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  • 2018/08/24 掲載

増原裕子のプロフィールまとめ、仕事から「ディズニー結婚式」まで本人が徹底的に語る

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トロワ・クルールの代表取締役でLGBTコンサルタント/アクティビストとして活躍する増原裕子氏。現在、ダイバーシティ経営・LGBT支援に関する研修/講演/コンサルティングを中心に活動している。2013年、当時のパートナーだった東小雪氏と東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ、2015年には渋谷区の同性パートナーシップ制度による証明書交付第1号カップルとしても注目を浴びた(2017年末にパートナーシップ解消)。最近では経済評論家 勝間和代氏が同氏との交際を発表した。当媒体では「ダイバーシティ経営におけるLGBT対応」を連載。同氏のこれまでとこれからを聞いた。

執筆:鈴木恭子、聞き手:ビジネス+IT編集部 佐藤友理

執筆:鈴木恭子、聞き手:ビジネス+IT編集部 佐藤友理

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トロワ・クルール代表取締役、LGBTコンサルタント/アクティビスト 増原裕子氏

1977年~2000年:カミングアウトに至るまでの葛藤

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 増原氏は2013年12月、「多様性が尊重される社会」の実現を目的に、トロワ・クルールを設立した。主にLGBTの理解のための企業研修、講演、講師紹介、ワークショップ・セミナーなどの企画/出版を手掛ける企業だ。増原氏はレズビアンの当事者として全国を奔走する。

 今でこそLGBT支援やダイバーシティ分野の専門家として知られる同氏だが、自身のセクシュアリティを自覚して受け入れるまでにかなりの時間を要したという。

「初めて同性に恋心を抱いたのは小学4年生のとき。好きな男の子もいましたが、男の子と同じように女の子も好きになりました。でも、その時点で『同性愛は変なもの』と思い込んでいたんですね。実際、好きになった女の子を見つめていたら、本人から『気持ち悪い』と言われたんです。それ以来、『同性を好きになってはいけない』と、自分の心にふたをしていました」(増原氏)

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レズビアンの当事者であることをオープンにして活動している増原氏。カミングアウトまでには時間が必要だった

 増原氏が小学生時代を過ごした1980年代、テレビでは同性愛者は笑いのタネだった。「とんねるずのみなさんのおかげでした」に登場した 保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)がその典型例だ。異性愛が当たり前の同調圧力社会の中で、絶対に周りにバレてはいけないという思いから、増原氏自身も同性愛者を「笑いの対象」としていたという。

 「小学4年生から、大学4年生の卒業旅行でカミングアウトするまで、レズビアンであるという自分のセクシュアリティに悩みを抱え、葛藤していました」と増原氏は語る。

 葛藤の原因の1つは、一般社会にあるホモフォビア(同性愛嫌悪)を自身も内包していたことだ。増原氏が大学に入学した1996年は、「東京レズビアン&ゲイパレード」(当時)が始まり、「東京都青年の家裁判」などがあった時期でもある。

 増原氏は「今から考えると、同性愛に関する情報を積極的に収集していなかったと思います。日常生活では家族や学校の友達と良好な関係を築いていました。自分がレズビアンであることを認めなければ、“まとも”な生活ができると自分を納得させていたんです」と振り返る。

 大切な友達に自分のセクシュアリティについて嘘をつき続けていることに増原氏は苦しんだ。そして大学4年生の卒業旅行で、仲のよい友人にカミングアウトする。誰一人増原氏の元を去る者はいなかった。

2000年~2003年:パリ留学と親へのカミングアウト

 2000年に慶応大学を卒業後、同大学大学院に進学。増原氏は交換留学生としてパリ第3大学で学ぶ。そこで同性愛者のサークルに参加し、交友関係を広げていく。パリではカミングアウトをし、自分のセクシュアリティを受け入れて確立していった。

 そんな増原氏の元に母親が訪ねてきた。「観光」との名目だったが、「女性が好きなの?」と聞かれた。「親にカミングアウトするのは最後。まだ先の話」と考えていた増原氏は、母親に対して自分のセクシュアリティをうまく説明する言葉を持っていなかった。

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パリでの生活は「レズビアンであること」を引き受けて生きるきっかけになったという

「レズビアンであることは、『結婚して家庭を持ってほしい』という親の願いをかなえられないということです。『親の期待に応えられない』『親を悲しませている』という自責と、『母はなぜ娘のセクシュアリティを否定するのか』というはざまで苦しみました」(増原氏)

 一方、増原氏の父親は同氏のセクシュアリティを否定しなかった。父親はロックが好きで、好きなアーティストの中にはゲイのアーティストも数多くいた。さらに、日本よりもLGBT理解の進む米国で生活した経験のある父親は、「娘の幸せが一番」と母親を説得してくれた。今では増原氏にとって母親はよき理解者であるという。

2003年~2011年:「職場で」初めてカミングアウトするまで

 2003年に大学院を卒業し、増原氏は外務省の在外公館派遣員としてジュネーブ公館に2年間勤務する。その後、フランス語学校、フランス系の会計事務所、日本のベンチャー企業勤務を経て、LGBTアクティビストとして生きる道を選ぶ。そのきっかけになったのは、ベンチャー企業での経験だ。

「私がいたベンチャー企業では、『自分らしさを出してブランディングしよう』というメッセージを打ち出していました。そこで働いているうちに、『では同性が好きなことを隠している自分の場合はどうだろう?』と考えるようになりました」(増原氏)

 「自分らしさ」を熟考する中で出した答えが「LGBTアクティビストとして生きる」ことだった。2011年、増原氏はLGBTアクティビストとして活動を始めた。知り合いのIT企業で働きつつ、夜や週末を活動に充てる多忙な日々だった。

 実は、増原氏が職場で全面的にカミングアウトしたのは、2011年から約4年間働いたこのIT企業だけだった。

「最後に務めたIT企業では、入社の段階で社長にカミングアウトしました。『言ってくれてありがとう』と前向きに受け入れてもらえたので、気持ちが楽になりました」(増原氏)

 カミングアウトをためらったことについて増原氏は「漠然と不安があった」と振り返る。

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「LGBTアクティビスト」という肩書は、自身も同性愛者で「同性愛者を含めたすべての人間の権利と機会の平等」を訴えてサンフランシスコ市の市政執行委員になったハーヴェイ・ミルク氏が、「Gayアクティビスト」と名乗っていたことに影響されたという。

「解雇されることはないと思っていましたが、人間関係でプラスに働くことはないだろうと思い込んでいました」(増原氏)

 カミングアウトは「異性愛が当たり前の社会を覆すこと」だ。それを自分がすることで、何が起こってしまうのか。どんなデメリットが発生するのかわからないまま不安を感じていたという。

2011年~2013年:東小雪氏と出会う~トロワ・クルール設立

 そして2011年の春、増原氏は最初のパートナーとなる東小雪氏とLGBTに関する活動を通じて出会う。宝塚歌劇団出身でカミングアウトをしていた東氏は、すでに社会から注目を浴びていた。

 出会いから数カ月後、2人は同居を始める。会社員&LGBTアクティビストの増原氏と、LGBTアクティビストの東氏。2013年春には東京ディズニーシーで初(東京ディズニーリゾートとしても初)となる同性結婚式を挙げて注目された。そして、2人ともLGBTに関する活動が増えてきたのをきっかけに、同年12月、トロワ・クルールを立ち上げる。増原氏は 立ち上げ当初から2015年3月末までフルタイムで会社員を続け、多忙な二足のわらじ状態が続いた。その後、2015年4月からトロワ・クルールに集中して活動することになる。

【次ページ】2013年~2017年:LGBTアクティビストとして“幅”を広げる

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