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2016年12月06日

日の丸家電敗北の理由「部品の種類1.5倍」を防ぐモジュラーデザインシステムの作り方

前回は、製品仕様にモジュール数を適用してモジュール化するとともに「(モジュール部品を)探すより(新図を)描くほうが早い」問題を解決するための設計の自動化を実現して設計を大幅に効率化した事例をいくつか紹介しました。今回は、モジュール数の具体的な適用方法と設計の自動化・開発の自動化を実現する方法を紹介します。日本企業は海外の先進企業に比べて設計開発プロセスの効率化が非常に遅れています。ぜひ皆さんも挑戦してください。

執筆:モノづくり経営研究所イマジン所長 日野 三十四

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設計開発プロセスの効率化を考えなければ世界に勝てない

モジュール数の適用によるモジュール化

 部品の標準化/モジュール化というと、部品ごと標準化/モジュール化しようと考えがちですが、そういうアプローチでは製品の中の限られた部品だけが対象になり、ほかの多くの部品は設計の都度新設になって全体として大きな効果を得られません。部品は部品諸元の集合体だから、すべての部品の諸元を標準化/モジュール化するというアプローチが必要です。部品諸元のすべてを標準化すれば部品ごと標準化したことになります。

 製造工程は部品諸元のひとつひとつに対応して造られるので、部品諸元を標準化すれば対応する型具構造部品、加工機械、組み立て機械などの製造設備の種類削減/共用化に効果が表れます。

 また、部品諸元は製品諸元を分解したものなので、製品諸元を標準化することが部品標準化に有効です(以下、部品を含めて製品と言う)。

 JISは、図1に示す3つの数値表を規格として制定しています。JISの親のISOにもこれらはあります。筆者はこれらを総称して「モジュール数値表」「モジュール数」と呼んでいます。ISO/JISは、製品の諸元値を自由に決めると製品も自由に生まれるので、諸元値は図1のモジュール数値表にある限定された数値の中から選択して適用することを推奨しています。それぞれの規格は日本規格協会から入手してください。

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図1 モジュール数値表


 モジュール数は10のn乗を掛けて使うものなので、10倍、100倍・・・してもいいし、1/10、1/100・・・にしてもよいです。等比数列はドンピシャ同じではなく、近似した数値を適用すればよいのです。モジュール数値表は図2に従って製品諸元に適用します。

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図2 モジュール数値表の製品諸元への適用法


 どこかの突起のように独立的に存在する寸法を「独立寸法」、レンガや畳のように個別の寸法の組み合わせで全体の寸法が決まる寸法を「組合せ寸法」と呼びます。

 「建築モジュール数」は歴史的に建築物に多く用いられてきたのでそのように呼ばれますが、一般の機械製品でも組み合わせ寸法は多く存在するので、そういう部位には等差数列の建築モジュール数を適用します。ISO/JISを制定する世界の知識人が、等比数列を該当する製品諸元に適用すると品揃え効率(=顧客獲得数÷品揃え数)が最大になり、等差数列を適用すると部品と部品の互換性が最大になると考えたのです。

 図3は、2005年に薄型テレビ各社が販売していたテレビの画面サイズです。画面サイズは独立寸法なので標準数を適用すべき部位であり、左端に標準数を置きました(R40とR80数列は細かすぎるので省略)。

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図3 薄型テレビ各社の画面サイズ(2005年当時に調査)


 サムスン電子はプラズマテレビの画面サイズに標準数のR10数列から数値を選んで10倍して適用していることがわかります。なぜ63インチという中途半端な画面サイズあるのかというと、R10数列に6.3があるので10倍して適用したからです。液晶テレビは、品揃えが完了していない画面がありますがほぼR20数列を適用していました。これが「最少の品揃えで最大の顧客を獲得する製品展開」(品揃え効率の最大化)です。

モジュール化で競争優位を実現する

 一方、日本の各社は何を根拠に画面サイズを決めたのかわかりません。おそらく競合他社の画面サイズを見ながら「1インチでも大きく」という考えで決めたのでしょう。こういう発想の製品戦略は戦略でもなんでもなく、限りなく製品種類が生まれて固定費の重圧にあえぐことになります。

 ソニーはR20数列を適用していますが、当時ソニーはサムスン電子から液晶表示装置を調達していたので、結果的にサムスンの画面サイズになっただけです。シャープは小さな画面サイズは疎で展開し、大きな画面サイズは密に展開しているので、これは「最大の品揃えをして最少の顧客を獲得する製品展開」(品揃え効率の最小化)です。

 標準数を知っているかいないかはテレビを構成しているすべての部品の諸元に標準数を適用しているかいないかの違いになり、部品種類の差となって現れます。筆者の調査では、日本各社の製品当りの部品種類数はサムスン電子の1.5倍多かったです。これでは負けるのは当然です。

 サムスン電子は、かつては図面すらまともに描けない会社だったのに20世紀末に日本人技師を多数採用して図面ぐらいはまともに描けるようになりました。その後「日本からはもはや学ぶべきものは何もない」といって、欧米から科学的設計開発法を積極的に導入しました。日本の電機メーカーは、日本の強みといわれる“擦り合わせ設計”(個別最適設計)に嵌り込んで典型的なモジュラー型製品の電気製品を擦り合わせで設計していたことが、サムスン電子1社に総なめにされた技術的原因です。

 アップル社のiPhoneは、2007年の初代から2011年の「iPhone 4S」まで画面サイズを3.5型に固定化していましたが、多様化を求める消費者の声に応えるために2012年の「iPhone 5」で4型にしました。しかし横の寸法は変えておらず、縦に伸ばしただけでした。そしてそれまで年100%程度の増加率で推移していたiPhoneの販売は10-30%の増加率に停滞しました。画面サイズを拡大するときは消費者心理を考えて、横も縦も等比数列で相似形で変更するべきなのです。横の寸法を変えないで縦に延ばすだけならiPhone 4Sの生産設備の大幅な流用が可能になるでしょうが、消費者の落胆のほうが大きかったのです。画面サイズを相似形で変更することでもまだ生産設備の変更は容易です。スティーブ・ジョブズが2011年に死去した後、顧客の心理と設計法に通じていない生産畑出身のティム・クックがCEOに就任した結果でしょう。2014年に横も縦も拡大したiPhone6の発売でアップルは息を吹き返しました(相似形拡大ではなかったですが)。

 モジュール数は設計の基本中の基本ですが、一般の設計者はほとんど認知していません。前回紹介した天井クレーンは、モジュール数を積極的に適用することによって大きな効果を得ました。プラスチック原料混合機の最大混合能力に公比2.0の等比数列を適用して品揃え効率の最大化を実現しました。水平循環方式地下駐車装置では、トレーの縦×横と駐車室の高さに「建築のベーシックモジュール」の等差数列を適用して構造部材の互換性を高めました。

 モジュール数は、等比数列と等差数列を組み合わせて使う方法も有効です。前回紹介したデンソーのラジエータは、顧客が要求する冷却性能の全体に等比数列を適用して等比分割し、分割した範囲のラジエータのコアの高さと幅とフィンピッチに適切な等差数列を適用してラジエータのサイズ違いを超えてチューブやフィンの部品共通化を実現しました。

 モジュール数に関する以上の説明は、ISO/JISの規格や世界の『標準化便覧』などに書かれていません。つまり、世界の企業もこのモジュール化の詳細の方法をほとんど知らないといえます。モジュール化の方法を、競争優位を実現する基本戦略に位置付けて、少々理解がややこしくてもトップ自らしっかりマスターし、全社的に展開してください。

【次ページ】設計手順書/自動設計システムの作り方

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