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  • 2019/09/27

戦闘機グリペンを作るSAABも実践、アジャイル開発手法「スクラム」をスケールする方法

「Scrum@Scale」入門(前編)

アジャイル開発手法を実現する方法として、もっとも普及しているのが「スクラム」でしょう。スクラムを開発チームの単位で導入している企業は増えてきましたが、これをスケールさせる、つまりスクラムの手法を使って組織全体をより早く動かし、より早く価値を届けていくにはどうすればいいのでしょうか。そのために開発されたのが「Scrum@Scale」フレームワークです。スクラムをスケールさせる仕組みの背後にあるスケールフリーネットワークや、大きな組織でも迅速に情報を共有する手法が組み込まれた「Scrum@Scale」について、2019年2月に行われたイベント「Developers Summit 2019」で株式会社アトラクタの代表取締役 原田騎郎氏が説明しています。本記事ではその内容をダイジェストで紹介しましょう。

新野淳一(本記事は「Publickey」より転載)

新野淳一(本記事は「Publickey」より転載)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部 副編集長などを経て1998年退社、フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画、オンラインメディア部門の役員として2007年にIPOを実現、2008年に退社。再びフリーランスとして独立し、2009年にブログメディアPublickeyを開始。現在に至る。


Scrum@Scale入門

 原田と言います。アトラクタという会社でアジャイル会社のコンサルティングやコーチングをしています。

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株式会社アトラクタの代表取締役 原田騎郎氏

 今日はスケーリングの話をするわけですが。まずはちょっと面白いスライドを見ていただきたいと思います。

 これは権力の源泉についてのグラフです。昔むかし、農耕時代は土地を持っている人が強かった。ですが産業革命が起きると、今度は資本、お金を持ってる人が強くなる。

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権力の源泉

 そしていまは情報産業の時代。資産も土地も、権力の源泉としての価値は下がります。いまは知的労働力、知識や情報を扱うこと、新しい技術を生みだす人が強い。というのがいまのざっくりとした感触です。

 いまこの会場にいる皆さんはITシステムのデベロッパーで、知的労働力で、皆さんみたいな価値のある人をどうやって集めるかが大事になってきています。

エッジへ権限を委譲する時代へ

 2000年代に初頭に出た本「パワー トゥ ザ エッジ」(デヴィッド・S. アルバーツ、リチャード・E.ヘイズ著 東京電機大学出版局 2009年)という本が面白くて、これは米軍の組織をどうやって動かすかという話です。

 軍の組織の指揮命令系統は、トップが情報が集めてトップが判断をし命令を下すことで、トップの思い通りに組織が動くというのが目標でした。

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パワー トゥ ザ エッジ

 しかしこの本で言われているのは、現代では実はそんなことをしていたら間に合わない。何かあったときにいちいち司令部に問い合わせていたら間に合わない。だからエッジ、末端の実際に働いているところに判断の権限を委譲しないと、そういう組織を作らないといまの時代に動ける組織はできないよ、ということが書かれています。

 これが10年前でした。

 この話がこのあとどう動くか。こういう本があります。「米海軍で屈指の潜水艦艦長による『最強組織』の作り方」(L・デビッド・マルケ著 東京経済新報社 2014年)。

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「米海軍で屈指の潜水艦艦長による『最強組織』の作り方」(L・デビッド・マルケ著 東京経済新報社 2014年)

 著者のデビッド・マルケさんは潜水艦の艦長なのですが、指揮命令をしない艦長です。

 そしてここに書かれているのは「インテントベースドリーダーシップ」。意図を伝えることによるリーダーシップ。リーダーにどんな意図があるかを部下に伝えることで、潜水艦員が自律的に動けるようになる。

 例えば、艦長が方向を間違えて、海の深い方に行かなくちゃいけないのに間違えて陸の方に向かおうとすると、艦長それは方向を間違ってます、深い方に行きたいなら逆ですと潜水艦員が言える。

 いままでの軍隊では考えられない組織ですよね。いままではたとえ上司が間違ってもそれに従うのが常識でした。そういう組織の形が変わりつつあります。

そしてこの本が昨年出ました。「The Age of Agile」(Stephen Denning著 Amacom Books 2018年)、時代はアジャイルだ、という本です。

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アジャイル時代

 著者のスティーブ・デニングという人は、世界銀行で働いていたナレッジマネジメントの専門家です。

 この本が面白いのは、これがソフトウェア業界の人ではなく、ビジネスサイドにいた、世界銀行で働いていたすごい人が書いたということ。しかも私がメールで質問すると1時間で返事が返ってきました。だいぶアジャイルであることを実現している人です。

 彼が言っていることは、いま世界でうまくいっている組織はこの3つがあると。

 1つは顧客第一であること。2つ目は小さなチームたち。大きな組織ではなく、小さな独立したチームがそれぞれお客様に価値を届けられるようになっている。3つ目はネットワーク。チームのネットワークや情報のネットワークを使って仕事をしていること。

 これがこの本の結論です。翻訳をしたいなと思っているので、興味のある出版社さん、よろしくお願いします。

適切なチームの人数は?

 こういう話をするとすぐ出てくるのが、チームの人数の話です。

 アジャイルやスクラムをやっている人には、チームの人数は「5人くらいがいいよ」と私は言っています。

 この図は何を示しているかというと、コミュニケーションのパスです。5人だとパスの数が10くらいなのですね。これだけのパスを満たせば全員が知っている状態になる。

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チームの人数

 全員が知っている状態が作りやすいので、たとえ全員が同じ場所にいなくても同じ情報を知っているならだいたい同じ判断が判断が下せるはず。これが意思決定の速さにつながります。

 アジャイルチームの最大値は9人ですが、スクラムの場合は9人だとだいぶつらいです。

 まあこの図を見ると、5人から多くても7人くらいがいいかなと思います。

【次ページ】戦闘機グリペンが半年に1回アップデートできる理由

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