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2017年09月08日

汎用人工知能(AGI)とは何か? 全脳アーキテクチャ・イニシアティブが目指すもの

“全脳アーキテクチャ”とは、「脳全体のアーキテクチャに学び、人間のような汎用人工知能(Artificial General Intelligence:AGI)を創る」アプローチを指す。この全脳アーキテクチャを採用したAI(人工知能)の研究開発を促進しているのが「NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(Whole Brain Architecture Initiative :WBAI)」だ。WBAIは2017年8月29日に「第2回WBAシンポジウム〜Beneficial AGIへ〜」を開催。目指す「汎用人工知能」の姿や展望について、代表の山川宏氏や立命館大学の谷口忠大教授、アラヤの金井 良太CEOらが語った。

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人間の脳に学んで汎用的な人工知能を作る

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NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表/ドワンゴ 人工知能研究所 所長 山川宏氏

 WBAIの代表を務めるドワンゴ 人工知能研究所 所長の山川宏氏は、「汎用性を実現するために脳から学ぶべきこと」と題して講演した。山川氏はデータが不十分な領域においても適切な判断や解決策を見出すために必要なAI技術として、汎用的な知能と、未知の領域で知識を拡大する自律性的能力の2点を挙げた。

 「汎用性や自律性を持った知能を支える認知アーキテクチャとしては、脳を参考にすることが有望」と山川氏は言う。現在では、AIのアーキテクチャを脳に学ぶための素地が整ってきている。脳が行っている視覚情報処理や聴覚情報処理などを使ってAIのアーキテクチャを作ることが可能になっている。

 ミクロな領域では、神経科学の分野で1000個程度のニューロンを同時に測れるようになるなど、従来と比べてより大きなものが見えるようになった。マクロな領域でも、コネクトーム(神経回路の地図)のように、脳の構造を理解できるようになった。AIの一分野であるニューラルネットワークも、ここ数年でディープラーニング(深層学習)が現実的になった。

 現在で主流となっているAIは特化型のAIであり、特定の用途については突出した成果を出せる。これに対して、さまざまな用途でそこそこの成果を出せる汎用性を持ったAIとして、汎用人工知能(AGI)がある。WBAIでは、現状のAIでは実現できていない領域として、さまざまなタスクに対応できる汎用性を目指している。

獲得した知識を再利用して未知の領域に対応する

 汎用人工知能にとっての課題は、知能の適用範囲を拡大すると、学習のためのデータが少なくなってしまうことである。特化型のAIであれば、学習のための充分なデータが与えられている。一方で、汎用人工知能では、データが少ない領域への対応能力が問われる。

 山川氏によると、汎用人工知能を実現するために必要な技術は、獲得した知識を再利用して未知領域にも対応する技術となる。再利用可能な知識モジュールを作ることと、これらの知識モジュールを柔軟に組み合わせられるアーキテクチャが重要になる。こうした理由で、WBAIは全脳アーキテクチャに注力している。

 脳における知識の組み合わせは、モジュールの動的な組み合わせになると山川氏は言う。どの知識モジュール同士をどのようにつなぐかによって、脳をさまざまな用途に利用できる。汎用人工知能も同様に、知識を組み合わせて仮説を生成し、有効な解を探索する。本当の正解は分からないが、有効な可能性を探すことができる。

 「汎用性は、自律性とも関係がある」と山川氏は言う。汎用性は、自律的に世界を探索する能力の基盤となるからである。汎用人工知能を用いると、どこを探索すれば良い情報が得られるかについて、カンが働くようになる。一方、探索によって得られた知識は、汎用性を強化する。

 WBAIは、開発者が汎用人工知能の開発に容易に参入できるように、大脳新皮質のモデル化など、オープンプラットフォームの開発を進めている。2017年9月には、脳の海馬の機能に着目した「海馬ハッカソン」を開催する。DQN(Deep Q Network)のQ学習と深層学習を分離し、海馬のモデルを追加する試みである。

外的刺激だけでロボットに言語を獲得させる

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立命館大学 情報理工学部 教授 谷口忠大氏

 次に登壇した、立命館大学の谷口忠大氏は、「記号創発ロボティクスが目指すAGI〜表現学習を超えて〜」と題して講演した。谷口氏が取り組んでいる「記号創発ロボティクス」の成果を概説するとともに、汎用人工知能との関連から今後の展望を述べた。

 記号創発ロボティクスとは、教師なし学習の技術を積み重ねることによって、ロボットが言語的知能(記号的知能)を獲得できるようにすることを指す。教師データを与えなくても人間の子どもが外界の刺激だけで言語を獲得するように、自らの経験を統合することによってロボットに言語を獲得させる挑戦である。

 言語獲得のポイントとなる要素は、Representation(表層、表現)の学習である。たとえば、深層学習では、データのどの部分を特徴として着目すべきかを自動で抽出する。フランス語から英語への翻訳では、事前の文法知識など一切なく、機械翻訳ができる。内部では、ニューラルネットワークが何らかの表現を作り、これが高次元のベクトル表現となり、これをデコードすることで英語への翻訳を実現している。

 子どもは、視覚、聴覚、触覚などの5感情報や、周囲への働きかけから得られるフィードバックだけで、言語の獲得までやってしまう。ラベルを付けたデータによる教師あり学習を必要とせずに、言語を獲得する。これはどうやったら実現できるのか。このことに挑戦するのが記号創発ロボティクスであるという。

【次ページ】掃除ロボットに「キッチンを掃除して」と指示できるようにする

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