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  • 2019/12/18

「記憶の底に残る」香りビジネス、オフィスや病院、式場でどう活用できるのか

古くからお香の文化を有してきた日本だが近年、商業施設にもアロマが取り入れられるなど、香りの活用シーンは個人の趣味の範囲を超えて広がりを見せている。今、最新の香り市場はどのような可能性を持つのか。日本香堂ホールディングス 特別顧問 稲坂 良弘氏、正プラス 代表 稲本 正氏、コードミー CEO 太田 賢司氏が意見を交わした。メインファシリテーターを外務副大臣の鈴木 けいすけ氏が務めた。

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(左から)黒田 有彩氏、鈴木 けいすけ氏、稲坂 良弘氏、稲本 正氏、太田 賢司氏、野上 隆徳氏

業界内の陣取り合戦から香りのオープンイノベーションへ

 ゲストパネリストとして参加したのは、異なるアプローチで香りに携わる3名。劇作家でもある稲坂 良弘氏は室町時代から続く伝統文化、香道との出会いから日本の香の文化を世界に発信。稲本 正氏は工芸家として飛騨高山を拠点に活動する中で、植物の持つアロマの可能性を見いだし、精油ブランド「yuica」を設立。太田 賢司氏は香りのスタートアップ企業を立ち上げ、「香り×テクノロジー」の力で新しいライフスタイルの創造、地方創生に取り組んでいる。ファシリテーターは鈴木 けいすけ氏とともに、イグニション・ポイント 執行役員兼CSO 野上 隆徳氏、タレント 黒田 有彩氏が務める。

 最初に、野上氏から今回のディスカッションのテーマとして「香りの可能性」が発表された。太田氏は、「これまで日本における香りのビジネスは限られていて、どの香りが採用されるかという業界内の陣取り合戦になっていました。ですがオープンイノベーションなどにより、香りはもっと面白くなる可能性を秘めているんじゃないか」と語った。

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コードミー
CEO
太田 賢司氏

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外務副大臣
鈴木 けいすけ氏
 日本では欧米などに比べ香水の利用者が少ないが、歴史をひもとけば「源氏物語」に登場する女性が香りとともに描かれるなど、日本もまた香りとの縁が深かったことがわかる。鈴木氏は、「香りは日本でも昔から大切にされてきた文化。これまでの伝統を踏まえながら、現代のあまり香りがない日本社会において、今後どのような発展をしていくんでしょうか」と投げかける。

 ディスカッションの中で香りの可能性の1つに挙げられたのは、記憶との関係。この点について、実は「源氏物語」にもヒントが隠されているという。主人公である光源氏が薄衣に付いた香りから一夜の恋人である空蝉に想いをはせるシーンがある。稲本氏は現代ではそうした香りと記憶の関係性が明らかになりつつあると語る。

「香りは脳の中心部にある海馬や視床下部に直接作用することがわかってきました。香りが言葉で表しにくいのも、言語中枢とは離れたところに届くから。だけど、一番記憶の底に残るんですよ」(稲本氏)

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正プラス
代表
稲本 正氏

香りを「記憶を引き出すツール」として活用した例

 稲坂氏も、「香りというのは記憶を引き出すツール」と同意する。名刺用フレグランスの例を挙げ、「平安時代の貴族たちは自分の香りを持ち、自己表現として使っていました。現代のビジネスシーンでも使われるようになると、さまざまな場面で香りから人や話が思い起こされ、つながっていくんじゃないか」と、コミュニケーションツールとしての有用性にも言及した。

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日本香堂ホールディングス
特別顧問
稲坂 良弘氏

 一方、太田氏は香りと記憶との関係を利用して体験型のコンテンツに香りを取り入れる、エンタメ分野での取り組みを紹介。

「音楽アーティストと一緒に、曲に合わせて香りを創作するなどしています。空間を香りで演出して共感覚で楽しんでもらうとともに、香り付きパンフレットの配布やフレグランスの会場販売などを通じて、帰宅後も感動をよみがえらせるというチャレンジです」(太田氏)

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タレント
黒田 有彩氏
 体験型の一例として黒田氏も、「最近はアロマを使ったプラネタリウムの番組も増えていますね」と言及。続いて、稲本氏からは名家の結婚式での活用例が紹介された。家をイメージした香りをつくり、招待状、当日の会場、お土産に同じ香りを使ったという。招待客は繰り返し同じ香りに触れることになるため、その家を強く印象づけることができる。

「結婚式にはビジュアルや音は活用されてきましたが、香りは全然なかったわけですよ。そこに香りをプラスすることにより、ビジュアル、音、香りがくっついてより記憶に残るじゃないですか。今はそういうトライアルがずいぶんされています」(稲本氏)

令和は個人に合わせて香りをカスタマイズする時代

 ここで、個性に合わせて香りを持つという可能性に対し、鈴木氏から「人それぞれ体臭がありますよね。香りには、体臭に合わせたベストマッチというものがあるんですか」と疑問が提示される。

 欧米などで香水がよく使われるのは、体臭を消すためでもある。これに対し、稲本氏は体臭が少ないという日本人の特性を挙げ、比較的香りを自由に選べることを示す。さらに太田氏からは、香りを打ち消すという「マイナスからゼロ」の考えから、「ゼロからプラス」へと業界のトレンドが変化していることも語られた。

「これまで香りの業界では100人中80人が好む香りをいかに見極めてつくるのかが求められていました。でも、これからの時代は人それぞれ、シーンによっても求められる香りが変わって来るので、カスタマイズしなければいけないと考えています」(太田氏)

 「将来的には自分が落ち着く香り、元気になる香りを知っていれば一番いいですよね」と鈴木氏。天然の香り成分には膨大な種類があり、中には分析技術が向上した今も人の嗅覚でなければ検知できない物質もある。これが明らかになっていくことで香りの組み合わせは一気に広がる可能性もある。

【次ページ】ビジネスのオンオフを香りでコントロール?

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