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- 2020/08/13 掲載
「ソーシャルリスニング」でいま何がわかる?プロが語る海外SNS事情
「ソーシャルリスニング」とは何か
丸野氏が代表を務めるソリッドインテリジェンスは、世界の主要な国・言語に対応したソーシャルリスニング、海外インフルエンサーマーケティング、海外市場調査、訪日インバウンド、および海外進出アウトバウンドコンサルティングなどのサービスを提供している。中でも近年は「ソーシャルリスニング」に力を入れる。ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディア上で一般の人たちが自発的に発信している生の声をデータとして収集し、それらを調査・分析することで、業界動向を把握したりマーケティングに生かしたりする手法である。「思いもよらぬ発見ができることがソーシャルリスニングの長所だ」と丸野氏は語る。
ソーシャルメディアというと、TwitterやFacebook、Instagramが連想されるかもしれないが、「世界で使われているソーシャルメディアはローカルなものも含めると数千、数万にも及ぶ」と丸野氏は説明する。「そんなにもあるのか」と思うかもしれないが、たとえば日本でも各種SNSのほかに、アメーバブログやライブドアブログ、5ちゃんねる、ヤフー掲示板、さらにはトリップアドバイザーのようなバーティカルな掲示板が存在する。
ソリッドインテリジェンスでは、それらの幅広いソーシャルメディアのデータを可能な限り収集。その国で在住経験があり、文化を理解しているアナリストが調査・分析を行う。対応言語実績は15以上に及ぶ。
タイで有益な情報が掲示板に書き込まれる理由
グローバルで普及している主要SNSに限らず、幅広いソーシャルメディアから情報を収集できるようにしているのには、理由がある。第一に、目的によってモニタリングしたり、分析したりするメディアを変える必要があるためだ。「たとえば情報を拡散したい場合は、どういうアカウントが拡散に寄与しているのか、またどういう仕掛けをすれば拡散が進むのか、Twitterを中心に調べます。広報効果の測定であれば、発信したニュースについてどんな話をしているのか、その国の人が普段よく使うSNSを分析します」(丸野氏)
カスタマージャーニーのフェーズによっても分析するメディアを変えるという。「興味、関心」フェーズの分析であれば、Twitter、「検討」フェーズではバーティカルな掲示板などが分析の対象となる。
第二に、国ごとに強いメディアが異なるためだ。
「日本や米国では個人の情報発信ツールとしてTwitterがよく使われていますが、中国はWeibo(ウェイボー)というSNS、韓国はNAVER内のブログやカフェ(コミュニティ)の情報、タイではPantip(パンティップ)、台湾はPTTという掲示板がよく使われていています。またロシアではVK(ブィーケイ)というFacebookによく似たSNSが使われています」(丸野氏)
なお、国ごとに見られる特徴として、日本のソーシャルメディアでは匿名が中心。その上、「ネタツイートなどの(検索や集計の邪魔をする)“ノイズ”が多く、調査目的によっては、正直ソーシャルリスニングはやりにくい」(丸野氏)。
一方で海外のソーシャルメディアは日本に比べ“ノイズ”が少ないため、ソーシャルリスニングがしやすいという。
たとえばタイのパンティップの場合、上級アカウントの作成には個人のナショナルIDの認証が必要である。しかも個人情報の公開のレベルによって提供されるサービスが変わり、たとえば匿名ユーザーは閲覧や簡単なQ&Aの書き込みしかできないが、ナショナルIDでの認証を受けたユーザーは画像の投稿ができたり、EC機能まで利用できる。誹謗(ひぼう)中傷を繰り返すアカウントも厳しく管理される。厳格なユーザー管理が、正しく有用な情報を守る仕組みとなっている。
【次ページ】海外展開でのリスク軽減、コロナ禍でオンラインの口コミがさらに重要に
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