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  • 2017/09/29 掲載

Wonders!by Panasonic が世界のエンタメ「フエルサ ブルータ」に技術提供する理由

#フエルサブルータ

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現在、品川ステラボールにて、世界的に有名なアルゼンチンのパフォーマンス集団「フエルサ ブルータ」の公演が行われている。この公演に特別協賛し、さらに出資と技術協力を行っているのが、家電界のガリバーであるパナソニックだ。同社がこういった公演に深く入って支援するには初めての試みだという。パナソニック ブランドコミュニケーション本部 Wonder推進室 総括担当課長 井上敏也氏と、パナソニックシステムソリューションズ ジャパン クラウド・サービス事業センター IoTプラットフォーム部 部長 佐村智幸氏が、このプロジェクトの狙いと熱い思いを語った。
(聞き手・構成:編集部 佐藤 友理、執筆:井上猛雄、撮影:編集部 中島正頼)

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パナソニックがフエルサ ブルータに協力したその狙いは?


2年連続の赤字を受け、スタートしたWonder推進室

――まず、Wonder推進室についてお教えいただけないでしょうか?

井上氏:2011年から2012年にかけてパナソニックは2年連続で巨額の赤字を出しており、それを受けて社長の津賀が「Wonder!」という言葉をキーワードに組織を活性化させ、新しい活動を支援する戦略を打ち出したことがWonder推進室の始まりです。

 もともと「Wonders! by Panasonic」とは、2013年に会社の変革をけん引するキャンペーンワードとして制定されたものです。

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パナソニック ブランドコミュニケーション本部
Wonder推進室 総括担当課長
井上敏也氏

 Wonders!には明確な定義はありませんが、「お客さまに感動や驚きをお届けする新しい価値」であり、「Wonders! by Panasonic」というように、Wonderを複数形にしているのも、そういう製品やサービスをどんどん生み出したいという気持ちの表れです。

 我々は、もともと信頼性や安心・安全という価値は持っていたのですが、「先進的」「独創的」というイメージが世間的には薄いようでした。そこでショック療法というか、世の中に、そして社員に対してWonderな価値創出にチャレンジする! という意志を表明し、具体的なアクションを支援することで会社を元気にする仕掛けとしてWonders!をやっています。

 たとえば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、我々は「Wonder Japan Solutions」という展示会を開催し、多くの部署と共に新しい提案活動を続けています。そのような中で、もちろんサイネージやスタジアムの提案なども行っており、今回の公演で提案している空間演出の考え方もその一環なのです。

「ベンダー」から「パートナー」へ

――今回出資、技術協力、協賛したフエルサ ブルータとは、どういった人たちなのでしょうか?

井上氏:フエルサ ブルータは、世界30ヵ国で累計500万人を動員している新感覚のライブエンターテインメントです。

 基本的に観客には座席などの定位置がなく、スタンディングでパフォーマンスを楽みます。音楽に合わせて踊ってもいいですし、パフォーマンスをもっと近くで見たかったら移動してもかまいません。



 言葉ではうまく表現できませんが、高い身体能力を持った演者が、重力に逆らって宙を舞ったり、巨大なプールが天井から下りてきたりと、斬新なパフォーマンスが観客の目前で繰り広げられます。照明と映像と音楽とパフォーマンスによって、五感を刺激するイノベーティブな演出が繰り広げられる総合芸術です。

――観客も舞台の一部として、演者と共にパフォーマンスに参加するような感覚がありました。今回、御社はこの公演にどのように関わっているのでしょうか。

井上氏:当社は冠スポンサーとして特別協賛しており、30代ぐらいの若年層に対するアピールの強化を目的にしています。ただし、それだけでなく、この興行に出資をしています。主催者として製作委員会のメンバーになることで、ロビーとエントランスの演出を担当し、我々のサイネージソリューションを活用して興業を共に盛り上げるべく、運営にも関わっているのです。

 今回の試みに関していうと、我々はどちらかというと、B2CよりB2Bに注力しています。興業に協賛しているためB2Cのアプローチに見えますが、この公演にさまざまな業界のお客さまをお招きし、我々の空間演出をご体験いただくのは、展示会やショウルームといった意味合いに近い、B2Bのアプローチだと言えます。

 我々は「ベンダーからパートナーになる」ことを目指しています。なぜなら、「プロダクトを売って終わり」の「ベンダー」では、ただスペックと値段だけで勝負するだけになってしまい、本当の意味で他社との差別化ができないからです。お客さまの「パートナー」として、納入先の経営課題や業務課題を理解しつつ、継続的に改善提案を出せるソリューションを提供することで、我々は新たな価値を生み出そうとしています。

 そのような視点を獲得するには、ただスポンサーの枠に収まっているのではなく、今回のように製作委員会の中に自ら入って、一緒に公演をつくりださなければなりません。エンタメ空間を運営している企業が何を課題とし、どんなことを考えているのか? という点を知る必要があるのです。そこから我々が提供できる技術も見えますし、ノウハウも蓄積され、別業界にソリューションとして提案できると考えています。

採用されたパナソニックの技術

――今回、特に注目されるのが技術協力の部分です。具体的にどんな製品やテクノロジーが使用されているのでしょうか?

佐村氏:我々が手掛けたロビーやエントランスですが、まず入口に55インチ液晶ディスプレイモニターを8台組み合わせた大画面サイネージが設置されています。ここで公演情報など、さまざまな情報を届けています。

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入口に設置されている55インチ液晶ディスプレイモニターを8台組み合わせた大画面サイネージ。公演情報など、さまざまな情報を届けている。

 会場内へ続くゲートには、34台の液晶モニターで構成される巨大な映像の門がそびえ、床にある125台の50センチ角LEDボードと共に立体映像の空間を創出しています。

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会場内へと続くゲート。巨大な映像の門がそびえる。床面は角LEDボード、その他は液晶モニターを使って立体的な映像空間を創出。
(画像提供:パナソニック)


 またドリンクやグッズを販売するロビー空間には、6台の高輝度レーザープロジェクターと、13台の55インチ液晶モニターによって、空間全体が連動する映像表現が展開されます。もちろんロビー全体を協賛社の広告にすることも可能です。

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ドリンクやグッズを販売するロビー空間には、6台の高輝度レーザープロジェクターと、13台の55インチ液晶モニターによって、空間全体が連動する映像表現が展開される。
(画像提供:パナソニック)


 また売り場には、全方位ネットワークカメラが設置され、周囲のお客さまの滞留状況に合わせて、公演グッズや公演情報をタイミングよく表示することで、販売に貢献しています。

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物販スペース。全方位ネットワークカメラで周囲の滞留状況を把握し、グッズなどの情報を表示することで販促につなげる。

 このほか1階のフロアにはスモークがたかれ、高輝度レーザープロジェクターから映像を投影することで、あたかも人がホールに吸い込まれていくような効果を演出したり、2階のVIPラウンジでは、11台の照明型プロジェクター「Space Player」によって西陣織に映像を投影し、日本の伝統と技術を融合した独自の世界観をつくりあげました。このSpace Playerは、ライトとプロジェクターの機能を持つ小型装置です。

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VIPラウンジに設置されたSpace Player。西陣織に映像を投影し、日本の伝統と技術を融合した独自の世界観を表現。

 一方、舞台では、高輝度プロジェクターを計9台使用し、特殊効果を立体的に演出するソリューションを提供しています。これらについては、プロジェクター設置の監修など、技術的なサポートが中心です。エントランスやロビーの機材やコンテンツ、配信を含めて、我々のソリューションブランドである「AcroSign」によって提供されています。

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パナソニックのデジタルサイネージの新ソリューションブランド「AcroSign」。コンテンツ・配信システム・映像デバイスを提供。

――このような演出が実現できるようになってきた背景は何ですか?

佐村氏:最近ではディスプレイやLEDやプロジェクターなどの技術革新が進みました。たとえば、プロジェクターが単焦点で投影できるようになり、それまで屋外でしかできなかったプリジェクションマッピングが部屋のような狭い空間でもできるようになりました。さらにVRやARなどの映像技術の進化によって、インタラクティブ性も得られ、新しい形で空間全体を演出できるようになりました。

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パナソニックシステムソリューションズ ジャパン
クラウド・サービス事業センター IoTプラットフォーム部 部長
佐村智幸氏

 我々は、これを「空間サイネージ」と呼んでいます。簡単にいうとデジタルサイネージとプロジェクションマッピングが融合したようなテクノロジーです。そのような技術が登場し、お客さまのご要望も単に機器・システムから入るのではなく、「こういうコンセプトで訴求したいので、そのためには何が必要なのか?」という切り口に変わってきました。

【次ページ】フエルサ ブルータはB2B向けの商用的映像ビジネスへの第一歩

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