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人工知能(AI)、特に機械学習の進化により、B2B営業を支援するシステムの世界にも新しいテクノロジーの波が到来している。それがアルゴリズムを核とする「営業支援システムの第3の波」だ。現在のセールステック(営業テクノロジー/営業テック)にどう影響するのか。ガートナー リサーチのリサーチ ディレクター タッド・トラヴィス氏がAVISO、Clari、Gongといった具体的な注目ソリューションを交えながら解説した。
※本記事は「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス サミット 2018」の講演内容をもとに再構成したものです。
セールステックにも第3の波、3割がAI活用
「今、営業の領域において、過去数年で本当に面白いテクノロジーが生まれている。これらを目の当たりにすることができてうれしく思う」とトラヴィス氏はそう指摘する。
現在訪れている営業支援システムの「第3の波」。その中心にあって重要な役割を果たすのは「アルゴリズム」だ。
ただし、アルゴリズムが完全に営業担当員、営業マネジャーに置き換わるわけではない。人と人のやりとりは、将来も重要な役割を果たす。ただ、アルゴリズムの導入によって、営業プロセスにおける非効率な部分が排除されていくのは間違いない。
ガートナーでは、アルゴリズムによってどれだけのインパクトが生まれるかを見据えて、「2020年までに、全B2B企業の30%がAIを採用して、主要な営業プロセスの少なくとも1つを強化する」という予測を立てている。
セールスオートメーションのテクノロジーが出てきた当初は、スプレッドシートが使われていた。そして今から四半世紀前に、クライアント/サーバ型の技術が導入されたことによって、営業活動は一元化されたデータベースによってまとめて管理されるようになった。これが、営業テクノロジーの第1の波だといえる。
営業マネジャーがパイプラインを構築し、一つのフォーキャストを立てることができるということで、「当時は革新的なことだった」とトラヴィス氏は振り返る。
第2の波はWeb2.0の時代に生まれた、Webベースのテクノロジーだ。APIなどにより、データの集約・コーディネーションができるようになり、営業に必要な個別作業の効率化やプロセスの標準化が図られた。
ただ、「イノベーションには、それぞれに特有の制約の種が組み込まれている」とトラヴィス氏が話すとおり、第1の波・第2の波にも制約はある。その制約をなくし、より効果的・効率的な営業・販売を支援するために第3の波は生まれた。
B2B営業プロセスとテクノロジーの現状
現状では、大部分の企業はまだ第1の波、または第2の波の中にいる。基本的な分析の能力を持ち、レポートを作成すること、あるいは過去に何が起きて、今何が起きているのかが分かるダッシュボードを使って相関性を見い出すところまでは来ている。
ダッシュボードは、特に“過去”、ビジネスがどうだったかを見ることには非常に効果的だ。ただ、“未来”の予測には役に立たない。第3の波では、その予測の部分を担うために人工知能(AI)が使われるようになってきている。
「営業プロセスそのものは、過去数十年にわたってそこまで大きく変わっていない」とトラヴィス氏は指摘する。その中で求められているのは、人間の知識や経験に基づく「推論」の部分が大きい。
営業マネジャーは、営業担当員に対して、今まで知らなかった新しい「洞察(インサイト)」をくれることを期待している。しかし営業担当員がその能力・専門性を持つには、多くの知識と経験が必要だ。AIやアルゴリズムはその部分を、これからより増幅していくことになる。
トラヴィス氏は、営業プロセスの実行とテクノロジーの間にあるギャップとして、4つの課題と、それぞれの解決の方向性を図示した。
「社内プロセスへのフォーカス」「手作業によるデータ入力」「人間の知識に基づく推論」「意思決定リスク」これら4つの課題に対して、営業テクノロジーの第3の波はビッグデータのコンセプトや機械学習を活用することによって、「営業プロセスの最適化」「自動データ・キャプチャ/アクション」「データ主導のセールス・モーション」「意思決定の確実性」をもたらすことになる。
そのうえで「アルゴリズムが、営業戦略のプランニングのプロセスを改善していく」(トラヴィス氏)ことが第3の波の本質となるという。
第3の波は具体的にどんなテクノロジーなのか
では、具体的にどのようなテクノロジーを使うことになるのか。トラヴィス氏は、第3の波のテクノロジーを構成する5つの上位テーマとして、「予測的アナリティクス」「処方的アナリティクス」「仮想デジタル営業アシスタント(VDSA)」「人工知能」「営業パフォーマンス監視」を挙げた。
特に1つ目の「予測的アナリティクス」が重要だとトラヴィス氏はいう。高度な統計・解析を用いる機械学習のシステムであり、人間の知識に基づく推論のさらに先を行くものであり、ほかのすべての技術の基盤となるものだ。
この「予測的アナリティクス」には4つの効果がある。
1つ目は予測のプロセスの改善。案件にまつわるさまざまな情報に基づいて、いつ頃成約が可能かを予測していく。
2つ目は、機会評価(オポチュニティー・スコアリング)。顧客との関わりが増えるにつれて、履歴データが集まってくるので、過去の営業プロセスをベンチマークに、その案件の健全性を評価することが可能になる。
また3つ目として、成約後のクロスセルやアップセルにも貢献する。アルゴリズムが、顧客に合わせて新たな製品を提案できるようになる。
さらに4つ目として、顧客とのリレーションをよりよいものにするためにも、予測的アナリティクスを使うことができる。
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