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  • 2017/09/27 掲載

ジャストシステム大復活のワケ、背景にあったのは「人への還元」(2/2)

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持てる技術に横串を通す「技術内閣」制度

 ジャストシステムは、日本におけるソフトウェア企業の老舗として、創業以来38年が経過し、技術陣の層が厚く、幅広いのが強みだ。

 社内にある技術が個々の「タコつぼ」に陥らずに「横串が通った」開発が行えるよう一役買っているユニークな社内制度がある。「技術内閣(テックキャビネット/Tech CABINET)」だ。

 8名の大臣で“組閣”したのは2015年12月。技術分野ごとに「データベース大臣」「サーバーシステム大臣」「インフラ大臣」「セキュリティ大臣」「グロースハック大臣」「AI大臣」「Webフロントエンド大臣」「開発環境大臣」が任命されている。大臣は「技術課題の解決」「実力の向上」「社内の情報共有」「採用支援活動」「人材戦略」という5つの役割に責任を負っている。

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ジャストシステムの「技術内閣(Tech CABINET)」制度

 各大臣は2週間に1度“閣議”を開いているという。リーダー役の“総理大臣”はいないが、“閣僚”同士で情報を共有し、分野の枠を超えて何をすべきか話しあう。その結果は大臣以下、技術陣全員が共有する。それなら、縦割り組織の弊害でお互いに何をやっているかわからなかったり、縄張り主義に陥ったりすることはなくなる。

 大臣だけでなく、中堅や若手も“組閣”に先立って合同ワーキンググループを結成して勉強会を開く。そこからボトムアップで“閣議”にかけられる提案もあるという。

 ジャストシステムでは「自然言語処理」技術の研究を進めているが、今後、大学や研究機関とも連携しながらAI、データベース検索、セキュリティ、日本語処理などの技術分野とコラボレーションし、成果を出していく上で、この「技術内閣」制度で培われた横の連携が威力を発揮するかもしれない。

 「ATOK」の日本語処理で培った技術は、訪日外国人が急増しそうな2020年の東京五輪を控え、日本語への通訳、翻訳のアシストや、外国人向け日本語学習支援などで有望だろう。

利益は配当よりも従業員に手厚く還元

 ジャストシステムが今まで株式市場で冷遇されてきた理由の一つに「配当性向の悪さ」がある。東証1部上場企業のほとんどは20~50%のレンジに入るが、ジャストシステムは9.1%しかない(2017年3月期)。1株あたり当期純利益(EPS)は66.29円でも、年間配当は6円だけだった。4期連続最終赤字から立ち直ってもしばらく無配だったという事情を考慮しても、少ない。

 今期の配当見通しも6円で据え置き。しかし、第1四半期決算の四半期純利益が22.6%増だったので、「さすがに今期は増配するだろう」という投資家の思惑も、決算発表後の株価上昇の一因として、あると思われる。

 では、稼いだ利益を株主ではなく何に還元しているのかというと「新規のプロジェクト」やそれを支える「社員たち」である。日本経済新聞が調査した2017年夏のボーナスの支給額ランキングでは、ジャストシステムの従業員平均の税込み支給額は136万円で、堂々の第4位だった。

2017年夏のボーナス支給額ランキング
順位社名支給額配当性向
1東京エレクトロン173万円50.1%
2積水ハウス170万円36.5%
3ディスコ169万円55.3%
4ジャストシステム136万円9.1%
5セリア134万円14.4%
6ソニー131万円34.4%
7大和ハウス工業126万円30.2%
8大塚商会126万円42.6%
9エーディーワークス125万円21.9%
10アサヒビール123万円27.7%
※日本経済新聞社調べ 6月30日時点
※配当性向は前期実績
※アサヒビールの配当性向はアサヒGHD
※税込み/千円以下の単位切り捨て

 夏のボーナス支給額と前期の配当性向を見比べると、ジャストシステムが従業員に手厚く利益を還元する方向性がみてとれる。

 社員の待遇は「カネがすべて」とは言い切れないが、何よりも「人が財産」の研究開発型のIT企業にとっては、参考になりそうな話かもしれない。

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