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  • 2020/03/11

飲食現場で進む自動化の行方、問われる「ロボットの使い方」

森山和道の「ロボット」基礎講座

人手不足と人件費上昇、技術向上とロボットアーム価格の下落がマッチし始め、ゆっくりとしたペースだが、不可避かつ不可逆の流れとして労働集約な現場の自動化が進行中だ。多くの対象領域の1つが「食」の現場だ。食品工場やセントラルキッチンは言うに及ばず、外食店舗の店頭でも自動調理機器とロボットが使われる時代が到来しようとしている。2月12日から14日にかけて行われた「第54回スーパーマーケット・トレードショー2020」、そして2月16日から19日に行われた「国際ホテルレストランショー (HCJ2020)」の2件のレポートも兼ねて今回は調理ロボットの話をしておきたい。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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    ロボットによるおもてなし

     ロボットが活躍できる場所は、要するに労働集約な現場だ。まだまだ多くの作業現場が人海戦術に頼っている。たくさんの人を集めて、彼らの目と手でひたすら作業することが前提で作られている現場があちこちにある。それらを自動化するときに、各種の専用自動機械の間をつなぐものとしてロボットが使われ始めている。
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    QBIT Roboticsのロボットカフェ

     「調理とロボット」という話だと、必ず名前が挙がる2つのスタートアップがある。QBIT Roboticsとコネクテッドロボティクスだ。

     QBIT Roboticsはユニバーサルロボットやソウヤーなどの協働ロボットを使って、コーヒーやビール、ちょっとしたスナックを提供するロボットを展開している。

     「スーパーマーケット・トレードショー2020」ではUCCのブースで、コーヒーとワッフルを提供する「ロボティックカフェ」を出展し、「国際ホテルレストランショー 」ではサービス産業向けの「次世代技術EXPO」コーナーのRobiZy(NPO法人ロボットビジネス支援機構)ブースの一角で、富士通と組んでやはりカフェサービスを行っていた。治具を使ってホイップクリームをワッフルにかけたり、電子レンジのタッチパネルを操作したりすることもできる。

     QBITロボティクスのロボットの特徴は、モニターがついていて、そこで顔を表示していることだ。同時に来店者の顔認識を行っており、年齢や性別に応じた声がけによる客引きを行う。ロボットによる提供サービスだけではなく、愛嬌(あいきょう)をもたせている点が特徴である。

     コーヒーを飲んだりビールを飲んだりする目的は、単に喉を潤すことだけではない。ほっと一息するような時間を提供しているのだという考え方が背景にはある。人前に出るロボットは便利だけを追求すればいいわけではない。

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    HCJ2020での富士通+QBITロボティクスによるロボカフェ

     なお同社のロボットは「変なカフェ渋谷」でコーヒーを提供するほか、池袋の養老乃瀧「一軒め酒場」内で、「ゼロ軒めロボ酒場」としてビール提供を3月19日まで行っている。注文が入るたびにロボットがビールやスコッチハイ、レモンサワーなどをつくって提供する。価格はいずれも500円だ。行けば見られるので興味がある方はぜひ行ってみてほしい。

    調理だけでなく食洗作業もロボットで

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    タニコーブースでのコネクテッドロボティクスの食器洗浄ロボット

     イトーヨーカドー幕張店「ポッポ幕張店」に導入されたたこ焼きロボット「オクトシェフ」や、ソフトクリームロボットで知名度を上げているコネクテッドロボティクスは「国際ホテルレストランショー」では厨房(ちゅうぼう)機器メーカー2社への製品供給・デモのほか、RobiZyブースの横で8小間を使ってフードコート風の単独出展を行った。なおコネクテッドロボティクスもRobiZyの会員企業の一つだが、あえて単独ブース形式で出展していた。

     出展したロボットはすでに製品化して販売中のたこ焼きロボット(初期費用300万円+月額20万円、自動たこ焼き機は別途)やソフトクリームロボット(初期費用50万円+月額6万円、ソフトクリームサーバは別途)のほか、ビール提供ロボットやコンビニ向けホットスナックロボットなどを含む6種類。

     彼らの今回の売りは、そばロボットとどんぶり食洗ロボットである。そばロボットは、そばをゆでて、ぬめりをとるために洗い、冷水で締める作業を自動化したもの。1時間あたり40食を作ることができ、JR東小金井駅の「そばいち」にて実証実験を行う予定となっている。


     どんぶり食洗ロボットは東京農工大学の水内研究室との共同研究で開発したもの。壁面設置型にした2台のロボットアームを使い、マーカーレスで平置きされたどんぶりや皿を認識して吸引ピックし、シンクの回転ブラシで予洗い後に食洗機へ投入。洗い終わったらラックから食器ごとに並べていく。ハンドはこのロボット用に新規製作したオリジナルだ。


     30分で約20~30人分の食器を洗浄可能だとしており、こちらは、ファミレス「和食さと」や天丼屋「さん天」などを展開するSRSホールディングス株式会社傘下の店舗で実証されることが決まっている。

     同じロボットはタニコーのブースでも出展されていて、こちらも実際に販売している。ロボットを使うためには厨房内に一定の容積が必要になる。そのため、郊外にあるような中規模くらいの店舗での活用を想定しているという。

     いっぽう狭い厨房を対象にした省スペース化も並行して狙っていて、コネクテッドロボティクスのビール提供ロボットは安価な協働ロボット(UFactoryの「xArm」)を天づりにしてビールサーバーを操作するかたちで出展された。xArmについては、取りあえずどの程度使えるかどうか試してみたものだという。


     このほか、ソフトクリームロボットの「レイタくん」はこれまでの犬型のほか恐竜型のタイプも出展。注文機と連動して動けるようにした。つまりソフトクリームだけなら、ほぼ無人で提供できるシステムとした。ソフトクリームを受注して巻いて提供する作業から人手が解放される。


     なお食器洗い機との連動はロボット化が期待されているタスクで、HCJ2020では、「ロボットによる持続可能な食インフラを創る」を掲げるスタートアップのTechMagicが業務用厨房機器大手のフジマックのブースで洗浄機自動化ロボット「finibo(フィニーボ)」のデモを行った。コンベヤー上を流れてくる洗浄済みの食器を種類ごとに積んでいくというものだ。大型の食堂などでの利用を想定して開発を進めているとのこと。


    食品工場でロボット活用が進まない理由

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    ロボットフードコードを模したコネクテッドロボティクスのブース

     少し話はズレるのだが、以前から自動機器活用が行われている食品工場でのロボット活用がガンガン進んでいるかというと、そうでもないというのが実情のようだ。引き合いは多いものの、肝心の導入にまで至らない。なぜなら扱わないといけない対象物(つまり食品)があまりにさまざま多様であり、人のほうが作業速度が圧倒的に速いからだ。

     単一の作業だけならまだしも、いかに3Dセンサーやディープラーニングで画像認識が良くなり、猛烈な高速で動けるパラレルリンクアームを用いることができても、実際には肉のパック詰め作業1つ、なかなかどうしてロボットで代替するのは難しいというのが実情だ。ここの自動化を、ぜひ研究者たちに果敢に挑んでもらいたい。

     飲食店での活用の話に戻ると、安価な協働ロボットを使って速度は遅いが人手不足をカバーする小規模な店舗での活用を狙うのか、高速動作する産業用ロボットを使ってロボットが本来得意な大規模連続の現場を狙うのか。各社それぞれの狙いによって、利用シーンは異なってくる。

     もし、十分に速度が出せ、連続したタスクが現場にあるのならば、人と作業領域を切り分けてしまって、産業用ロボットを使うほうがいい。だが、バックヤードもそんなに広くないし仕事は不連続にしか発生せず、むしろ多少遅くて0.8人分程度の働きしかできないが人と共存できて安いほうが入れやすいということなら協働ロボットの活用が現実的だ。

     おそらく将来は、産業用ロボットと協働ロボット両者の使い分けが業界内である程度こなれてきて、どの現場では両者をどう切り分け/組み合わせて使えばベターなのかといったナレッジも蓄積されるだろう。しかし現状はまだその段階にはない。ノウハウを蓄積するためにも、まずは現場で使ってみて、課題を洗い出しながらメーカーと一緒に「使い方の開発」を進めてくれるプレーヤーが、業界の行方の鍵を握る。

    【次ページ】飲食現場でもロボットは使い方次第、すでにプラットフォーマー争いは始まっている

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