• 会員限定
  • 2020/04/02 掲載

【解説】トヨタのモビリティ戦略、なぜクルマ以外に注力するのか

連載:MaaS時代の明日の都市

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
トヨタ自動車が目覚ましい勢いで進化をしている。3月24日にNTTとの資本業務提携の合意を発表。ソフトバンクとのタッグ、MaaSアプリの開発、定額制やシェアリングの導入に加え、まちづくりにも乗り出そうとしている。「クルマを作る会社」だったトヨタは、なぜ「モビリティカンパニー」に変貌しようとしているのか? 現時点での具体的な動きを紹介しながら考えていきたい。

モビリティジャーナリスト 森口 将之

モビリティジャーナリスト 森口 将之

1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社編集部を経て1993年にフリーランスジャーナリストとして独立。国内外の交通事情・都市事情を取材し、雑誌・テレビ、ラジオ・インターネット・講演などで発表。2011年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティやまちづくりの問題解決のためのリサーチ、コンサルティングを担当する。著書に『MaaSが地方を変える 地域交通を持続可能にする方法』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『富山から拡がる交通革命』『パリ流環境社会への挑戦』など。

画像
トヨタの戦略を解説しよう
(Photo/Getty Images/David Becker/特派員)


「100年に一度の大変革」の意味

「自動車業界は『100年に一度の大変革の時代』に入っている」。2018年、トヨタ自動車の豊田章男社長はそう語り、トヨタを「クルマを作る会社」から「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすると表明した。同年初め、米国ラスベガスで開催されたCES(家電見本市)では、「e-Palette Concept」と呼ばれる箱型の移動・物流兼用無人運転シャトルを発表した。

画像
2019年の東京モーターショーに出展した「e-Palette」の東京2020仕様
(写真:筆者撮影)

 10月にはソフトバンクとの提携を発表し、共同出資でMONET Technologies(以下MONET)という新会社を設立すると発表。翌月には福岡市でスマートフォン向けモビリティサービス「my route(マイルート)」の実証実験を始めた。

 さらに同月にはサブスクリプション(定額利用サービス)の「KINTO(キント)」を発表し、翌年2月に導入すると、2019年10月には販売店とレンタカー営業所でカーシェアリングサービス「TOYOTA SHARE」を開始。翌月にはキャッシュレス決済アプリ「TOYOTA Wallet」の提供を開始した。

 そして2020年1月のCESでは、自動運転やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、ロボット、AI(人工知能)技術などを導入・検証できる実証都市を「Woven City(ウーブンシティ)」と名づけ、2021年に着工すると発表した。

画像
2020年のCESで発表した「Woven City」
(出典:トヨタ自動車プレスリリース)

 さらに、3月24日、NTTとの業務資本提携の合意を発表した。実は、両社のタッグは初めてではなく、2017年からコネクテッドカー分野で協業していた。今回の提携は、上述の「Woven City」が主な目的のようだ。合意発表の共同会見で豊田社長は、モビリティカンパニーにフルモデルチェンジするために、社会システムの根幹を担うNTTとの提携は「必要不可欠であり、ある種、必然であった」と語った。

関連記事

年表:始まりは2009年

画像
トヨタのモビリティカンパニーへの道
(素材出典:トヨタプレスリリース)

 いずれも、10年前のトヨタでは想像すらできなかった動きだ。最近の自動車業界は「100年に一度」というほど激動の連続であり、トヨタがここまでの改革に乗り出したのは、クルマ作りだけでは生き残れないという危機感があるからだろう。

 発端は2009年にあったと考えている。この年、Googleが自動運転車の研究開発をはじめ、ライドシェアというサービスを発明したUber Technologiesが生まれた。

 Googleはその後、自動運転部門をWaymoとして独立させ、FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)やジャガー・ランドローバー、そしてルノー・日産グループと提携を結んだ。

 Googleの自動運転車両の実験走行距離は、トヨタを含めた他の会社を大きく引き離しており、米国ではすでに自動運転タクシーの商用サービスも始めている。

 Uberが手がけたライドシェアは、スマートフォンのアプリを用いてマイカーのドライバーと移動者(Uberではライダーと呼ぶ)をマッチングさせるという斬新なサービスを提供。その後、中国DiDi、シンガポールGrab、インドOlaなどが続々登場した。ちなみに、上記4社の筆頭株主になっているのはソフトバンクだ。

【次ページ】ライドシェアとMaaSの共通点、自前主義のトヨタが変わったきっかけ

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます