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  • 2019/01/25

「サービスロボット」の意外な盲点、なぜ小売や物流でロボットを生かしきれないのか

ロボットの話題は一般に、製造業向けの話と、サービス業(非製造業分野)向けの話に二分される。だが、サービス分野でのロボット導入と、製造業分野でのロボット導入との間の線引きは、それほど明確ではない。技術導入という視点で見ると、両者の間はそれほど離れていないし、むしろ、非製造業の現場をいかに製造業の環境に近づけるかがロボット導入成功の鍵を握るといえる。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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「第3回ロボデックス」に出展されたダイアディックシステムズのスカラ型の協働ロボット「DSR02-400」。可搬質量2kg、動作半径400mm、ダイレクトティーチングできる。価格は98万円。


製造業と非製造業のロボット導入を線引きしないほうが良い理由

 ロボット活用において、なぜ製造業とサービス業(非製造業分野)の間の線引きを明確に考えないほうがいいかというと、理由はいくつかある。

 まず第1に、ロボットはやっぱり基本的には製造業向けの技術なのだ。「非製造業分野」と一言でいっても、小売・物流から飲食、受付案内、さらには農業その他まで多種多様だが、ロボットならではの仕事をさせたいのであれば、物をA地点からB地点に動かすということになるだろう。そうなるとどんな形であれ、これまで産業用分野で培われて来た技術を用いるほうがリーズナブルだ。

 いやむしろ、すでに製造業で使われて実績のある技術や製品群を「この作業ができるなら、うちでも使えるのではないか」という目で見直して、サービス分野でも活用できそうな技術をいかに発見するか、ということに力を入れるほうが現実的だ。



 たとえば本連載で以前取り上げた、シタラ興産の自動産廃分別ロボットはその一例だ。扱っているモノと領域はまったく違うが、ここで使われているロボットの作業は、製造業分野でしばしば見かけるものと基本的に変わらない。



 第2に、ロボットには、ロボットが動きやすい環境が必要だからだ。ロボットは「半完成品」である。周辺機器と一体にならなければ力を十分に発揮できない。よって非製造業分野だろうが何だろうが、環境整備のニーズは変わらない。

 むしろ、非製造業分野でロボットを導入するということは、部分的に製造業の環境、要するに「工場」のような環境を実現することだと考えてしまったほうがいい。規模はごくごく小規模な、デスクトップサイズかもしれないが、部分的に工場のような環境を作ってあげることができれば、ロボットは存分にその力を発揮できる。

 たとえば、治具や仮置き台が使えるなら使ったほうがロボットの動作は楽になるし、画像認識させたいなら照明環境を、音声認識させたいなら音響環境はきちんと整えたほうがいい。

 サービス業の現場においては環境全部をいじることは不可能だろうから、ポイントとなる、ごく一部分だけでもいい。そのようなポイントをいかにうまく押さえて、工夫して、環境に溶け込ませるかがサービス分野でのロボットの導入の成否を決める。技術面でもコスト面でも運用面でも、これは言えると思う。

 第3に、これがもっとも重要なことだが、非製造業分野でもロボットを入れるのであれば、製造業分野にロボットを入れるときと同じ導入・プロセス改善のノウハウが使えるはずだし、そもそも、ニーズ自体にも共通点が多いはずだ、ということだ。

 人手不足、生産性向上、設備の稼働率の向上、省スペース化、少量多品種への対応、商品管理、トレーサビリティの確保などなどだ。これらがロボットを入れたい現場のニーズのはずであり、その点において、製造業と非製造業の違いはない。どこも困っていることは同じなのだ。



「環境を工場に近づける」ということ

 では、そもそも「工場」とはどういう場所なのだろうか。改めて考えてみよう。工場は、目標がはっきりしている。特定の生産物をできるだけ効率よく製造するために各作業は分解されていて、手順どおりに物事を運べるように機材も人もレイアウトされている。だから改善するべき課題も、比較的、明確だ(実際にはそうでもないことも少なくないので、IoTによる可視化などが注目されているわけだが、今回はその話は横に置いておく)。

 いっぽう、非製造業分野では必ずしも業務がうまく分解されているとは限らない。むしろ、一人の人が複数の作業を分担しているだけでなく、一つの作業を実行している間に別の作業が割り込むことも多い。動線の整理も不十分な現場が少なくない。そもそもタクトタイム(工程作業時間)が重視される工場と異なり、一つの業務に、どのくらいの時間がかけられているのかについてあまり分析がなされていない。そのため、どこをどう改善すればいいのかが不明確だ。

 ロボットを含む自動化機械を導入するためには、これらの課題を整理しなおす必要がある。それは、言い換えると、環境を工場に近づけるということである。

 いま、非製造業分野のなかで、もっともロボット導入が進んでいるのは物流分野だろう。物流分野でのロボット導入が進んでいるのは、環境を工場に近づけやすいからだ。3Dビジョン技術とリアルタイムのモーションプランニング技術の組み合わせによって、多様な対象物をロボットが扱えるようになったからという技術的な理由もあるが、それ以前に、物流分野では労働環境を工場に近づけやすいのである。



 一方、小売や外食の現場には、工場とは大きな違いがある。現場のなかに作業者だけではなく、消費者も入って、入り交じって活動することが前提とされているからだ。

 これは裏返すと、消費者と労働者が混在しないところ、すなわちバックヤードならば、もっと効率化が容易なのではないかと考えやすいということでもある。いくつかの外食産業の現場で、キッチン内部の皿洗い機への投入にロボットを検討してみたり、搬送に使ってみたり、また小売現場において終業後の棚卸しにロボットを活用しようという試みが進行しているのは、このような理由による。まずは作業者だけの環境に絞り込んでロボット化を進めようと考えるのは当然だ。



【次ページ】サービスロボット活用でなぜか抜けている観点

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