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- 2016/11/22 掲載
「中国製造2025」とは何か? 中国版インダストリー4.0による製造改革の可能性と課題
#3DEXPERIENCE
中国製造2025「5つの基本方針」と「4つの基本原則」
その計画は、具体的かつ明確だ。「5つの基本方針」と「4つの基本原則」に則って、2049年までにやるべきことを3段階で明記している。第1段階としては、2025年までに「世界の製造強国入り」を果たす。これが「中国製造2025」に相当する。次に、第2段階として2035年までに中国の製造業レベルを、世界の製造強国陣営の中位に位置させる。そして第3段階として、2045年には「製造強国のトップ」になるというものだ。
5つの基本方針には、イノベーション駆動/品質優先/環境保全型発展/構造の最適化/人材本位が掲げられている。中でも今回のカンファレンスで特にフォーカスされたのが、「イノベーション駆動」と「構造の最適化」だ。
製造改革に出遅れた、世界の工場「中国」
中国・上海で開催された仏ダッソー・システムズ主催イベント「Manufacturing In The Age of Experience」のパネルディスカッションには、中国工業情報化部(MIIT)情報担当次官のXiaopeng AN博士や、中国の再生可能エネルギー開発を手掛けるGuiYang Engineering Co. Ltd. Power China Group(中国电建集团贵阳勘测设计研究院工程)でデジタル部門CIOを務めるZuwen CHEN氏、北京蘇州航空宇宙ソフトウェア企業のチーフエンジニアを務めるHaicheng YANG教授、中国のIT分野に特化した投資会社Cybernaut Wisdom Investment(賽伯樂智源國際有限公司)でパートナーを務めるHao DU氏らが登壇した。MIITのXiaopeng AN博士は、「これまで中国は『世界の工場』と呼ばれ、世界第一位の製造規模を誇っていた。しかし、製造業のプロセス管理/オペレーションの最適化では、ドイツや米国、そして日本の後塵を拝していた」と指摘する。
中国は潤沢な労働力と低い賃金による「労働力労働密集型」の製造体制で、衣料品などの大量生産品の供給を支えてきた。しかし、今後は労働構造の転換を図り、ITやロボット、AI(人工知能)を活用した「技術密集型/知能的集合型」の産業にシフトする必要があると、AN博士は説く。その背景には、経済発展に伴う中国内の人件費の高騰や、「一人っ子政策」による労働人口の減少がある。
中国の製造業レベルはまだインダストリー「2.0」
中国政府は、中国製造2025の中で「製造業のイノベーション能力の向上」を戦略任務の1つとして掲げている。具体的には、企業を主体とし、官民学が一体となって「製造業イノベーション体制」の構築を推進したり、産業ごとにイノベーションチェーンを整備し、(財政・金融・人材などの)資源を適材適所に配置したりする。また、イノベーションのコアとなる技術研究を強化し、研究成果の産業化を促進することも戦略に掲げている。実際、2025年までに40カ所の「製造業イノベーションセンター」を設立し、3Dプリンティングやバイオ医薬などの分野の基盤となる技術開発/人材育成に注力するという。
【次ページ】中国製造2025を成功させるための課題は
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