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  • 2020/02/28

トヨタは「2030年危機」をどう乗り越えるつもりなのか?

連載:テクノロジーEye

自動車の生産台数は2030年に向けて鈍化すると予測されている。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)による効率化や先進国の高齢化と人口減少による販売台数の減少が主な要因だ。そうした中だからこそ、日本産業界の雄であるトヨタ自動車(以下、トヨタ)の動向、グローバル戦略を分析することで、自動車メーカーが取るべき次のアクションが見えてくるはずだ。

自動車ジャーナリスト 高根 英幸

自動車ジャーナリスト 高根 英幸

1965年、東京都生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。理論に加え実際のメカいじりによる経験から、クルマのメカニズムや運転テクニックを語れるフリーランスの自動車技術ジャーナリスト。最新エコカーから旧車まで幅広くメカニズムを中心に解説を行っている。WEBでは『日経テクノロジーonline』(http://techon.nikkeibp.co.jp/)や「MONOist」(http://monoist.atmarkit.co.jp/)、『Response』(http://response.jp/)などに寄稿。近著は『カラー図解エコカー技術の最前線』サイエンス・アイ新書)。『図解カーメカニズム パワートレーン編』(日経BP社刊)日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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「東京モーターショー2019」プレスカンファレンスの様子。トヨタの豊田 章男社長は、MaaS(Mobility as a Service)として「e-Palette Concept」を用意する一方で、個人で運転や移動を楽しむためのEV(電気自動車)スポーツカー「e-Racer」を発表した。自動車の魅力をどういう形で訴求していくかは、トヨタに限らず自動車メーカーにとって大きな課題だ

SUBARUの子会社化に続き、スズキとの資本提携を結んだ理由とは?

 世界最大の市場である中国では、景気減速の影響を受けて自動車の販売台数は縮小傾向にある。そんな中、トヨタは「レクサス」や新型車を中心に売り上げが伸びており、比較的好調に推移している。

 しかし、自動車関連を中心にコンサルティングを行うIHSマークイットのシニアアナリスト、濱田 理美氏は「今後の市場動向を踏まえると、トヨタといえど1社で事業を展開するのは無理だと判断しているでしょう」と指摘する。その上で「最近の同社の動向には、目を見張るものがあります。これまでと比べると、体制の変化のスピードが速いことが特徴的です」と語る。

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IHSマークイット
シニアアナリスト
日本ビーグル・プロダクション・フォーキャスト
濱田 理美氏

 濱田氏が指摘する通り、2019年下半期の数カ月間でトヨタは矢継ぎ早に新たな体制へのシフトを進めている。すでに資本提携を結んでいたSUBARUについては、出資比率を増やして実質的に子会社化した。SUBARUの独自性がどこまで維持されるかにも注目されているが、独創的なメカニズムは強みにも足かせにもなる。しかし、トヨタの子会社となったことで経営面では安泰と言えるだろう。

 それよりも驚いたのは、2019年8月に発表されたトヨタとスズキとの資本提携だ。日本国内ではダイハツ工業(以下、ダイハツ)とライバル関係にあるスズキとの協業は、多くの業界関係者ですら予想していなかったことだろう。

 かつてスズキはGM(ゼネラルモーターズ)と提携関係にあり、その後、VW(フォルクスワーゲン)とも提携した。それぞれの思惑の食い違いから、その関係解消では訴訟問題まで発展した経緯がある。今回、トヨタとの提携を決めたのは、自社だけでは生き残れないという経営判断からだ。

 濱田氏は「スズキもこれから“守りの経営”を進めることになります。トヨタと資本提携を結んだのは、その第一歩と言っていいでしょう」と分析する。

 スズキの鈴木 修会長の引退後も同社が盤石の体制であり続けるために、トヨタとの提携を選んだというのだ。外資系企業であれば、同社が注力するインド市場を乗っ取られる心配もあるが、今のトヨタグループの体制であれば、スズキは独自のブランドイメージを保っていける可能性は高い。

 また、ダイハツとは競争領域を残しながらも協業できる分野を見出せれば、軽自動車やコンパクトカーなど商品力の高いモデルを低コストで生産することも可能になりそうだ。ダイハツにはASEAN(東南アジア諸国)市場を任せて、スズキは強みを持つインド市場に集中する。これにより、ASEANでの地盤をより強固にできる。

 濱田氏はトヨタの最新動向で注目すべき3つのポイントを挙げている。その1つ目が「全ての市場や領域を自社でカバーせず、事業内容を選択するようになった」ことだ。「自分たちが強みを持っている市場やセグメントに集中することで、これまでにない柔軟性が生まれています」(濱田氏)

「成長事業への集中」と「国内販売網の再編」

 2つ目の要素として、濱田氏は「成長事業への集中」を挙げる。そこでも、トヨタは思い切った動きを見せている。同社は現在、SUV(スポーツ用多目的車)の製品ラインアップを拡充する体制を整えている。その影響を受け、ニーズが高い「Cセグメント」のSUV市場が活況を呈している。

 先述したように、トヨタは中国でも数少ないプラス成長を遂げているブランドだ。北米・中国市場ではこれから生産台数を拡大する計画がある。濱田氏によると「中国では特に沿岸部の主要都市で強みを発揮しています。内陸部でのシェアは低いですが、まだ中国市場での伸び代も大きいと考えることもできます」という。

 現地生産に関しては関税や調達コストの問題もあり、さまざまな情勢から判断されることになる。トヨタは東日本大震災の発生後、国内産業の雇用を守るために東北地方に生産工場を立ち上げたほど、日本国内の経済も考慮している。ただ、同社が生き残るための成長戦略として、海外生産にも注力する必要があるのだろう。

 さらに濱田氏は「イノベーションの硬直化をどう防いでいるかにも注目すべきです」と指摘し、「硬直化を防ぐ施策としては、4つのチャンネルがある国内販売網の改革が挙げられます」と説明する。国内の販売台数が縮小傾向になることから、国内での販売体制の見直しを図る必要性が出ている。

 同社はこれまで専売モデルを中心としてきたが、今は販売チャンネルによって販売車種を定めない併売方式を採用している。これにより、自然と販売車種が絞り込まれることになる。

 販売しているディーラーにとっては死活問題となるだけに、この全チャンネル併売方式の導入にはさまざまな抵抗もあったに違いない。しかし、ディーラーの拠点数を減らし、競争力の高いモデルを集中的に販売させることは、長い目で見てディーラーの体力を強化することにもつながると考えられる。

【次ページ】ハイブリッド車で利益を確保しつつ「仲間作り」にも注力

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