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  • 2019/11/05

中国製造業が世界を獲るこれだけの理由 ドローンにスマートスピーカー、ロボットも?

短期集中連載:中国ロボット最新事情

世界中で開発が進むロボット。その中でも特に目覚ましい躍進を見せているのが中国だ。ロボットを軸に中国製造業の今を切り取る本連載の第2回では、中国の経済発展の大きな流れを押さえた上で、ドローン、スマートスピーカー、そしてロボットといったハイテク市場で中国企業がいかにシェアを高めていっているのか考察する。

アスラテック 事業開発部 ロボットコンサルタント 伊東和哉

アスラテック 事業開発部 ロボットコンサルタント 伊東和哉

アスラテックでロボットビジネスのコンサルタントなどを担当。2018年のアスラテック入社前は、外資系ハードウェアメーカーや世界最大手EMSメーカーグループの日本法人などで、ハードウェアコンサルタントとして主に、IoT、サーバー、ネットワーク領域にてアライアンス構築、導入支援、ソリューションODM、プロジェクトマネジメント等を手掛ける。

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中国製品が世界を席巻しつつある
(Photo/Getty Images)
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ドローン、スマートスピーカーではすでに世界No.1

 まずは下図を見てほしい。これは、ドローンとスマートスピーカーの最新シェアをまとめたグラフだ。左側の円が企業別、右側の円が国別のシェアであり、いずれも中国が大きなシェアを占めていることがわかる。
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2019年 ドローン製造メーカー 米国マーケットシェア

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2019年Q2 スマートスピーカー グローバルシェア

 ドローンの市場は、2010年にフランスのParrotが発表した「AR Drone」が一般向けに販売されるまで小さなものだった。だが、現在では非常に大きなマーケットに成長している。その中でも現在飛びぬけたシェアを確立しているのが、深圳に本社を置くDJIだ。

 DJIは、当初はドローンを安定飛行させるためのフライトコントローラーシステムを開発していた会社だが、2011年に自社製ドローン「Phantom」をリリースしてから使い勝手の良さや豊富なラインアップを武器にシェア1位を獲得する。

 さらに2017年1月、ドローンを使用した映像解析など空撮ニーズが高まってきたタイミングで著名カメラメーカーのハッセルブラッドを買収。ハッセルブラッドブランドのカメラをDIJ製ドローンに搭載した。これにより、当初ほとんどのドローンメーカーが使用していたGoProから中国製独自カメラに変更された際に抵抗のあったプロユーザーをも取り込むことに成功している。いまだに破竹の勢いでドローン市場を席巻しており、死角が見当たらない。

 スマートスピーカー市場については、グローバルリーダーとしてアマゾンやグーグルをはじめとする米国企業をイメージする人が多いかもしれないが、実は世界シェアで見ると中国が上回っている。百度(バイドゥ)、阿里巴巴集団(アリババ)、小米科技(シャオミ)が2017年ごろからそれぞれ独自のAIを搭載した製品をリリースし、ついに2019年第2四半期に国別シェアで中国メーカーが43.9%となり米国メーカーを抜いたのだ。

 バイドゥは2018年にマーケットに参入したばかりだが、すでにグーグルを抜いてメーカー別シェア2位となり、1位のアマゾンを追いかける勢いで成長している。バイドゥ製のスマートスピーカーといってピンとこない人も多いだろうが、それもそのはずで、中国以外では販売されていないのだ。

 中国国内の内需を3社で奪い合っている状況にも関わらず、世界中で販売されているグーグルのシェアを抜いてしまう国内市場の大きさには驚きを隠せない。中国語対応が難しく、実質的に国外企業が参入できていないことも影響しているが、この1年でシェアが大幅に上昇した背景には、これまで製品が行き届いていなかった所得層にも広まったことが大きく作用していると考えられる(所得層の変化については後述)。

 アリババと並ぶ巨大企業である腾讯(テンセント)も、参入が遅れたがスマートスピーカー製品をリリースしており、より内需競争は激化するだろう。そうなることで各社の技術がブラッシュアップされていき、「グローバルマーケットに参入した時点ですでにマーケットリーダーになっている」というケースは、今後増えてくることが予想される。

 このように、ドローンやスマートスピーカーに限らず、熾烈(しれつ)な国内マーケットを勝ち抜いた中国メーカーが、次々と新興マーケットのグローバルシェアに食い込んできている。

 かつて“世界の下請け工場”として見られていた中国が、どのようにして世界をリードする国へと変化を遂げたのか──その背景を探るため、中国の経済発展の流れからひもといていこう。
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目覚ましい中国経済成長の歴史

 中国は、1978年12月に開催された中国共産党第十一期中央委員会第三回全体会議で「改革開放」が提出されてから、工業・農業・科学技術・国防の「四つの近代化」を柱に平等主義から資本主義へと変化していく。

 1981年には、資本主義経済の拠点として、沿海部を中心とした4つの経済特別区が制定された。その中には、今日では東洋のシリコンバレーとまで呼ばれるようになった深圳も含まれている。この4都市に外資系企業を誘致することで、安い関税と労働力を武器とした製造業が発展していくことになる。

 そして1992年に「社会主義市場経済論」が発表され、“社会主義であっても市場があっても良い”とする明確な指標が提示される。これを機にさらに経済開放区が増加し国外からの直接投資が増え、外資系企業が中国で製造し諸外国に輸出するスキームが確立されることとなった。

 さらに2001年のWTO(世界貿易機関)加盟なども追い風になって市場が活発になり、世界最大の製造工場であるフォックスコン(Foxconn)を始めとする数多くの製造受託企業を輩出。世界の工場・貿易大国へと成長を遂げたのだ。

内需向上への転換、最低賃金は年平均12%上昇

 世界の工場として成長を遂げてきた中国だが、製造された製品のほとんどが国外へ輸出される製品のため、世界経済の影響を非常に受けやすいという問題があった。そこで中国は、膨大な人口を保有する国内の内需を向上させ、輸出によって生み出してきた利益を転換する取り組みに力を入れていくことになる。

 まず、2004年に施行させた「最低賃金規定」を元に最低賃金基準を定め、賃金を調整することで底上げを行っていく。これは一定の成果を挙げるが、より大きな底上げを行うため、最低賃金を年平均で13%上昇させることを目標とした個人所得税制改革が2011年にスタートする。

 この改革にすべての企業が取り組んだ結果、スタートから5年間で深圳や広州を有する広東省では最低賃金が年平均で約12%も上昇し(なお同時期の日本は3%程度)、大多数を占めていた低所得者層が下位中間層レベルまで底上げされることとなった。

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Euromonitor International調べ中国所得層の変動図(2000年~2020年5年推移)
備考:世帯可処分所得別の家計人口。各所得層の家計比率×人口で算出。
2015年、2020年はEuromonitor推計

 現在は成長率が下がってきているものの、高い経済成長を遂げたことも相まって以前に比べ金銭的な余裕が生まれた結果、消費行動が増加し消費傾向も多様化してきている。先ほどスマートスピーカーのシェアを解説したとき、中国市場の大きさについて触れたが、こうした所得階層の変化も寄与しているのだ。そして、その恩恵を最も受けているのが、アリババや京東(JD.com)のようなECサイト事業者といえるだろう。

 その半面、受託を中心とした従来の製造業では人件費の向上による弊害が発生し、結果的に東南アジアなどへの工場機能の流出を招くこととなる。ただ、これも一種の成長痛のようなもので、成長に合わせて産業用ロボットを導入し製造コストにおける人件費削減を目指している。もっとも、中国の工場が得意としている作業の1つである組み立てにおいては、一部産業を除き手作業に頼らざるを得ないものも多く、どこまで自動化できるかは課題となっている。

【次ページ】買収で成長を加速させたロボットメーカー2社

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