかった姫が中納言にだけ感情を表したことから、小さなリターンに対して「かひあり→甲斐がある」と言うようになったのだという。

 このようにして「恥を捨てる」「たまさか」「敢え無く」「耐え難い」「甲斐が無い(甲斐がある)」の5つの言葉が生まれたとされ、竹取物語はこれらの洒落(=オチネタ)で人気を博すようになった。

洒落ネーミングでロングセラー連発

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暑い時や熱を冷ますときに用いる冷却ジェルシート「熱さまシート」
 竹取物語は言葉遊びや洒落の発祥でもあったからこそ、平安時代から永く語り継がれるロングセラーになったというのが著者の見解である。この洒落から言葉を作るという手法、ビジネスの世界では商品のネーミングとして広く使われているのはご存知の通りだ。

 小林製薬のアンメルツは「アンチ(否定)+メルツ(ドイツ語で痛みのこと)」からきており、他にも暑い時や熱を冷ますときに用いる「熱さまシート」や喉の殺菌消毒時に使う「のどぬ~る」などユニークなネーミングが目白押しだ。

 以前、筆者が講演で話した「小林製薬流ネーミングの極意」から引用すると「覚えやすくリズム感があり、1秒でわかる」のが第一で、ひとつの商品名を決めるのに多い時には100個以上のネームを検討。そして、最終的に名前を決定するのは社長自らなのだという。

 同社では社員からの提案を奨励する制度もあり、200ポイントたまるとホテルの豪華ディナーがもらえるとも聞いた。この洒落ネーミングにかける情熱こそがロングセラーを生み出すと言っても過言ではない。

【次ページ】サントリー、伊藤園のネーミング変更例

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