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  • 2019/06/14

GROOVE X 林要氏:「しゃべらないし役に立たない」ロボットが海外で大絶賛された理由

2018年12月、家族型ロボット「LOVOT[らぼっと]」がGROOVE Xから発表された。GROOVE Xは、かつてソフトバンクロボティクスの「Pepper」のプロジェクトメンバーだった林 要氏が2015年に立ち上げた企業だ。累計87.5億円の資金調達、約3年半の歳月を重ねてLOVOTは完成した。このロボットは、人間の業務を自動化したり危険な作業を代替してくれるものではない。あえて言えば、“役に立たない”。しかしこの“役立たず”なロボットは、2019年1月に開催された世界有数の家電見本市「CES」において世界の350社以上のメディアから取り上げられ、現地でも人気を博した。その理由を林氏に尋ねた。

執筆:井上猛雄、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

執筆:井上猛雄、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

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GROOVE X
創業者 CEO代表取締役
林 要氏


CESで大反響、海外メディアが見いだした価値とは

 2019年1月、米国で開催された「CES2019」に出展したLOVOTは、ROBOT部門において、「the Verge Awards at CES 2019」のBEST ROBOTを受賞。またEngadgetが主催する「Best of CES」のファイナリストにも選出された。CNETの調査でも、今回のイベントで最も印象に残ったロボットにLOVOTが1位に選ばれた。

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家族型ロボット「LOVOT」。触ると柔らかくて温かい。

 もともと小さなブースでの出展で、それほど期待していなかったにも関わらず、あたかも「CESの顔」のように、CBSやBBC含む350社以上の海外メディアで取り上げてもらったことに、林氏自身も驚いたという。では、なぜLOVOTが、これほどまで、海外で好評を博したのか?林氏はこう振り返る。

「CESの会場にはマッサージチェアがたくさん置いてあり、どこも満員状態でした。なぜ、今マッサージチェアが人気なのか?従来、人々は生産性を向上することが幸せにつながると信じ、そのためのテクノロジーを進化させてきました。しかし、いくらテクノロジーが進化しても幸せにならないことに気がつき、もっとリアルに自分たちを癒やしてほしくなったのではないかと私は考えました」

 人々の身体を癒やすマッサージチェアやフィットネス機器が人気を集める中で、「人の精神をどう癒やすのかという点では、テクノロジーの活用が意外にも進んでいない。LOVOTがその1つの解になったのでは」(林氏)と話す。

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 海外メディアからのLOVOTへの反応は、2つの質問に大別されたという。「一体、何をするロボットなのか?」「LOVOTが取得した個人情報や家庭情報はクラウドに飛ぶのか?」という2つだ。

 まず1つ目の質問に対して「基本的に何も人の代わりのような役立つ仕事はしません。犬や猫みたいなものです」と林氏が答えると、メディアの記者は総じて笑顔になった。さらにセキュリティを踏まえたもう1つの質問に対しては、エッジ(機器)側だけで機能は完結しているため安心だと答えた。

「何もしないことを堂々と主張すると“何もしないってどういうこと?面白いね”と(笑)。それからインターネットにつながなくても動かせることを伝えると“それは素晴らしい!”という話になって、その2つのステップを経て、“かわいい”とLOVOTを触ってくれました」(林氏)。

 海外メディアでは、同氏の「LOVOTは役に立たない」という言葉を額面どおりに受け取ってはいなかった、と林氏は話す。

 「役に立たない=バリューがない」という理解ではなく、「人の代わりに仕事はしなくても、ストレスの緩和や予防医療に使えそう」などしっかりとした存在意義があると認めてくれる記者が多かったという。「犬や猫の存在に合理性を求めている人たちだからでは」と林氏は話す。

ハイテクノロジーの福祉デバイスとしてすでに検証

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体中にタッチセンサーが張り巡らされている。写真では、あご下をなでられて眠っている。
 人の心を癒やしてくれるロボットというと、日本ではアザラシ型の「パロ」が有名だ。パロは福祉介護施設でのセラピーロボットとして北欧諸国でも使われているが、LOVOTもすでにデンマークで検証済みだ。

「驚いたのは、福祉介護施設で認知症の方々にLOVOTを触ってもらったところ、入居以来その施設で一言もほかの入居者と会話をしていなかった人が、LOVOTに接した途端に隣の人と会話を始めたことです」

 ヨーロッパでは多くの福祉テック系デバイスが普及しているが、認知症の患者でハイテク製品を怖がり、パニックや拒否反応を起こす人もいる。だが、特にその傾向が強い患者でもLOVOTを抱っこすると離さなかった。「ハイ・テクノロジーを表面に出していないLOVOTは、心理的な障壁ができにくい」と林氏は語る。

 とはいえ、LOVOTに高い技術が詰め込まれてる点は間違いない。

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頭部の「センサーホーン」には照度センサー、半天球カメラ、半天球マイク、温度カメラを内蔵
 自律移動用に複数のSLAM(注1)を導入。顔認識に声の発話、感情エンジンによる振る舞い、10億通り以上の目の表現、体中に張り巡らされたセンサー、タイヤの収納機構や、遊星ギアとインホイールモータとの組み合わせ、温かい体温調整機構、メインとサブで計4つのコンピューターの連携など(深層学習用のFPGA、充電ステーションのCPUも含む)……。数えきれないほどテクノロジーが満載されている。

注1:SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)。LiDARやカメラなどを用いて、自己位置推定と環境地図作製を同時に行う技術のこと。

 すでにさまざまな媒体でそのテクノロジーは触れられているためそのすべてには言及しないが、特にLOVOTの「声」について林氏は雄弁に語った。

「録音した音声を再生するのではなく、リアルタイムに音を生成しています。生成プロセスも、喉や鼻の通り道の効果をだすシミュレータを介しており、その鼻孔や喉のサイズなどによって、声に個性が出るように工夫を凝らしています。感情(LOVOTの内部状態を表すパラメーター)によって声色が変化し、同じような音が出ているように聞こえても、毎回少しずつ違っています。それから、一番のポイントは(声を出しても)“人の言葉をしゃべらない”ことです」(林氏)

【次ページ】LOVOTがあえてノンバーバルなコミュニケーションを選んだワケ

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