- 会員限定
- 2019/06/25 掲載
CASEで一気に増えた「車載カメラ」、ハッキングされる危険性は?
車両のセンサーとしてのカメラ
ミリ波レーダーは、夜間や霧などカメラの性能が発揮しにくい状況、あるいは200メートル前後の中距離レンジのセンサーとして衝突予測の精度を上げるために有利とされている。LiDARは近距離だが対象の形状を把握できるため、レベル4以上の自動運転や無人カーの実現に不可欠ともされている。
ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:高度安全運転支援システム)機能搭載車やCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)時代の車において、カメラ、ミリ波レーダー、LiDARはセンサーの三種の神器といってもいい存在だが、ここにきて「カメラ一択」という車両も増えている。その理由は、画像処理・画像認識技術の向上とコストの問題だ。
LiDARは機構も複雑で、なかなかコストが下がらない。空間をスキャンするため、低速移動の無人カーなど用途を限定した車両には採用しやすいが、市販車両ではコストの割には活用場面が限られてしまう。ミリ波レーダーはLiDARほど高価ではないが、カメラほど安価ではない。JNCAP等の予防安全機能アセスメントでも、カメラのみとレーダー併用との性能差はほとんどない(評価方法がレーダーに有利でないという見方もあるが)。
これらの理由から、高価なセンサーで多重化するより、カメラを複数台使った多重化が1つのトレンドとなっている。
たとえばTuSimple(トゥーシンプル)というレベル4の自動運転トラックを開発している米国企業は、短・中・長距離の3レンジのセンシングを3つのカメラで行っており、実際にUSPS(アメリカ合衆国郵便公社)の郵便貨物を運びながらの走行実験を実施している。
イスラエルの企業モービルアイをはじめとして、後付け可能な画像認識AI(学習済みの機械学習モデル)内蔵のカメラモジュールも、一般に販売されている。
自動運転やパーソナライズとしてのカメラ
それ以前に、アラウンドビューモニターやインテリジェンスミラー(ルームミラーおよびサイドミラー)など、複数カメラを搭載した車両はすでに珍しくない。しかし、自動運転で今後搭載が進むとされているのが、車内カメラだ。車両内部で、ドライバーや乗員を認識するためのカメラは、主に商用車(バス・トラック)の運行管理システムの一機能として利用されることが多い。ドライバーの居眠りや脇見、集中力低下、発作などをカメラで検知し警報や緊急停止を行う。あるいは、従来からあるタコグラフの延長で、画像情報を記録するためのカメラも普及している。タクシーなどは、防犯のため後席監視カメラを設置することが増えている。
このトレンドを乗用車や自動運転車両に広げる動きもある。スバルは、キャビン監視のカメラでドライバーの健康状態監視機能に加え、顔認識によるパーソナライズ(シート位置やエアコンの設定温度など)機能を実用化している。
これらのカメラはドライバーの顔だけにフォーカスするのではなく、キャビンを広く撮影できるようにし、将来的にはドライバー以外の認識にも拡張できるようになっている。高度なパーソナライズ機能に加え、高度な音声認識やAIエージェントにも利用可能だからだ。
車両側がドライバーや同乗者の状態を把握することは、自動運転においても必須だ。レベル4以上の自動運転では、車両の制御を人か車のどちらが持っているか、どのタイミングで受け渡しをするのか、どのような通知や警報が必要かの研究が進んでいる。自動運転中、車両が対応できない状況を予想・検知したとき、いかに的確に人間に制御を受け渡すかは、実用化に向けた課題の1つだ。ドライバーをパニックにさせず適切に制御を引き渡すには、キャビン内の状況を常時把握している必要がある。
Webカメラ、IoT機器のリスク
自動車に搭載されるカメラは、増えることはあっても、おそらく減ることはないだろう。そして、そのいくつかはクラウドに接続されることも避けられない。ネットワークとしてはモバイル網やVPNなどを利用するとしても、クラウド接続は、ほぼインターネット接続でもあるという現実を忘れてはならない。いまどき、ボットネットは脆弱性のあるPCよりもWebカメラやルーター製品などIoT機器で構成されている。車載カメラも、なんらかの形でインターネットに接続されるサーバやPC以外の機器というくくりでは、IoT機器に分類される。そのカメラが、車の外ではなく内部のドライバーや同乗者を撮影しているとなれば、ハッキングや乗っ取りなどのリスクへの対策は必要である。
【次ページ】「顔」や「声」などの生体個人情報はどう守る?
関連コンテンツ
PR
PR
PR