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  • 2017/11/22 掲載

ソフトバンク「ロボット革命」の本気度は? 「SoftBank Robot World」展示レポート

ボストン・ダイナミクスやBrain、進化したPepperなど

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11月21日と22日の両日、ベルサール汐留にて「SoftBank Robot World 2017」が開催中だ。本イベントは、前回まで「Pepper World」として催されていたものだが、今回よりPepperのみならず、新たなロボットが数多く加わり、さらにパワーアップしたイベントとなった。またロボットの展示のみならず、基調講演やセミナーも行われ、ロボット革命にかけるソフトバンクの並々ならぬ熱い思いが伝わってきた。ここでは展示会の内容を中心に紹介していこう。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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話題性のあるロボットが目白押しで、大盛況の「SoftBank Robot World 2017」。セミナーもその多くが満員だった

ボストン・ダイナミクスの「Atlas」や「Spot」が初見参!

 「SoftBank Robot World 2017」の展示会場は地下1階にあるが、会場に入ると最初に目に飛び込んでくるのが、今回の大きな目玉となるロボットだ。ソフトバンクがこの6月に買収したボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)の代表的なロボットである。同社は「BigDog」や「Handle」などの先進的なロボットを開発している企業として知られている。入口に展示されていたのは、ヒューマノイド型ロボット「Atlas」と4脚歩行型ロボット「Spot」の2体だ。

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ボストン・ダイナミクスの代表的なロボット2体が展示会場の入口でお出迎え。話題性が非常に高く、人気展示の1つだった

 最新のAtlasは、先ごろ驚異のバク宙を決め、その高い技術とロボットの可能性を世に知らしめた。今回は静態展示のみで実際に動くことはなかったのが、やはり本物を間近に見られることもあって、かなりの人だかりができていた。関係者によると、ロボットのバッテリーの到着が間に合わず、展示のみになったとのことだ。



 また「Spot」も、どっしりと鎮座していた。このロボットの特徴は、油圧で駆動することだろう。一般的に油圧駆動の場合は、制御が難しくなるが、その一方でパワーが出るというメリットもある。LIDARとステレオビジョンなどの各種センサーを組み合わせ、かなり荒れた土地や雪の中など、過酷な環境でもバランスを保ちながら、安定した移動が行える。最大可搬重量は23kgで、約45分間の連続稼働が可能だ(バッテリ満充電時)。

 なお現在、ボストン・ダイナミクスでは、Spotの後継機となるタイプで、小型かつ完全電動の「SpotMini」も開発中だ。



視覚ベースのAIモジュールを搭載した清掃ロボットのデモも実施

 もう1つ目玉といえるのが、Brain CorporationのAIモジュールを搭載した業務用清掃ロボットだ。同社は、ソフトバンクの10兆円ファンド「Softbank Vision Fund」の出資を受け、約128億円を調達した企業だ。ただしBrain自体は、ロボットを開発しているわけではなく、その頭脳にあたるAIモジュールを提供。同社の「AI as a Service」を利用すれば、一般機械が自律走行ロボットに早変わりする。

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Brain CorporationのAIモジュールを搭載した業務用清掃ロボットも目玉の1つ。視覚ベースのAIでナビゲーションでの安全性を確保した

 Brain Corporationは、視覚ベースのAIによって、特にナビゲーションにおける安全性に注力。多くの人がいる店舗などでも、複数のセンサーで予期せぬ人や障害物を避けながら、安全にロボットを移動・停止させる技術を持つ。

 会場では、この清掃ロボットのデモが行われた。まずマニュアルで走行後、ロボットがマップを作り経路を記録。その後は自律的に動いていた。日本では2018年夏に発売する予定だが、すでに米国の商業施設や空港で導入が進んでおり、国内でも清掃業界の人材不足を解消する一手になりそうだ。

 同様の移動ロボットとしては、シャープの磁気誘導方式の無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)「XFシリーズ」も目をひいた。もともと同社の工場内で活用されていたものだが、このAGVの特徴は他社よりも小型・軽量であるにも関わらず、牽引力が大きいこと。たとえば超小型タイプは外形が835×480×190㎜で、積載許容重量200㎏、牽引重量は500㎏だ。搬送ユニットにはカート型、コンベアユニット、カゴ車などのバリエーションを用意しているという。

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シャープの小型無人搬送車「XFシリーズ」。磁気誘導方式でトレースしていく。小ぶりながら、牽引力は500㎏もある

トランスフォームロボットや建設機械遠隔操縦ロボットも!

 子供も大人も喜びそうな、人型と車型相互に変形可能なロボット「J-drite Ride Quarter」(ジェイダイト)を展示していたのは、ジェイダイド・ライド有限責任事業組合だ。同組合は、ブレイブ・ロボティクス(BRAVE ROBOTICS)と三精テクノロジーズ、アスラテックの3社によって設立され、実際に本当に人が乗れる全長4mのロボット「J-deite RIDE」を現在開発しているところ。リアル・トランスフォーマーの実現も、すぐそこまで来ているようだ。

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ジェイダイド・ライド有限責任事業組合の「J-drite Ride Quarter」。実際にクルマに変形するデモも行われていた

 またアスラテックのロボット制御システム「V-Sido」を採用した、カナモト・富士建の建設機械遠隔操縦ロボット「DOAK ROBO3」も展示。こちらは汎用建機に双腕双脚ロボットを取り付けて、見通し200mの遠隔からオペレーターが無線(5.6GHz、4回線)で操縦できる。国土交通省が実施した「次世代社会インフラ用ロボット開発・導入現場実証」にも参加し、有用性も確認済だ。デモでは、実建機をベースにしたコックピット型コントローラーから、仮となる玩具の建機を操縦していた。

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カナモト・富士建の建設機械遠隔操縦ロボット「DOAK ROBO3」。汎用建機に双腕双脚ロボットを取り付けて遠隔操縦する
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デモの様子。コックピット型コントローラーから玩具の建機を操縦中。アスラテックのロボット制御システム「V-Sido」を採用

【次ページ】さらなる進化を遂げたPepper、Azureとの連携も

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