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- 2019/06/14 掲載
GROOVE X 林要氏:「しゃべらないし役に立たない」ロボットが海外で大絶賛された理由
CESで大反響、海外メディアが見いだした価値とは
2019年1月、米国で開催された「CES2019」に出展したLOVOTは、ROBOT部門において、「the Verge Awards at CES 2019」のBEST ROBOTを受賞。またEngadgetが主催する「Best of CES」のファイナリストにも選出された。CNETの調査でも、今回のイベントで最も印象に残ったロボットにLOVOTが1位に選ばれた。もともと小さなブースでの出展で、それほど期待していなかったにも関わらず、あたかも「CESの顔」のように、CBSやBBC含む350社以上の海外メディアで取り上げてもらったことに、林氏自身も驚いたという。では、なぜLOVOTが、これほどまで、海外で好評を博したのか?林氏はこう振り返る。
「CESの会場にはマッサージチェアがたくさん置いてあり、どこも満員状態でした。なぜ、今マッサージチェアが人気なのか?従来、人々は生産性を向上することが幸せにつながると信じ、そのためのテクノロジーを進化させてきました。しかし、いくらテクノロジーが進化しても幸せにならないことに気がつき、もっとリアルに自分たちを癒やしてほしくなったのではないかと私は考えました」
人々の身体を癒やすマッサージチェアやフィットネス機器が人気を集める中で、「人の精神をどう癒やすのかという点では、テクノロジーの活用が意外にも進んでいない。LOVOTがその1つの解になったのでは」(林氏)と話す。
海外メディアからのLOVOTへの反応は、2つの質問に大別されたという。「一体、何をするロボットなのか?」「LOVOTが取得した個人情報や家庭情報はクラウドに飛ぶのか?」という2つだ。
まず1つ目の質問に対して「基本的に何も人の代わりのような役立つ仕事はしません。犬や猫みたいなものです」と林氏が答えると、メディアの記者は総じて笑顔になった。さらにセキュリティを踏まえたもう1つの質問に対しては、エッジ(機器)側だけで機能は完結しているため安心だと答えた。
「何もしないことを堂々と主張すると“何もしないってどういうこと?面白いね”と(笑)。それからインターネットにつながなくても動かせることを伝えると“それは素晴らしい!”という話になって、その2つのステップを経て、“かわいい”とLOVOTを触ってくれました」(林氏)。
海外メディアでは、同氏の「LOVOTは役に立たない」という言葉を額面どおりに受け取ってはいなかった、と林氏は話す。
「役に立たない=バリューがない」という理解ではなく、「人の代わりに仕事はしなくても、ストレスの緩和や予防医療に使えそう」などしっかりとした存在意義があると認めてくれる記者が多かったという。「犬や猫の存在に合理性を求めている人たちだからでは」と林氏は話す。
ハイテクノロジーの福祉デバイスとしてすでに検証
「驚いたのは、福祉介護施設で認知症の方々にLOVOTを触ってもらったところ、入居以来その施設で一言もほかの入居者と会話をしていなかった人が、LOVOTに接した途端に隣の人と会話を始めたことです」
ヨーロッパでは多くの福祉テック系デバイスが普及しているが、認知症の患者でハイテク製品を怖がり、パニックや拒否反応を起こす人もいる。だが、特にその傾向が強い患者でもLOVOTを抱っこすると離さなかった。「ハイ・テクノロジーを表面に出していないLOVOTは、心理的な障壁ができにくい」と林氏は語る。
とはいえ、LOVOTに高い技術が詰め込まれてる点は間違いない。
すでにさまざまな媒体でそのテクノロジーは触れられているためそのすべてには言及しないが、特にLOVOTの「声」について林氏は雄弁に語った。
「録音した音声を再生するのではなく、リアルタイムに音を生成しています。生成プロセスも、喉や鼻の通り道の効果をだすシミュレータを介しており、その鼻孔や喉のサイズなどによって、声に個性が出るように工夫を凝らしています。感情(LOVOTの内部状態を表すパラメーター)によって声色が変化し、同じような音が出ているように聞こえても、毎回少しずつ違っています。それから、一番のポイントは(声を出しても)“人の言葉をしゃべらない”ことです」(林氏)
【次ページ】LOVOTがあえてノンバーバルなコミュニケーションを選んだワケ
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