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  • 2019/04/02

従来のAGVとどう違う? 「無人搬送ロボット」の今を徹底解説

連載:世界のロボット新製品

無人搬送ロボットの開発競争が世界中で行われている。こうした動きは特に物流の業界で顕著で、たとえばアマゾンも、自社の倉庫で大規模に無人搬送ロボットの導入を行っている。無人搬送ロボットの導入が進む最大の理由は、ロボットの中でも費用対効果が高いためだ。昨今の無人搬送ロボットは従来からあるAGV(無人搬送車)とどう違うのか?

アスラテック 事業開発部 部長 羽田卓生

アスラテック 事業開発部 部長 羽田卓生

1998年にソフトバンク入社後、出版事業部に従事。2004年に、テレビ東京系番組「テレビチャンピオン」にて、初代ケータイ王になる。2006年より、ソフトバンクモバイルを経て、2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在は、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパンの代表幹事。WEB媒体での執筆や多数の講演・セミナーの講師など幅広く活動。直近ではSoftBank World 2017の特別講演に登壇。

画像
2019年1月よりアマゾンの宅配用搬送ロボット「Amazon Scout」の実証実験が始まった。

(出典:YouTube

先駆けとなったアマゾンの成功事例

 無人搬送ロボットは、人が操縦しなくても自動で走行することができる搬送ロボットをいう。無人搬送ロボットの具体例としてはアマゾンロボティクスが有名だ。この事例は、無人搬送ロボットのベンチマークともいえるもので、まずはこの事例を紹介しよう。



 上の動画を見ていただくとわかる通り、このロボットは、アマゾンの倉庫内で多種多様で大量の商品を自動的に搬送するものだ。もともと倉庫向け無人搬送ロボットを開発していた、Kiva Systems社をアマゾンが買収し、現在のアマゾンロボティクスとなっている。

 報道をたどると、買収が行われた2012年ごろには、アマゾンでの倉庫での運用が始まっている。その後、導入が進み、国内においても数年前より導入が開始されたという。そして、今や1万超の台数がすでに導入されているという。

 導入が進み台数が大きく増えているということは、コストの削減や作業効率の向上といった効果が見られるからで、このアマゾンの事例は間違いなく成功事例だ。アメリカでの話だが、一部報道によると、2016年時点で1センターあたり年間2200万ドル(24億円超)のコスト削減につながったという。

 これは大規模な設備を世界中に持ち、資本力もあるアマゾンという企業だから成功したという声もあるかもしれないが、この成功が無人搬送ロボットの開発・導入競争の一つのきっかけとなったことは間違いないだろう。

無人搬送ロボットの最新事情

 こうした無人搬送ロボットは、なにも新しいロボットというわけではない。従来から工場などで一般的に使われてきたAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車、自動搬送台車)も無人搬送ロボットの一つといえる。

 AGVは、1980年ごろから工場などで部品や材料、完成品を運ぶのに使われているという。その歴史は産業用アームロボットと同じく、数十年にも及ぶ。ただ、従来型の一般的なAGVは、床面に張られた磁気テープなどで誘導を行い、無人で走行するというものだ。従来のAGVは、決められた場所、決められたルート、決められた仕事しかできなかった。

 一方で最近の無人搬送ロボットは、センサーやソフトウェアの力を使って、もっと自由に動けるようになっているのが特徴だ。誘導にしたがって動くのではなく、自律的に動けるようになっている。屋外で、初めて走行する道路を、人にぶつからず物を運ぶなどの仕事を行う。同じ台車型ではあるが、まったく違う新しいロボットと考えることもできる。

従来型のAGVと新しい無人搬送ロボットの違い
従来型のAGV新しい無人搬送ロボット
稼働場所工場などの屋内屋外・屋内などさまざま
移動範囲決められたルート不定型のルート
移動方法ガイドなどによる誘導走行自律走行
人との協働想定していない想定している
AI(人工知能)未搭載搭載


 従来のAGVといま新しく出てきているタイプを比較したのが、上の表となる(ただしあくまで一般論で、すべての機種がこれに該当するわけではない)。主に工場で使われることを想定されているものと、新しい利用場所で今までにない仕事を行おうとしている差が、比較に表れた。これは、産業用アームロボットと協働ロボットとの比較に、相似しているとも言えるのではないだろうか。

なぜ無人搬送ロボットが注目されるのか?

 こうした無人搬送ロボットは、特に物流業界を中心に、世界中で開発や導入が進んでいる。今、無人搬送ロボットが注目されている理由として、主に以下の4つが挙げられる。

(1)法改正で一部地域での無人宅配が実現できること
(2)物流市場が拡大を続けていること
(3)慢性化する労働力不足が改善されないこと
(4)SLAMなどの技術がそろってきたこと

(1)法改正で一部地域での無人宅配が実現できること
 以前の連載でも記載したが、経済産業省、国土交通省が行っている「自動走行ビジネス検討会」によると、2020年に一部法制度の改正が行われ、一部地域で無人宅配などのサービスが実現可能になるという。

 さらには、無人搬送ロボットの屋外公道での実証実験を2019年度から解禁する、という報道もある。その報道の中には、2019年度中に、実証実験に必要なガイドライン策定するとも。

 このような法改正の動きにより、無人搬送ロボットの活躍の場が整ったのだ。

(2)物流市場が拡大を続けていること
 矢野経済研究所の発表によると、ゆるやかではあるが国内の市場規模は拡大を続けている。グローバルでも、ECの急拡大などの影響で、市場は拡大を続けているという。市場が拡大しているからこそ、ニーズが生まれ開発が行われるという流れが起きている。国土交通省が発表している建築着工統計によると、倉庫の工事額は順調に推移し、2017年には、前年比5%超えで、1兆588億円となっている。

(3)慢性化する労働力不足が改善されないこと
 こちらは公的機関、民間問わず、さまざまな調査レポートやデータが公開されている。少子高齢に伴い慢性化する労働力不足。この問題は、一向に改善する兆しはなく、その結果、ロボットなどの技術革新に打開策を求める結果が起きている。

(4)SLAMなどの技術がそろってきたこと
 従来の工場などで使われているAGVは、磁気テープやラインを床面に設置し、移動範囲をそのルートに限定する形で使用されてきた。閉鎖的な場所で決められた運用を行うには問題はない手法だ。

 一方で、今新しく出てきている無人搬送ロボットは、工場だけでなく、色々な場所で使われることを想定されており、動的に地図を作製する必要がある。

 そこで必要になる技術が、SLAM(スラム:Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術だ。SLAMは、ソフトウェアだけでは実現しない。レーザースキャナや、ジャイロセンサー、カメラなどの入力装置と組み合わせることで初めて実現できる技術である。このSLAMのために必要なソフトウェアや機器類、方法論がそろってきたことが、無人搬送ロボットのイノベーションが起きている要因にもなっている。

【次ページ】無人搬送ロボットの分類、具体例

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