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  • 2018/10/23 掲載

勝間和代、増原裕子両氏が語った「ダイバーシティの未来」

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東京五輪を2年後に控え、東京都議会はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者)に対する差別をなくす条例を成立させた。一方で、自由民主党(以下、自民党)衆議院議員 杉田水脈氏のによる「LGBTは生産性がない」という寄稿文を発端とした騒動など、差別的な言動が炎上問題へと発展するのも珍しくなくなった。そんな中、自民党 衆議院議員橋本岳氏や立憲民主党 衆議院議員の尾辻かな子、LGBTアクティビストの増原裕子氏や、今年5月にカミングアウトした経済評論家の勝間和代氏らが、LLAN主催「Equality Gala 」に出席。ダイバーシティ&インクルージョン社会の実現について思いを語った。

松岡宗嗣

松岡宗嗣

1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。一般社団法人fair代表理事。政策や法制度を中心としたLGBTに関する情報発信や、啓発キャンペーン等を行っている。教育機関や企業、自治体等での研修・講演多数。LGBTを理解・支援したいと思う「ALLY(アライ)」を増やす日本初のキャンペーンMEIJI ALLY WEEK発起人。

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LLAN(LGBTとアライのための法律家ネットワーク)の「Equality Gala 」は今年で3回目の開催となった

各界で議論される「同性婚」

 今回で3回目を迎えるLLAN(LGBTとアライのための法律家ネットワーク)の「Equality Gala 」。冒頭、LLAN 共同創設者の藤田直介氏とアレキサンダー・ドミトレンコ氏が挨拶した。

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LLAN 共同創設者 フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所 シニア・アソシエイトアレキサンダー・ドミトレンコ氏(壇上左)、LLANの理事 スクワイヤ外国法共同事業法律事務所パートナー 別府理佳子氏(壇上右)

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LLAN 共同創設者
ゴールドマン・サックス証券
法務部長
マネージング・ディレクター
藤田直介氏
 ゴールドマン・サックス証券法務部長 マネージング・ディレクターでもある藤田氏は「私たちの団体は、『理解』『対話』そして『行動』。この3つのキーワードをもとに歩んできました。もちろん試行錯誤の連続でしたが、日本は『理解』が始まれば、その次の動きは非常に速いと感じています。このキーワードをもとに、引き続き取り組みを進めていきたいと思っています」と語った。

 乾杯の挨拶では、LLANの理事で、スクワイヤ外国法共同事業法律事務所パートナー 別府理佳子氏が「1人ひとりが心から信じる、何よりも大事な大義、使命として、すべての人が愛するひとを愛せる世界、居場所、日本をめざすことに前進していく所存でございます。LOVE IS LOVE」と話した。

 その他にも、学会、政界、実業界など、各界のフロントランナーが壇上に登場した。最初に登壇したのは立命館大学法学部教授の二宮周平氏だ。

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立命館大学
法学部教授
二宮周平氏
「私も所属する日本学術会議の委員会で、今年9月29日に『性的マイノリティの権利保障をめざして―婚姻・教育・労働を中心に― 』という提言を出しました。実は学術の世界では、性的少数者については中立的な立場を取る人がほとんどです。先日の学会では、婚姻について『異性または同性の2人は婚姻をすることができる』という規定の提案に対して反対する人は誰もいませんでした。性的指向にしろ性自認にしろ、個性として性のあり方は尊重されなければなりません。同性婚は性的少数者を肯定するメッセージにもなります。法律は困っている人のためにこそ存在するのです」(二宮氏)

自民党議員も『新潮45』の騒動について言及

 自民党 衆議院議員 橋本岳氏も登壇。杉田氏の『新潮45』への寄稿問題にも触れ、LGBTに対する理解の必要性を訴えた。

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自民党
衆議院議員
橋本岳氏
「自民党では、まずは理解を進めようとLGBT理解増進法の制定を進めています。しかし、党内の議論はこれからというところで、正直壁は厚いです。自民党所属の議員が、ある雑誌に論稿を発表し物議を醸しました。その作文に対してベテランの代議士は『LGBTを理由に憲法上の国民の権利を制限すると疑われる発言は、慎まなければならない』とコメントされていました。保障された権利はどういう人であれ守られなければいけないというところです。一歩の前進が、日本全体の5歩や10歩につながると思います。いろいろがっかりさせることも多いと思いますが、厳しい目で叱咤激励していただければと思います」(橋本氏)

 続いて、立憲民主党 衆議院議員の尾辻かな子氏が登壇。

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立憲民主党
衆議院議員
尾辻かな子氏
「私は今の国会議員のうち、ただ1人、レズビアンであることをオープンにしている国会議員です。ここに至るまで長い道のりがありましたが、それでも私が政治家としてカミングアウトしたのは、悩んでいる次の世代の子どもたちに『あなたはあなたのままで良い』と言える社会を作りたいからです。日本ではLGBTに対する差別解消法も、同性パートナーの保障もありません。

 ある雑誌では、LGBTは生産性がないというような発言があり、さらに先日発売された同じ雑誌は『それの何が悪いんだ』と居直るような言論が出てきています。これが日本の現状なら変えなければならない。日本が平等で多様性を尊重する社会となるよう、お力をお貸しいただければと思います」(尾辻氏)

※本イベント開催日は9月19日で、「特別企画 そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を掲載した『新潮45』10月号の発売日の翌日だった。その後、9月25日に新潮社から『新潮45』の休刊が発表された。

 また、今年4月からパートナーシップ宣誓制度を開始した福岡市長 高島宗一郎から、ビデオメッセージで挨拶があった。

「パートナーシップ宣誓制度を作る前に、私は当事者のみなさんと本音で話す機会をいただき、家族として病院で面会できない、市営住居に入れないといった苦しい思いを直に聞きました。パートナーシップ宣誓制度に加え、中学校の制服の見直しについても検討しはじめています。福岡市も一歩ずつ施策を進めていることを世の中に伝えることで、他の自治体や企業にも関心が広がっていくことを確信しています」(高島氏)

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LGBT自治体議員連盟世話人
文京区議会議員
前田邦博氏
 続いて、LGBT自治体議員連盟世話人・文京区議会議員 前田邦博氏が登壇。

「昨年7月に、全国の自治体議員のLGBT施策を推進する議員連盟を立ち上げ、同時に私がゲイであることをカミングアウトしました。LGBT自治体議連を立ち上げた当時、メンバーは全国で80名だったのですが、1年足らずで260名まで増えました。パートナーシップ制度が導入されている自治体は、全体の人口の1割を超えようとしており、加速度的に広がっています。オセロゲームの石が黒から白に変わるように、1つひとつの自治体をレインボー色に変え、日本全体に広げていきたいと思います」

日本企業で最初にLGBT行動規範に賛同した富士通

 企業からは、富士通 常務理事 CTO補佐 人事本部副本部長 人材開発担当 兼 ダイバーシティ推進室長の梶原ゆみ子氏が登壇した。

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富士通
常務理事 CTO補佐
人事本部副本部長
人材開発担当 兼
ダイバーシティ推進室長
梶原ゆみ子氏
「富士通では1982年より人権尊重に基づいた企業活動を推進しています。LGBTに関しては、社内の当事者やALLYの方とのネットワークも形成しつつあり、2018年には、国連が発表した『LGBTIの人々に対する差別への取り組み-企業のための行動基準』に日本企業で初めて支持表明をしました。当社のイギリスの社員から『女性のエンパワーメントと同様にLGBTにも対応してほしい』と強い要望を受けました。

 さらに、外資で働かれている方から『(国連のLGBTI企業行動指針に)支持表明をすることは、会社に帰属する従業員が安心して働けることを示しているんですよ』と言われ、何を躊躇しているのだろうかと気持ちが固まりました。あわせて、弊社の役員に対しての研修を行いました。人権尊重のもと、1人ひとりの意見に耳を傾け、ダイバーシティ&インクルージョンを進めていきます」(梶原氏)

 イベントでは、オペラ声楽家のマリアセレン氏による歌のパフォーマンスも披露された。ソプラノとテノールを使い分ける両声ヴォーカリストとして活躍するマリアセレン氏の圧倒的な歌声に、会場中が引き込まれた。

画像
オペラ声楽家 マリアセレン氏

「自分らしく生きるというのは他人を受け入れることです。私も『気持ち悪い』と言われることもあるけれど『気にしてくれてありがとう』と抱きしめてあげる。受け入れること、それが心のバリアフリーに繋がるのではないかと思います」(マリアセレン氏)


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