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  • 2018/08/22 掲載

バーチャルYouTuberブームでわかった、VRの本当の「ヤバさ」

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2018年は、まったく予想していなかった角度からVRの盛り上がりが発生している。キーワードは「バーチャルYouTuber」だ。VRの可能性のひとつとして、ぜひこのまったく新しい潮流に飛び込んでほしいと筆者は思っている。そこでは「見たこともない新しい何か」が日々生まれているからだ。

岑 康貴

岑 康貴

@IT編集記者、はてな編集/ディレクターを経てSmartNews メディア事業開発マネージャ。2017年末にバーチャルYouTuberと出会ってから沼にハマり続けている。チャンネル登録しているバーチャルYouTuberは2018年8月現在200弱。推しは電脳少女シロ、アイドル部、ときのそら、鈴鹿詩子、届木ウカ、ぽんぽこ&ピーナッツくん、ニーツ/VT-212、ミソシタ、銀河アリス、皇牙サキ、理原ひなり、高い城のアムフォなど。VRニュースサイト「PANORA」でもオススメのバーチャルYouTuberを紹介する記事を書いている。

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なぜバーチャルYouTuberがムーブメントを創りつつあるのか
(出典:キズナアイYoutube 動画)

2018年の「予想外な角度からのVR」

 「VR元年」という言葉が使われて久しい。少し調べてみたところ、2016年がVR元年だったようだ。VRの可能性についてかねてより叫ばれているものの、普及に至ったかといえば疑問が残る。

 そんな中、2018年は、まったく予想していなかった角度からVRの盛り上がりが発生している。キーワードは「バーチャルYouTuber」だ。

 VRの可能性のひとつとして、ぜひこのまったく新しい潮流に飛び込んでほしいと筆者は思っている。そこでは「見たこともない新しい何か」が日々生まれているからだ。

 本稿では、2017年末より恐ろしい速度で拡大を始めたバーチャルYouTuberと、その先にあるVRの世界について、簡単にではあるが大枠を紹介する。

急拡大する「バーチャルYouTuber」

 まず「バーチャルYouTuber」について説明しなければならない。「YouTuber」といえばHIKAKINさんなどを思い浮かべると思うが、ではバーチャルYouTuberとは何か? 現在進行形で発展しているジャンルなので明確な定義は難しいが、筆者は概ね以下のように捉えている。

「バーチャルYouTuberとは、3DCGや2Dのアバターに、モーションキャプチャ(現実の人物の動きなどをデジタルで記録する技術)、「リップシンク」(映像信号に対して音声信号のズレを補正する技術)などを組み合わせ、声や動きをリアルタイムに“当てて”YouTubeなどで動画投稿や生放送配信を行う存在のことである」

 この言葉を最初に使ったのは「キズナアイ」さんというYouTuberだ。2016年末、キズナアイさんはデビュー。自己紹介動画で、自らを以下のように紹介している。

「普通のYouTuberと違うぞ?と思った、そこのあなた。なかなか鋭い! 私、実は、二次元なんです! あれ? 3Dだから、三次元? んー、まあ、とりあえず、バーチャルってことで。バーチャルYouTuberって響き、カッコ良くないですか?」


「キズナアイ」さんの自己紹介動画。すべてはここから始まった

 キズナアイさんはAIである。AIがYouTubeを通じて動画を投稿している。夢は世界中の人間とつながること。2018年7月現在、キズナアイさんのメインのYouTubeチャンネル登録者数は200万人を突破し、地上波出演やオリジナル楽曲のリリースなど破竹の勢いで突き進んでいる。

 キズナアイさんは海外でも人気となり、やがて同じような活動をする3DモデルのYouTuberが現れ始める。そして、2017年12月にさまざまな要素が絡み合い、一気にバーチャルYouTuberブームが始まった。それから半年超、企業運営も個人運営も混じり合って、すでにバーチャルYouTuberは4000人を超えているとされる。
 なぜ2017年末にブームが爆発したのかについては諸説ある。筆者は以下のようないくつかの要素が同時期に組み合わさった結果だと考えている。

・美少女3Dアバターに男性の声、という個人のバーチャルYouTuber「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」の登場(ブロガーの「にゃるら」氏の紹介ブログ記事が人気拡大の大きなきっかけになったと言われている)
・特徴的な声とテンションを持つバーチャルYouTuber「輝夜月」の登場
・それに伴うキズナアイら先駆者のニコニコ動画などにおける「再発見」
・以上を受けて、2018年1月ごろに個人バーチャルYouTuberの多くが参入
・さらにその後、企業が続々とバーチャルYouTuber参入

 もともと日本ではキャラクター文化、VOCALOID文化、動画や生放送の文化などがあった。こうした土壌に、これらの現象が組み合わさった結果、一気にブームが加速した、というのが筆者の考えだ。

VR空間での取り組みを発信し続ける者たち

 バーチャルYouTuberはさまざまなネットやサブカルチャーの要素を含んでいる。

 それはYouTuber的な動画投稿者文脈であったり、あるいはニコニコ生放送を中心に見られた生放送配信文脈であったりする。ゲーム実況の文脈も持っているし、Unity/FaceRig/Live2Dといったソフトウェアの文脈も存在する。

 初音ミク的な3DキャラクターやVOCALOIDの流れも一部汲んでいるし、MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)などのゲームで見られるアバターコミュニケーションの流れも影響しているだろう。

 こうしたさまざまな要素のひとつとしてVRがある。特に3DタイプのバーチャルYouTuberの場合、VRとの親和性が極めて高い。特によく挙げられるものに「VRChat」がある。VRChatは米VRChatが開発・運営している、仮想空間上で3Dアバターを通じて他者とコミュニケーションできる無料のサービスである。

VRChat上でのバーチャルYouTuberたちの交流の様子。筆者は当時この生放送の様子をYouTubeでリアルタイム視聴しており、衝撃を覚えた

 バーチャルYouTuberの「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」こと「ねこます」さんを中心にVRChatの啓蒙活動が行われている。これにより多くのバーチャルYouTuberがVRChat内でコミュニケーションをとったり、新しいVRスペースをVRChat内に作ったりし、さらにそこで企画を実施してYouTube動画の撮影や、ニュース番組の生放送をしたりしている。

プライベートなVRChat空間を使った複数のバーチャルYouTuber同士の企画の様子。VRボーリング

 VRChat自体はオープンなものだが、この半年で徐々にプライベートな空間を作り、このような企画を行う取り組みが模索されている。

VRニュース生放送番組をVRChat上で作り上げる試み。ここではバーチャルYouTuberはすでに「バーチャルキャスター」になっている


独自のブランドを立ち上げ、VRスペースを作る試みも


VRChat上で、トークバラエティ番組を作る試みも始まっている

 また、ドワンゴとインフィニットループは2018年4月に「バーチャルキャスト」というサービスをスタートしている。もともとニコニコ生放送のユーザーであった「みゅみゅ」さんらが開発したもので、アバターを通じてVR空間のスタジオからYouTubeやニコニコ生放送に配信できる仕組みを持つ。ドワンゴはバーチャルキャストを利用して、バーチャルYouTuberの公式生放送などの企画を実施している。

バーチャルキャストのプロモーション動画


画像
キズナアイが出演したニコニコ超会議の「超音楽祭」

放送終了済み)
 ドワンゴはその他にも、VR技術者として著名な「MIRO」さんらが、キズナアイさんのニコニコ超会議でのライブ映像のVR演出や、「電脳少女シロ」さんがロサンゼルスで開催されたコンピュータゲームの見本市「E3」にて、ARを活用して現地インタビューを行う企画などの技術部分を担っている。

 ドワンゴではこれまでにも初音ミクの「超歌舞伎」ライブ(伝統芸能の歌舞伎とテクノロジーを融合した舞台)などでこうしたVR技術の蓄積があり、それをバーチャルYouTuber向けに発展させたものと言える。

【次ページ】来るべき「仮想世界」への誘いとしてのバーチャルYouTuber

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