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  • 2019/12/09 掲載

2025年には普及率67%、「5Gスマホ」市場はこう動く

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米国による華為技術(以下、ファーウェイ)の禁輸措置が続くなど、大きな変動を見せているスマートフォン市場。5Gの商用化が本格化している中で、同市場は今後どう変化していくのだろうか? 調査会社Counterpoint Technology Market Research(以下、カウンターポイント)のTom Kang氏が、2020年以降の市場予測やトレンドなどを解説する。
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Counterpoint Technology Market Research
リサーチディレクター テレコム業界担当
Tom Kang氏

スマホ市場は2年連続でマイナス成長、2020年以降は好転

 2018年、グローバルにおけるスマートフォンの売上高は4,000億ドルを超え、年間2億台が出荷された。順調に拡大を続けてきたこの巨大な市場が2018年、前年比でマイナス成長を記録した。2019年も引き続きマイナス成長となると予想されている。

 テクノロジー・メディア・通信業界に特化した調査会社・カウンターポイントでリサーチディレクター テレコム業界担当を務めるTom Kang氏は「さまざまな理由が考えられるが、最大の要因は米中の貿易紛争だ」と断言した上で、「しかし、2020年以降は再びプラス成長を見込んでいる」と話す。

 市場を成長させる1つの要因が「5G(第5世代移動通信システム)」だ。特に巨大市場である中国で5G市場が立ち上がることで、2020年以降はプラス成長に好転すると予測している。

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グローバル市場のスマートフォン売上高推移・予測
(出典:講演資料より)

米中貿易戦争とファーウェイショックの影響は?

 Kang氏は「2025年がファーウェイの禁輸措置における非常に大きなポイントになると考えている」と説明する。

 現在、中国政府は「中国製造2025(Made in China 2025:MIC2025)」という成長戦略を掲げ、2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目指している。半導体や航空機、宇宙航空、産業向けロボットなどが重点分野だ。そのどれもが米国が覇権を握りたい分野であり、米国にとっては好ましくない状況になりつつある。その流れを受けて、米国のトランプ政権が中国のファーウェイの通信機器の採用を安全保障上の理由から認めず、欧州や日本などにも同社排除の圧力をかけているのは周知の通りだ。

 「ファーウェイの措置は、両国の戦いの始まりにすぎない」とKang氏。2019年10月には、安全保障上で問題がある団体を列挙した「エンティティー・リスト」に、ドローンメーカーであるDJIや監視カメラを手掛ける杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などのテック企業8社が追加されている。背景には、ムニューシン米財務長官、ライトハイザー米通商代表などの米国政治家が中国成長を恐れているという事実があるとKang氏は指摘した。

 ファーウェイの地域別の出荷状況を見てみると、約半分が中国国内、残り半分が欧州を中心として出荷されている。主要な製品は100ドルから300ドルの間の価格帯のものだ。「2019年後半は下降傾向が予想されるが、年内は持ちこたえる」とKang氏は予測する。

 2019年第4四半期(Q4)の予測としては、中国国内のファーウェイの出荷シェアが50%から60%近くまで上昇し、欧州での売り上げがゼロになると見ている。グーグルが提供する主要ソフトウェア「Google Mobile Service(GMS)」のファーウェイでの使用が不可能となったことが原因だ。

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2019のQ4には、ファーウェイのほとんどが中国国内への出荷となると見込まれている

 Kang氏は「多くの関係者がファーウェイの輸出禁止は今後なくなっていくだろうと予測している。だが、我々はファーウェイが大きなビジネスの変革を起こすまで(禁輸は)続くと考えている」との見解を示す。その上で「ファーウェイの禁輸措置で一番影響を受けている企業は、サムスンだ」と説明する。サムスンは南米諸国を中心にファーウェイの市場を脅かし、売り上げを伸ばしていくという。

インドやベトナムを次の製造拠点に移したい米国

 Kang氏は、米国の対応は1980年代の対日施策にも類似していると指摘する。「あくまで米国が中国を規制しようとする最初のステップにしか過ぎない。次の行動として、中国をWTO(世界貿易機関)から外すという動きも想定される」とKang氏。現在、WTOの紛争解決の役割は機能不全の危機に陥っている。米国がWTO上級委員会の委員任命を拒否しているためだ。2020年以降、米国の資本が中国に、または中国企業がウォールストリートに進出することが禁止になる可能性もある。

 さらに米国の製造基地の移転も進むと予測されており、米国はインドやベトナムを、中国の次の製造拠点にしようとしているという。また、アップルやサムスンはインドを輸出のハブ拠点として位置付けており、アップルは欧州への、サムスンはスリランカやパキスタン、ネパールなどへの輸出ハブとしてインドを活用していると指摘する。

 ただ、Kang氏がヒアリングしている企業の間では、まだ中国にコスト・アドバンテージがあるという。

「インドやベトナムの労働力は中国よりも安いが、中国にはサプライチェーン全体がそろっている。サプライチェーン全体をほかの国が持たない限り、生産費用は中国のほうが安いということになる。加えて、インドでは停電が起こったり、道路が整備されていなかったり、インフラ部分に課題がある」

【次ページ】5Gスマホ市場の覇権を握るメーカーは?

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